広くなった部屋①
最近は随分日が長くなってきて、バイトが終わって帰るこの時間も、まだ空に赤みが残っている。
「ただいまぁ」
部屋に帰ってきて、靴を脱ぐ。そしてダイニングに置いてあるクッションに横になった。
ここに1人で住むようになってから1ヵ月と少し。少しずつこの生活にも慣れてきて、それなりに満喫もしている。けど、バイトから帰って来た時の「おかえり」がないのは少し辛い。
「こんな感じなら、一昨日頼んどいたらよかったかな。」
久しぶりに会った一昨日も、結局いつもの感じになってしまって、満たされたところはあったけれど、その反動がきている。
そんな感じでも動かないといけない。帰ってきてご飯が作られてるなんてこともなくなったし、働いた私の身体を癒すためにも風呂に入らないと。
「よいしょっと……」
立ち上がって、風呂を入れる。その間に今日の服とかを洗濯機の中に入れて、鏡の前に立つ。前までは久志にしょっちゅう見せていたけど、今は誰にも見せなくなった体。きっと今度、久志が映画を見に来るときに見せることになる。
「太って……ないよね?うん。大丈夫。あとで体重計にも乗っとこ。」
見た目は問題ない。数字にするのは少し怖いけど、久志の前では少しくらいいい格好をしたい。そういうもんだ。
湯船にお湯が溜まって、かけ湯をしてから浸かる。
「あああ~っ」
気持ちいい。誰もいないからこんな声も出せる。
風呂から上がって、スキンケアとか諸々をする。髪を乾かして、ケアも忘れない。でも、そうだな。晩ご飯作るの、めんどくさいな。
「こういう時、久志ってどうしてたっけ?」
そんなときに思い出すのは久志が作ってくれてた料理。私は手抜きも凝ったのも作っていたけど、久志はほとんど簡単なものしか作らない。簡単に作れて、そして美味しいのを作ってくれていた。
そして思い出したのはパスタの簡単な手抜きの仕方。量もあって、カロリーは……いいや。疲れてるし。そして、簡単に作れる。そしてそのソースにしていたのは、あった。お茶漬け海苔だ。
もともとは松茸のお吸い物を使って作っていた。けど、断然こっちの方が安いってことで、お茶漬け海苔にシフトしたって感じだ。
鍋に水と塩を入れて、沸かす。パスタは100g。もうちょい食べたいところだけど、これは足掻きだ。そして沸いたらパスタを茹でる。その待ち時間、7分の間に洗い物とかを済ませて、茹で上がりを待つ。
タイマーが鳴る。懐かしい、こっちに来て初日に2人で食べに行った天一で貰ったタイマーだ。パスタを皿に盛って、その上からお茶漬け海苔をかける。これで完成。久志がよく作っていたのも分かるな。




