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フィッシング詐欺に引っかかったやつの話。  作者: dice-k


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20/21

20日目:プロジェクト始動!!

「..........?」


昨日会社で、プロジェクトの会議があるのは知っていた。

本来なら、生希も中堅として参加する予定であったが、フィッシング詐欺のせいで叶わなかった。


しかし、なぜか資料をめくる優児の顔を見て、嫌な予感がしていた。

ペラペラと資料をめくる優児の顔は、どこか「悪い顔」をしている。


ふと、優児がページをめくる手を止めて、生希に見せる。

「ここ!」

そういうと、ページの一か所を指さす。


そこには《プロジェクトリーダー》の文字。


「.........え?」

思わず、声が漏れる。


ページのタイトルは『社内コスト削減プロジェクト』


「...........なに、これ?」

思わず、優児に聞き返してしまう。


「名前通り??」

優児もそのまま返してくる。


「いや、だから.........」

生希が言葉を詰まらせていると、優児が悟ったように続ける。


「なんで自分がってことだろ?」

優児がにやにやしながら話し始める。


「ほら、昨日プロジェクト会議あったじゃん。お前休んだけど!」


「でも、あの、昨日の会議って.......」

生希が状況を呑み込めないという顔をしている。


「うん!メインの内容は、医療機関向けの新電子システムのやつね!」


「だよね??」


「うん。そうだったよ!!」

優児がこくりとうなずく。


「........じゃあ、これは??」

生希の頭の中には大量の「?」が浮かんでいる。


「なんか、上としては、昨日の会議で、そのプロジェクトの話も少しだけする予定だったみたいなんだけど!」


「うん」


「医療システムのメインの会議が終わったとに、残りの時間でその話が出て」


「それで、なんで俺がプロジェクトリーダーなの?」

切実な疑問を優児に投げかける。


「まあ、それを聞きたいんだよね!」

優児がキーボードを打ちながら話す。


「最初のメインの医療システムの案件あったじゃん」

相変わらずの器用さである。

キーボードを打ちながら、別の会話もできる。


「もともと、中堅組にプロジェクトリーダー任せるって方向で動いてたじゃん!」

優児がそういうと、いったんキーボードを打つのをやめる。


「うん!」


「あれの、プロジェクトリーダー、俺になったんだわ!」

優児はそういうと、生希に手渡した資料を前のページに戻るようにペラペラと捲っていく。

そして、目的の個所にたどり着くと、《プロジェクトリーダー》の欄を示した。

そこには確かに『榊原優児』の文字が記載されていた。


生希は、それを見ると納得するように、ひとつ、こくりとうなずく。

特に、人選に不思議はない。


優児は生希と違い、周りとコミュニケーションを取るのもうまい。

いや、というより、システムエンジニアにはなかなかいないタイプの陽キャである。

後輩にも、上司にも慕われているので、それなりに妥当なところだと思った。


「で........?」

生希が話を戻す。

それで、疑問は自分がなぜ、このプロジェクトリーダーになったかである。


「それで........」

そういうと、優児は再び話始める。


「こっちのプロジェクトリーダーが俺になったから、そっちのプロジェクトリーダーも中堅に任せようってことになって!」


「...........」

なんとなく、そのあとの事は言わずとも生希にも伝わった。


「それで、俺になったと.........」

一応、確認のために優児に聞き返す。


「そう!」

優児は、にやり、と笑いながらうなずく。


「.............」

一応、確認はしてみた。

優児からの返答は思った通りの回答だった。

しかし、脳が処理するのを拒否している。


「まあ、頑張るしかないだろ!決まっちゃったし!」

優児は励ますかのように声をかける。


「う、うん.......」


「ちなみに、メンバーの欄見てみな!」

そういうと、優児がメンバーの欄に視線を落とす。

つられて生希も視線を落とす。

そこには、《プロジェクトメンバー》として2人の名前が記載されていた。


《プロジェクトメンバー》

小鳥遊たかなし 日向ひなた

御影みかげ 怜奈れいな


「............」

生希が、軽く瞬きをすると、優児に尋ねる。


「この二人、知ってる?」


優児は、少し首を傾ける。


「う~ん.........」

そういうと、メンバーの一人を指さした。


