21)クロトはひかえおろうする
水戸の御老公。
アメリア曰く、ウェッツさん達村の人には
「王都に居を構える某商会の一族で、観光を兼ねて王都で商売できそうな商材を探しての旅であり、貴族や騎士団のルールなどにもある程度通じている」
という説明で納得してもらったので話を合わせてほしいとのこと。了解。
そんなわけで俺たちとウェッツさんの4人は、領主の館にいた。
「昨日の野盗の逃げたひとりを捕まえたが、いくらで引き取ってくれるか? 金が出せないなら王都の方へ連れていく」
と伝えたところ、無事領主館へ通された。
「領主様のお忙しい時間を割いていただくのだ、くれぐれも粗相のないように」
と注意するのは、昨日の衛兵である。とりあえず無視しておいた。
もったいぶって出てきた変なヒゲのおっさん。これが領主か。
「それで、逃げた奴はどこに?」と尊大に用件だけ言うタイプ。
「その前に、この件はもう王都に連絡済みですか?」
フードを被ったままのアメリアが聞く。
「ん、なんだ貴様は? あー伝えてある、そうであるなゲド?」
昨日の衛兵が「はい。もちろんです」とニヤニヤ顔で答える。
ドヤ顔くんは無視して進めるアメリア。
「それで、王都の調査官はどちらに?」
「何? どういう意味だ?」
「言葉のままの意味です。野盗を捕まえたときの王国の法では、即時に王都へ連絡。王都は連絡を受けたらこちらもすぐに調査官を派遣する。トナンまでは半日もかかりませんので、当然、もうお見えでしょう?」
「貴様ごときにそのような説明をしてやる必要はない。とっとと野盗を渡してどこへなり失せろ、金は払ってやる。いくらだ?」
フード越しにしばし睨み合うアメリアと領主。先に目を外したのはアメリアだった。勝ち誇る領主。
「仕方ありません、クロトさん、アレを出してください」
おお、アレ今出せばいいのね。と、胸元を弄り、ゲラントから預かった王証を取り出す。
「なんのつもりだ、それは? それも買い取ってほしいのか?」
金目のものかと目を細める領主。その時、シーラのよく通る声が館に響く。
「控えろ! このお方をどなたと心得る! 恐れ多くもロッセン王国が現王閣下の王証を預かりし勇者、クロト様である! 王の代行者の御前で頭が高い! 跪くが良い!」
凄まじい迫力にゲドくんら衛兵達は尻餅をつき、そのまま跪いて頭を垂れる。
が、領主はくじけない「そ、そのようなものが王証を預かるなど、、、、、あり得るはずがない! 偽物であろう!」
そんな領主にフードを跳ね上げたアメリアがとどめを刺す。
「まったく、残念ですが貴方は不敬罪も重ねたことになりますね。王都の近くの領主であれば私の顔を見たことはあると思いますが? ロッセン王国第二王女、ロッセン=バルデ=アメリアが宣言します。この方は王が王証を預けし勇者様です」
「ヒィっ、まさか、アメリア姫様!? そんなまさか。。。」
がっくりと膝をつく領主。
なに!? なに!? とりあえず王証出したら黙って立っててくれればいいって言われたけど、展開早っ!? とびっくりしているクロトの視界の端に、領主より衛兵より驚いているであろうウェッツさんが腰を抜かして転がっているのが見えた。
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昨日、野盗騒動の後、ウェッツさん達が帰ってからの話。
「で、アレって何?」
クロトの部屋で膝付き合わせて座ったアメリアとシーラに聞く。
「王証のことですよ。ちょうど今夜説明しようと思っていたので、都合がいいといえばよかったです」
「こんな早く使うことになるとは、私もアメリア様も思いもしなかったがな」と苦笑するシーラ。
「そうだ、その前にシーラ、私のことを様付けするのはやめて。今後旅を続ける上で、何かと不都合があるわ」
「そうですね。では、、、「アメリアと呼び捨てがいいわ」」
「、、、わかりました。アメリア」
それでいいわと、満足げに頷くアメリア。
「それで王証のことですが、これは「王の代理として認めた証」という意味です」
「なんか、聞くだけで大事感スゴいんだが。。。」
「はい、大変貴重なものです。王証は各国にあるのですが、ロッセン王国にはこの首飾りを含めて3つしかありません。特にこの首飾りは初代王の時代から継承されている国宝と言っても過言ではないモノです。基本的には他国への交渉の使者に貸与される以外はほぼ、使われません」
「なんでそんな物を俺に、、、」
「だからお兄様が投げてよこしたときは思わず悲鳴をあげそうになりました」
とアメリアは笑った。
「ぶっちゃけ、今からでも王都に返しに帰りたいのだが」
「うーん。クロトさんがそうしたいのなら、返してもいいと思いますが、本当にいざという時に役に立つので持っていて損はないと思いますよ」
失くしたらどうするんだろ。
「失くした時のことは聞かない方がいいと思います」
即答。
「王証は王の代理の証ですので、この証を見せられた相手は、王証の意味がわかる人間であれば、ロッセン王国の王と対面するのと同じです。王証を見てなお、敵対するのであれば、それはロッセン王国へ弓を引いているのと同義。逆に、王証を見せながら相手に喧嘩を売った場合、ロッセン王国が宣戦布告をしたのと同義となります」
「え、そんなの本当にいらない」
「まぁ、今のは大げさな例です。基本的にはどうしようもなくなった時に王証をその国の偉い方に見せれば、大体の場合保護してもらえる最強のヘルプカードとでも考えていただければ。そんなにちょろちょろ見せるものでもないですし」
「まぁ、そう聞けば便利ではあるなぁ」
「でしょう。ついでに言っておけば、外交の場でもない限りあまり見せない方が良いですね。王証には世界共通の厳密な決まりがあって、王証が使われてどのようなやりとりがあったかは、必ずその国に連絡が行きます。他国で使っても同じことです。悪用されたり、偽物が現れるのを避けるためですね」
「ふーん。まぁ、基本的には使うつもりないから、俺にはあんまり関係ないかな」
「クロトさんでしたらそう言うと思いました。権威の衣に価値を見出さないタイプの方ですから。だからこそ王も預けたのでは」
「ああ、なるほど。つまり、可愛い娘がピンチに陥ることがあったら、なりふり構わず王証を使って保護されて帰ってこい。ってところか」
「そう、ですね。。。多分」
アメリアは少し恥ずかしげに言った。
「そんで、その王証が今回どんな役に立つの?」
「あ、そうでした。さっきも言ったように王証の持つ権力は絶大なのですが、そのうちの一つに「王の目」という役割があります。王証を提示して見たものは王が見たものと同じです。相手にいかなる言い分があろうと、王証の持つ方の見たことが優先されます。領主が不正に手を染めているのを王証を持つ人間が見る。この国にとってはこれ以上ない不正の証拠となるのですよ」
すげえな、王証。でも本当にいらないんだけど、、、失くしたときのセリフが怖すぎる。




