【発動Operation No Way!④】
10月8日。
作戦初日となるこの日、昼過ぎから自ら操縦桿を握り通信士1名を乗せて私は101司偵を飛ばし、現状の把握と敵状を確認するために飛び立った。
前の日に飛行場の隅に置いてある陸軍のP-36が数機あったので整備員に使用できるのかと聞いたところ充分使用できる状態で操縦担当者もいるとの事だったので、これを囮作戦の行われているボーン飛行場に2機移動させておくように依頼して、担当のパイロット2名と作戦会議をおこなった。
飛び立ってしばらくすると、朝日を浴びてオレンジ色に染められた大地に散りばめられたカーキー色の囮部隊が見えて来た。
これだけたくさんあると、誰が見てもハッキリと分かる。
空から見る囮部隊は本物の戦車部隊としか見えず、木で作られた戦車を降下の衝撃から守る目的で敷かれていたパレットは、集めて組み立てられていてまるで急造の司令部になっていた。
そして降下隊員たちが使用したサンドイエローがまばらに染められたパラシュートは、砂の上に刺した黒い筒の上に被せられているだけで、あたかもその下にある本物の野戦砲を隠すために掛けられたカモフラージュにしか見えなくて、これは素晴らしく安価で手軽なトリックだと感心した。
さらに夜どうしトラックを走らせていたのだろう、囮部隊の周りには数えきれないほどのタイヤ痕が掘られていて上陸して慌ただしくこの場所に集結したことをうかがわせるには非常に効果的な措置が取られていた。
囮部隊の集結地点を見たあと、アンナーバ方面にあるボーン飛行場を見るためいったん機を西に向けた。
ボーン飛行場にも輸送機らしい機影が幾つも見えた。
これも敵を誘き出すための模型。
アイクは実に用意周到だ。
そのなかに昨日依頼しておいた2機のP-36戦闘機の姿も見えた。
あとは敵が偵察に来るのを待つだけだ。
再び機を東に向けた。
今日は雲一つない晴天だったので私は機の高度を上げて散歩にでることにして、その旨を無線でアイクに伝えると彼は無理をしないようにとだけ言い許可してくれた。
私はメッサーシュミットBf109Fが来た場合に、どの高度が一番有利なのか確認するために高度を上げた。
さすがに排気タービン付きだけあって、1万メートルを超えてもスムーズに上がってくれる。
この性能は技術だけではない。
排気タービンは高温に耐えられなければならないので、その製造にはニッケル合金が不可欠となるが、日本で採掘できるニッケルは極めて微量でまったく採算が合わないばかりか生産ラインを稼働させることもままならない。
けれども今のこの時代では周辺国との摩擦もなくオランダ領インドネシアやアメリカ統治下のフィリピン、それにオーストラリアからニッケルは輸入され、こうしてこの101式司偵だけでなくLC-11旅客機など多くの機体に使用することができている。
チュニジア上空をのろのろとした速度で飛ぶが、ここはまだドイツの戦闘機は進駐していなく安全に東に進みシチリアに向かうことができた。
ここシチリアにはドイツ空軍の大部隊が展開していて、今回の囮作戦もシチリアの航空戦力を削ぐことが狙い。
シチリアに配備されているメッサーシュミットの航続距離はわずか600~700㎞に過ぎず、増槽なしではアルジェリアの東端に位置するアンナーバを往復することさえできないので現在のところアメリカ軍は彼らの攻撃に悩まされる事はなく平穏に過ごせている。
しかし戦争時に於いての平穏とは、その裏側にある危険と非常に近いことを意味する場合が多い。
ドイツは無駄な航空戦を避け、戦力温存しているのだ。
シチリアはイタリア防衛のために守らなければならない重要拠点。
しかし連合軍がこれからチェニジアを攻撃してリビアに向かうとわかったら、どうだろう?
リビアにはロンメル将軍が率いるアフリカ軍団がいて、彼らは現在リビアの東端の都市トブルクにいる。
この状況で連合軍部隊が西から攻めて来れば、結果は誰が見てもわかるだろう。
まだドイツの支配下になっていないチュニジアの飛行場をアメリカ軍が占領してしまえば、彼らは必ずシチリアの航空兵力使って攻撃を仕掛けて来るに違いない。
メッサーシュミットBf109f
北アフリカ戦線で燃料補給中のBf109f型の、燃料ノズル挿入口が操縦席の場所であることにに注意していただきたい。
空気抵抗軽減のために翼を極端に薄くしたこのBf109シリーズのネックとなるのは、燃料搭載量だった。
薄い翼の中には翼内タンクどころか機関銃を搭載するスペースもなかった。
そして重量バランスも問題で400リットルの燃料タンクは、機の重心位置となる操縦席の座席の下に設置された。
F型は武装も機首上面機銃に7.92mm機関銃2丁あるだけで、かなり貧弱な武装と言え、前史では直接戦うことは少なかった生存性を重視したアメリカ海軍のF6FワイルドキャットやP-47 サンダーボルトにはかなり苦戦したことが予想される。
(ただし翼下にガンポットも付けることもできるが、ガンポット装着時には空気抵抗のため著しく最高速度が落ちた)




