【発動Operation No Way!②】
10月4日。
アルジェの空港に、見覚えのある懐かしいシルエットの航空機が近づいて来るのが見えた。
しかもそれは1機ではなく何機も。
これは間違いなく日本のC-0輸送機。
“しかし参戦もしていない日本の輸送機が、なぜこんな所に……”
「輸送をお願いしました。もちろん護衛は私どもでしっかりさせてもらいます」と、アイクは言った。
たしかに民間の物であれば、その理屈は通じる。
現にアメリカは欧州での戦争に参戦するずっと前から、ドイツと戦っているイギリスに民間の貨物船を使って軍事物資を輸送していた。
しかし、この機体は日本軍のもの……。
ところがC-0輸送機が着陸してから、そのカラクリに初めて気づいた。
機体に塗られている日の丸の中には、大きな日の丸を3つに区切るように白い輪が入っていて、イギリス空軍機のように3つの円による構成となっていた。
さらに機体に書かれた文字を見て驚いた。
そこには「KUSAKA Air Transport company」と書かれてあった。
「草鹿さん!」
私は思わずその名を呼んだ。
アイクが私の案を採用したとき最も重要かつ厳しい問題がこの囮の輸送であることはアイク本人も理解していることは、ここにきて作戦名を教えてもらった時に聞いていた。
全ての囮を海から輸送するためには、通常の上陸作戦と同じ規模の艦船をそろえる必要がある。
そのような大艦隊の出動を敵が見逃してくれるはずはなく、そうなれば輸送船団を守るためにさらに艦隊は肥大する。
そうなれば激しい戦闘が行われ、もう囮の出る出番はどこにもない。
空からの空輸があってこそ成り立つ作戦。
だから、「もし日本なら」と注釈をつけて私は発表した。
なぜならアメリカにはダミーとはいえ戦車やトラックほどの大きな物体を飛びながら降下させられるリアゲートを装備している輸送機はなかったから。
おそらくアイクは、そのことをルーズベルト大統領に相談したに違いない。
そして話はルーズベルト大統領から海を渡った。
だがこの問題は難しい。
日本は欧州戦争には参戦しないから、必然的にこの係争地帯に軍を派遣することはない。
PPSA(環太平洋安全保障協定)を結んでいるものの、ここは太平洋ではないので適用範囲外。
さらにC-0輸送機などは今のところ海外に販売するようにはなっていない。
きっとこの決断には政府だけでなく、大本営の中でも反対する意見は出たことだろう。
草鹿さんはきっと私のために頑張ってくれたに違いない。
あの人は普段はとても穏やかだけど、曲がった事や部下を守るときは頑なになり、まるで人の意見に耳を貸さなくなる。
きっとこの機体に書かれた「KUSAKA Air Transport company」という文字には全責任は自分が持つという彼の意思の表れに違いない。
着陸してきた1番機に走り寄る。
もしかしたら草鹿さんが乗っているのではないかと思って。
しかしパイロットは「社長は日本にいて、こっちには来ていない」と言われた。
「社長?」
よく見ると海軍のパイロットスーツではなく、普通の作業服。
しかも作業服には金色の刺繍で「草鹿航空輸送株式会社」と書かれていた。
もしかして、草鹿さんは本当に大本営を辞めたのだろうか?
気になってパイロットに聞くと小さな声でまだ大本営にいると答えたあと、世界的な問題になった場合、国に迷惑がかかるかもしれないから俺のことは社長と呼ぶようにと言われてきたことを教えてくれた。
さすが、草鹿さんらしい配慮だ。
翌10月5日。
この日も草鹿航空輸送の名前を書いた中型輸送機のC-1輸送機もやって来た。
これでC-0輸送機が18機、C-1輸送機が36機と合計54機がそろったうえに、なんと見たこともない陸軍の新型偵察機101式高速司令部偵察機が2機届けられた。
その2機には草鹿航空輸送ではなく、「Tojo Air Photo Co., Ltd.」と「東条エアフォト株式会社」の英語と日本語表記で書かれてあった。
なんと、あの東条さんからこのようなものを貸していただけるとは思ってもいなかったので驚いた。
いずれにしてもアメリカのためではなく、私を支えてくれる人たちのためにもここは頑張らなければならない。
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