「こっちの小鳥遊 日向って子は、たしか今年入社してきたこのはず。俺も、話したことないから、詳しくは知らないけど、都内の大学卒業してきたこのはず。」


「だと、22歳くらい?」


「たぶん.......そこまで聞いたことない」


「たしか、今年の4月の新人研修にいた気がする」

そういうと、生希はもう一人を指さす


「こっちの、御影 怜奈って子は?」


「.........」

少しの沈黙の後に、優児が答える。


「わかんないな........」


「名前は聞いたことある気がするけど、、、」


「多分、うちの部署じゃないと思う」


「っていうと??」

生希が訪ねる。


「コスト削減プロジェクトだから、もしかしたら、総務課とか会計関係の部署の子じゃない?」


「多分、名前通り、数字は算出しないといけないんだと思うし」


生希は静かに名前を見る。


――御影 怜奈


なんとなく、頭の中に勝手なイメージが浮かぶ。

冷静な感じの女性。

「怖い人じゃないといいな........」

思わず声が漏れる。


生希は小さく息を吐くと、少し下を見る。


そこには――


《プロジェクト監督》

佐久間孝之


「...........」

生希が固まる。


横から優児がのぞき込み、何かを悟ったように続ける。

「そう!責任者は部長になるみたいだったな!」


「いいじゃん!筋肉仲間で!」


「ちがう!」

即座に声が出た


「あ!それと!」


「........ん?」


「昨日、お前休んだから今日の午前に顔合わせみたいなこと話してたぞ!資料確認したほうがいいんじゃない?」

優児は思い出したかのように告げる。


生希も、それを聞き、慌てて資料を見る。

1ページ目。

2ページ目。

3ページ目。に書いてあった。


『本日11時~ 17階:会議室Bにて第1回会議を行う。』 


「...........」

ハッと時計を見る。

時刻は――10時53分。


「やべ!!!!!」


「部長かだれか、教えてくれてもいいじゃん!」

そういうと、あわててデスクを立つ。


「なにか、持っていくものあるかな?」

隣の優児に尋ねてみる。


「顔合わせだし、ペンとメモ帳くらいでいいんじゃね?」

優児は画面を見たまま答える。

なにやら、昨日決まったプロジェクトの初期案を作っているらしい。


生希は、優児のアドバイス通りペン立てに刺してある、ボールペン1本と引き出しから手帳を取り出す。


「.........行ってくる」

優児に小さく声をかけると、その声を聴き軽く手を振る。


オフィスを出ると、廊下は静けさに包まれていた。

昼にはまだ早いのもあり、どこのオフィスも業務中であった。


エレベーターの前に立つと、上りのボタンを押す。

ランプが静かに点打する。


表示を見る。


11階。

12階。

13階。

14階。


ゆっくりと上がってきている。


――チン。


目の前に上の階へと向かうエレベーターが止まった。

ただの顔合わせのはずが、なぜか緊張している。


知らないメンバー。

初めてのプロジェクトリーダー。

監督が部長。


頭の中にただ、単語だけが浮かぶ。


「........大丈夫かな??」

ふと、不安が声になる。


静かに扉が開く。

誰も載っていない、静かな箱の中。

生希は少しだけ躊躇してから一歩を踏み出す。

どうやら、部長はすでに上の階に行ったらしい。


17階のボタンを押すと、ゆっくりと扉が閉まり、上昇が始まる。

わずかな浮遊感。

気圧のせいなのか、耳の奥が少しだけ詰まる感じがする。

手帳の中のメモを見てみるが真っ白な平面が広がっている。


「.......顔合わせって.......何したらいいんだろう........?」

進行の仕方がよくわかっていない。

手帳をポケットにしまうとともに、ゆっくりとエレベーターが減速を始める。


そして、表示が16階から17階に変わる。

小さな音ともに、扉が開く。

17階は会議室になっているので、エレベーターが開くとともに、目の前にいくつもの扉が姿を現す。

生希はゆっくりと、会議室のプレートを探す。


「会議室B.........会議室B.........」

すると、薄暗い通路に一つだけ光が漏れている扉がある。

上の掲示を見ると、そこには『会議室B』の文字。


ドアの前に立つと、ゆっくりと鼻から息を吸う。

変に緊張してきた。

息を吐き終わると、ドアをノックする。


――コンコン。


「はーい!!!」

「はい」

「.........はい」


中からは、子供のような高めの声と、低い声、そして、少し遅れて女性の声が聞こえてきた。


――ガチャ。


ドアを開けると、そこには3人の姿があった。

会議テーブルの手前側に小柄な青年。

身長は160㎝くらいであろうか。

童顔で、一瞬子供のようにも見えたが、スーツを着ているので、どうやらうちの社員のようだ。


