7日目:「後悔」と「反省」
優児の表情に、生希はすぐに持っていたビールを置いた。
「その顔さ......絶対心配してないよな?」
生希が問いかけると
「え?そんなことないよ。ちゃんと心配してるよ?笑」
そういうと、優児はとぼけるように首を傾げ、もう一口フライに手を付ける。
「嘘つけ! もう顔がニヤついてるし!」
生希がすかさず返す。
優児は少しだけ我慢するそぶりを見せた後にふき出した。
「バレたか!」
「バレるわ!」
もはや、コントのようなテンポの良さだった。
「いや、お前が騙されたってのが面白くてな!」
「なんでだよ!!」
「ほら、お前わりと簡単に調子乗るからさ!酒でも飲んで、変なサイトに口座番号とか入力したのかと思ってさ!」
「お前、エスパーなん!?」
「当たってた?」
優児はニヤニヤしながら生希を眺める。
「ほぼ正解。ってか、全部正解......」
もはや、訂正するところすら見当たらない。
「そんで、今どんな状況なの?」
優児が缶ビールを飲みながら質問をする。
「どんな状況って?」
「フィッシング詐欺とか引っかかったことないからさ、どうなるのかなって!」
「ああ......とりあえず、口座からお金全部引き落とされて、口座は止められた」
「全部??」
「全部......。」
「マジ!?」
「マジ......!」
「それで?」
「それで.....今、手持ちのお金で生活してる感じ......」
「今、いくら残ってんの?」
「えっと......」
そういうと生希は財布の中身を確認する。
「6652円」
「うわ!!!!きっつ!!!!!セルフ黄金伝説じゃん!」
「黄金伝説でもスタート10000円だけどな!」
「たしかに!ついに、ダクト飯デビューしちゃう感じ?」
「春日じゃん!!!!」
「そう!やったら、感想教えてな!」
やはり、ほとんど心配されていない。
どちらかというと、面白がられている。
「それで、お前今月どうやって乗り切るの??」
「半額弁当とか?」
「なんか、学生の時みたいだな!」
「それで、半額弁当が手に入らなかったときは?」
「食べない......」
「子供かよ!」
優児が笑いながらツッコむ。
そういうともう一口ビールを口にして立ち上がる。
「さて.....。そろそろ帰るかな。お前と違って明日仕事だし!」
そういうと、ニヤリとしながら優児はのそっと立ち上がった。
時刻は23時になろうとしている。
「これ、買ってきたやつおいていくから、まあ気晴らしに飲みな!」
そういうと、優児は残りのレジ袋の中身を差し出した。
中には缶ビール1本と缶酎ハイが2本入っていた。
「おぉ......ありがとう」
そういうと、生希はそれを受け取り、優児を玄関まで見送った。
「んじゃ、また明後日会社でな!それまで生きてろよ!」
そういうと、優児はガチャリとドアをしめ部屋を出て行った。
優児を見送り、再び自室に戻るとまだ残っているフライと袋に入っている缶ビールに手を付ける。
まさか、今日アルコールを飲めるとは思っていなかったが、やはり明日からの生活への不安が頭を駆け巡る。
生希はそれをかき消すように、缶ビール→酎ハイへと移っていく。
..........。
朝6時43分。
強烈な腹痛と吐き気で目を覚ます。
頭痛とともに、トイレへと駆け込む。
「おえ......っ」
吐こうとしたが、何も出てこない。
原因ははっきりしている。
間違いなく、揚げ物を食べすぎた。
消化不良なことに間違いない。
トイレからもどると、焼けるような胃の不快感とともに一度ベッドに倒れこむ。
唸り声をあげながら天井を見るが、症状は特にかわらない。
「俺は、バカか......」
「今日、休みでよかったけど......」
そんなことを言いながら、仰向けになり昨日の自分を反省する。
優児が帰った後、思いもよらぬアルコールに手が伸び、ストレスを消すかのように残りのフライとともに口に詰め込んだ。
途中少し油で胃もたれも感じていたが、残すのももったいないと思いすべて食べきった。
その代償がこれである。
予定ならまだ寝ており、9時過ぎにゆっくりと起きて支度して銀行へと向かう予定であった。
全然寝足りない。
というより体がアルコールで疲れているからもうひと眠りしたい。
しかし、おなかの状態は待ってくれない。
「.......ちょっ! 待って待って!!!!」
再び慌ててトイレに駆け込む。
「.......あ”----........」
もはや何のために休みを取ったのかわからない。
トイレに顔を突っ込み静止する。
しばらく何も考えられない状態が続いた......。
少し時間がたつと、今度は油がお尻に来た。
便座に這い登り腰を掛ける。
そのまま天井を見上げると、誰もいないトイレで独り言が漏れる。
「.......ほんとさ、学ばねぇな、おれ......」
トイレの中で苦笑いが漏れる。
生希はゆっくりと立ち上がりトイレを後にする。
時刻は7時を回っていた。
おなかをさすりながらゆっくりと部屋に戻る。
二度寝をするか、支度をするか迷ったが、結局布団なの中に再び潜り込む。
(......優児には言わないでおこ。)
言ったら間違いなく「ネタ」にされる。
そう確信しながら、生希はゆっくりと目を閉じた。




