【No Way!③】
敵が去り、味方もいったん基地に戻った後の戦場に私はまだ残っていた。
あちこちに散らばる航空機の残骸の殆どはドイツ軍機のもので、その数は優に100機近くあり海に落ちたものもある。
そのうえ基地まで辿り着けないものもあるだろうからその損害は甚大だろう。
ドイツ軍の損害に対してアメリカ軍の損害は、囮たちの被害は2割ほどあり敵の攻撃の激しさはよくわかるが、囮は所詮動かない木製の偽物。
実質の損害はまだ各部隊からの報告を待ち集計を済ませてからでないとはっきりした数値は出てこないが、空から見る限りでは航空機の損害は10機もなくてその中にはパラシュートで脱出した者たちもいたから敵に与えた損害に比べれば至って軽微なことは間違いない。
正確な戦況を確かめるため、いったんコンスタンティン飛行場に戻る。
機を降りて兵舎に向かう途中に出撃したF2Bバッファローが駐機されていていたが、空母から出撃して今回の戦闘に間に合わなかったグラマンF4Fを駐機させるためかF2BバッファローとP-36合わせて20数機が飛行場の隅の方に置かれているのが見えた。
置かれているというよりまるで捨てられているように乱雑な置き方をされていたので気になって近付くと、そこに置かれていた機体はみな損傷が激しく修理が必要なもので、中には風防のガラスが割れてシートに血がついているものもあった。
走って兵舎の指令室に入りアイクにパイロットたちの安否を聞くと、彼は肩を落として5人が亡くなり15人が負傷したことを暗く告げた。
敵300機以上に対して、230機を出撃させてあれだけの戦果を挙げながら死傷者20人は奇跡に近いと思ったが、失われた命の重さには何ら変わりはない。
アイクもそれがわかっているから、このように肩を落としているのだろう。
今回の戦果は敵機200機前後を撃墜する大戦果だった。
敵の敗因はJu87急降下爆撃機とHe111爆撃合わせて250機以上に対して、護衛のメッサーシュミットBf109F戦闘機を50機程度しかつけなかった事にある。
敵は偵察にきたときにボーン飛行場にあるのが輸送機ばかりで、追撃してきた戦闘機も旧式のP-36であることと、偵察機に追いついて発砲したにもかかわらず結局1発も弾をあてられないままドイツ軍戦闘機の機影を見た途端に一目散に帰ってしまったことで現地のアメリカ軍を見くびったことがこの結果につながった。
次に来るときは、そのあたりを修正して、より強力な体勢で来ることは間違いない。
「敵機影探知、距離90㎞接近中!」
「F4F隊並びにF2B隊、出撃!」
アイクは敵が来る方角や高度、それに規模も確認せずにすぐに戦闘機の発信を指示した。
おそらく今回も大軍のはず。
なのに前回よりもレーダーでの発見が遅いのは、敵が低空で侵入を試みているから。
おそらく敵の先鋒は、戦闘機隊だ。
だからドイツ軍のBf109Fに分の悪いP-40やP-36を出撃させずに、頑丈なF4FとBf109Fに有利に戦えるF2Bを投入したのだろう。
「私は戦況報告担当します!」
私はアイクにそう言って兵舎を出た。
「頼む!」と後から力強い声で送り出された。
戦場での戦いには寄与しないが、状況を第三者としての目で報告することは大切な事。
これは戦っていると以外に出来なくて、各隊の無線報告に司令部は踊らされるばかりで、乱戦になればなるほど司令部では現場で何が起こっているのかさえ分からなくなってしまう。
今回はパイロットに操縦を任せ戦況を把握することに注力することにした。
高度を高く取り、双眼鏡で見ると敵の動きがよくわかった。
「敵の先頭集団は約60機のBf109戦闘機。その後方に約40機のFw190……おそらくこのFw190は爆装していると思われる」
「了解!」
アイクに報告するとすぐに返事が返って来て、彼は迎撃に向かっているF2Bの部隊に戦場を大きく迂回して敵の後方に回り込むように指示し、F4FにはBF109と真剣に戦闘はせずになるべく引き延ばすように指示を出した。