左隣には眼鏡をかけた女性が立っている。

顔立ちからはっきりとわかる、冷静沈着な感じ。

どこか冷めたように放たれる視線。

真っ黒な長い髪。


そして、右隣。

見覚えのあるパツパツスーツ。

真っ黒に焼かれた肌。

対照的に真っ白な歯。

腕まくりをして腰に手を当てている。

部長だ。


小柄な少年がこちらに駆け寄ってくる。

「生希さんですか?」

やはり、想像通りの少年のような声だった。


「初めまして!!入社1年目の小鳥遊 日向です!」

そういうと、深々と、勢いのあるお辞儀。

そして、そのまま顔を上げる。


目がキラキラしている。


「僕、初めてプロジェクトに参加するんです!!」

その声は、きっとプロジェクトという言葉に何らかの憧れを持っている声だった。


「........あ、そうなんだ.........」


「よろしくね!」

生希は、その勢いに少し押されるかのように挨拶を返す。


「はい!だから、今、すっっっっっごい、ワクワクしてて!」

両手を軽く握りしめ、前のめりになっている。


「昨日からほとんど眠れなくて!!」


「..........」

ふと、生希の脳裏には自分の寝不足理由がよぎる。


トイレットペーパー

筋肉痛

スマホ沼


あまりにも対照的な理由に、少し反省をする。


「資料もいっぱい作ってきました!」

それを振り返り、机の上を示す。


妙に厚い、コピー用紙の束がドン!と置かれていた。

すでに、嫌な予感しかしない。


「まだ、至らないところもあると思うんですけど!!」

再び生希のほうを振り向く。


「先輩に見ていただきたくて!!!!!」

日向はさらに一歩、生希のほうに踏み出す。

距離が近い。

生希の姿勢が自然と後ろに傾く。


「う、うん.......あとで見るね!」

反射的に返してしまった。


その時。


「........小鳥遊さん」

落ち着いた声が横から入ってきた。

ふと、声のほうを振り向く。


メガネの女性だった。

軽く腕を組み、終始落ち着いた視線で日向を見ている。


「そんなに、最初からグイグイ行かれては、リーダーの方がお話しできません」

まるで、弟を落ち着けるお姉さんのように諭す。


「あっ!」


「すみません!!」


「はっ!」としたように、日向が一歩下がる。


それでも、まだ少し近い。


女性は生希へと視線を移す

「総務課の御影怜奈です」

そういうと、軽く会釈をした。


声のトーンも淡々としている。

冷静沈着。

THE・事務職という感じであった。


「........よろしくお願いします」

思わず敬語になる。


すると、部長が静かに歩み寄ってきた。

「いい仲間たちだな!」


「これからのプロジェクトが楽しみだな!」

生希に視線を向けながら、なんとも楽観的に笑っている。


すると、再び横から日向の声がする。

「あ、あの、僕の作ってきた資料見てください!」

目が、本気でキラキラしている。


その手には、自分で作ってきたと思われる資料の束が握られている。


「あ、う、うん。」

昨日の今日でどうやってその量を作ったんだ?

と思うような資料の束である。


「昨日、プロジェクトメンバーに入れるってわかってから、気合入っちゃって!」


「すごく、いい案だと思うんですけど、先輩としてはどうですか?」

そういうと、資料の束を差し出す。


やはり、距離が近い。

すごく、近い。


反射的に受け取ると、ずしり、そんな音がぴったりのように腕に重さがかかる。


「........おもっ」

思わず声にでる。


「よく、こんなに、昨日の今日で作ったね........」

生希が苦笑いしながら日向に声をかける。


「はい!」


「最初が肝心かなと思って、残業していっぱい作りました!」


「そ、そうなんだ.......」


「はい!グラフも作って、イラストも入れてみました!」

目が早く中を見てくれと言わんばかりに訴えかけてくる。

生希は、資料に目を落としてみる。

そこには『明日からできる!超スピードコスト削減プラン』の文字。


「とりあえず、座って、小鳥遊君の作ってきてくれた資料を見るか!」

部長の掛け声とともに、それぞれ椅子に腰かける。


「じゃあ、小鳥遊君、資料の説明してくれる?」

生希が声をかけると、日向は嬉しそうに「はい!」と勢いよく立ち上がる。


口元に手をあてて、「ごほん」と咳ばらいをすると

「では!!!!」

待ってましたと言わんばかりの声が会議室に響く。


ページをめくると、そこにはカラフルなグラフと、妙なポップのフォントで打ち込まれた文字。


「まず!第一案!」

そういうと、日向は高らかに手を挙げた。

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