【発動Operation No Way!⑥】
コンスタンティン飛行場に着陸し、迎撃にでたP-36戦闘機2機の帰りを待った。
彼らは無事にすぐ戻ってきた。
私を追いかけて偵察にきた敵のHe 111H爆撃機を追いかけていった彼らは打ち合わせどおり敵機よりも少し早い程度の速度でチュニジアを越えて地中海に出たところで追いつくと、わざと照準を外して敵機に襲い掛かり、東から敵の応援の戦闘機が見えた途端に全速でまるで慌てて逃げるように帰ってきたのだ。
これにより囮とも知らずに情報を持ち帰った偵察機、それにドイツ軍戦闘機のパイロットは自分の機影を見て慌てて逃げたアメリカ軍のパイロットは練度が低いと基地に戻って言いふらすだろう。
そうなればドイツ軍も航空機攻撃での消耗はさほどないと考えて、囮に食いついて大部隊を投入してくれるだろう。
なにしろドイツ軍のアフリカ軍団を指揮するのはドイツ陸軍の英雄的将軍でヒトラーもお気に入りのあのエルウィン・ロンメル将軍なのだから、ヒトラーも航空部隊の投入には反対しないだろうし、陸海軍の投入が難しい地域なので大規模な航空部隊を編成して叩き潰せと言ってくれるに違いない。
夕方にアイクもコンスタンティン飛行場にやってきた。
「いよいよ始まるな」
「作戦の開始日は今日だったけれど、敵の攻撃は明日だ。すまない」
私は朝から敵を挑発せずに昼過ぎから出たことをアイクに謝ると、彼はもともと偵察機を出して挑発するつもりはなく、いつ敵が気付くかは相手次第だったのだから構わないと言って笑いどうして朝から偵察に出なかったのかと私に聞いた。
私は彼の問いに、敵の都合に合わせたと答えた。
「敵の都合?」
アイクは不思議そうに私を見て言った。
私はもし午前中に敵に発見されれば敵はこのことを必ず上層部に報告し、今日の日の高いうちにはヒトラーの耳に届き彼は必ず攻撃の命令を下し、その命令は即時攻撃せよ!となるだろう。
ヒトラーの命令は絶対であり現場は大混乱に陥り、とりあえず準備のできた飛行機を数波に分けて送って来ることになり、そうなれば作戦開始段階での規模は小さくなるだけでなく何回か攻撃を繰り返すうち我々の作戦の意図に気付く者もでてきてしまう恐れがある。
しかし囮部隊の存在に気付くのが日没前だった場合、ヒトラーの耳に入るのは夜中となる。
いくらヒトラーでも、夜中の空爆では作戦効率が悪いことは分かるだろうから、日の出とともに攻撃を仕掛けてくることは想像しやすい。
そうなれば敵は準備にかける時間も多くなり、一度により多くの部隊を投入してくるだろう。
アイクが、それでももし夜間に爆撃して来たらどうするのかと聞かれたので、私は夜間に爆撃された場合何もすることはないと答えた。
おそらく夜間爆撃の場合は囮を配置した場所に近いボーン飛行場は重要な爆撃目標となる。
何しろここにはP-36が配備されていることは、偵察にきたHe 111H爆撃機が襲われたことで分かっているのだから。
飛行場を潰したことで、敵は翌朝意気揚々として大部隊を率いてやってくるはずだ。
ただ夜間に囮部隊を攻撃された場合、困ることがひとつある。
それは囮がみな木で出来ているということ。
木は爆弾が当たっても粉々に飛び散るだけで、さほど燃え上がることもないばかりかそもそも木なので爆発もしない。
ガソリンや砲弾を搭載しているはずの戦車が爆発しないのを敵は不思議に思うだろう。
特に夜間となれば、爆発や火災を見落とすことはあり得ない。
そこが夜間に攻撃された場合に困るポイントだと答えると、アイクは意味あり気に笑って答えた。
「もしかして、もうその対策を済ませているのか?」
「ああ、囮を配置し終わった後、部下に囮の中にガソリンと火薬、それに使い終わったタイヤを入れておくように指示を出しておいたから、夜間爆撃でも燃えるし爆発もする」と彼は言った。
さすがアイク!
しかもタイヤも入っているというのは名案だ。
タイヤはたくさんの黒煙を上げながら長く燃え続け、この黒煙は遠くからでもハッキリわかり敵の目標となるだけでなく、囮がただの木でできているということをその黒煙は隠してくれるだろう。
「さすがアイク!」
「君こそ!」
私が拳を突き出すと、彼も拳を突き出して合わせて、お互いに笑いあった。
しかし、木で作られた囮の中に貴重なガソリンを入れておく発想は、さすがアメリカだと感心した。
おそらく私を含めた日本人では、もったいなくてその考えには至らなかっただろう。




