【No Way!①】
ドイツ軍はシチリアにある幾つかの飛行場から大編隊を組んでやって来る。
迎え撃つ我々は、ここコンスタンティン飛行場に150機、テブサに100機、タエに100機、ジジェルに150機と4つの飛行場に500機の戦闘機を待機させている。
囮部隊のある場所から最も近いのはこのコンスタンティン飛行場で120㎞、テブサとタエは共に160㎞ほどで、最も遠いベジャイヤの飛行場でも250㎞以内。
天候にもよるが敵が大軍で押し寄せて来てくれればアンナーバの北にあるガルデ岬に設置されているCXAMレーダーも早く敵を捕らえるだろう。(通常、戦闘機で90㎞、爆撃機で120㎞だが、レーダーは反射波により測定を行うので、数が多くなれば反射波も多くなり、それは反射する物体が多きことを表すので早く発見することができる)
しかも基地に配備されているのは、あらかじめ敵に見せておいた旧式のP-36戦闘機ではなくP-40。
さらに主力となるのはエンジンを換装して生まれ変わった海軍のF2Bバッファローとなっているから、敵発見の知らせを聞いてすぐに発信させればここコンスタンティンから出発した部隊は敵爆撃機より先に囮部隊の上空に到着し、テブサとタエを発進した部隊はほぼ敵と同じ時刻に囮部隊上空に到着する。
そしてベジャイヤから出た部隊は、退却する敵に追い打ちをかけることになる。
さらに前線の消耗状況によっては、アルジェから応援の部隊も投入する体制が整っている。
前史でのアメリカは日本との戦いに備えなければならず、そのために太平洋方面に割り当てられた航空戦力は1,000機近くにもなり、そのために欧州戦線では投入できる戦力が乏しかった。
だがこの時代では日本とPPSA(環太平洋安全保障協定)を締結しており戦わなければならない状況にはなく、太平洋地域の戦力をこの欧州につぎ込むことができたからこそこのような思い切った作戦が行える。
戦いの結果がどうなるかはまだ分からないが、前史で戦ったあのアメリカ軍の物量が全てこの欧州に投入されるとすれば、第2次世界大戦もかなり早く終息を迎えることだろう。
「ガルデ岬のレーダーが敵機影の探知に成功しました!」
「方角と距離は?」
「方角は真東!距離140㎞、敵は現在チェニスより西70㎞の大陸上を時速300キロ高度4,500mで接近中!」
時速300キロとはかなり遅い。
おそらく編隊の中に足が遅い上に航続距離の短いJu87ストゥーカ急降下爆撃機も混じっているのだろう。
この状況ですぐに迎撃隊を発進させれば、ドイツ軍が囮に食いつく前に戦闘になってしまう。
そうなれば爆弾を投棄して逃げるものも出て来るだろうし、罠だと気付かれてこれ以降の攻撃はない。
どうする?
私はアイクの様子を窺うと、彼もまた考えていた。
この1度の攻撃で全ての機を投入すれば、この第1波の攻撃部隊だけは完全に殲滅できる。
「各航空隊へ、F2Bバッファロー部隊出撃! ただし接敵はアンナバー北東の地中海方面からのみとする。繰り返す、接敵はアンナバー北東の地中海方面からのみとする!」
アイクが電話をつかみ、各部隊に指示を出す。
F2Bはこの作戦で使用する4カ所の飛行場を合わせた500機の中で、半分にも満たない200機ほどしかない。
これでは戦力は半減してしい、敵に致命的なダメージを与えることは難しい。
アイクは一旦電話を切ったあと、今度はアルジェにいる海軍艦隊本部に連絡し、空母艦載機を敵迎撃の応援に寄越すように依頼した。
なるほどアルジェには航空機輸送を行っている空母が居る。
空母にはブリュースター社のF2Bだけでなく、グラマン社のF4Fワイルドキャットも多くある。
最高速度時速620キロと12.7mm機銃6門と、圧倒的な高速と攻撃力を持つF2Bバッファローに対して、F4Fワイルドキャットは最高速度で約90キロも劣り、武装も12.7mm機銃4門と平凡だが機体は頑丈だ。
そして7.92mm MG 17 機関銃2丁しか装備していないメッサーシュミットBf109F型が相手なら風防を狙われない限り墜落するほどの損傷を受けることはそうないだろう。
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