20)アメリアの結論
クロトが追跡している事は気づかれることのないまま、衛兵たちは縛り上げた野盗達を3台の馬車にそれぞれ放り込み、暗い道を進んでいく。
左右に畑を見ながら馬車を走らせること小一時間、その先にうっすら灯りが見えてきた。ココ達の村より明らかに大きな建物があるので、トナンの中心街なのだろう。
馬車が街の正門で何事か声をかけると、門が開き、馬車が滑りこんでいった。
門の高さは5メートルほど、一応の防衛が可能な造りだ。
それからさらに1時間ほど、開かれることなく沈黙する正門を眺めていたクロトは、そっとその場を離れ、ココ達の村へと急いだ。
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村に戻ると村の主だったメンツなのだろう、ウェッツさんほか何人かの村人と、アメリアとシーラが宿の食堂で話し合っている最中だった。
見れば、宿の端っこにさっきぶっ飛ばした下っ端Aが転がっていた。下っ端Aまだ目を覚ましてはいなかった。
「あ、お帰りなさい! ありがとうございました。とりあえず飲み物を」
アメリアが気づき、シーラが紅茶を入れて持ってくる。
「ありがと。で、頼まれたこと、確認してきたぞ」と報告。
「なるほど、これでほぼ、黒ですね」
「確かに、、、」「ああ、、、」「まさか、、、、」
アメリアの言葉に集まった人々が頷く。俺以外ね。
ちょっと説明してもらえませんか? アメリアさん
「ああ、すみません、先ほどまでウェッツさんから色々聞いて、私の考えを説明していたのです」
「へえ、どんな?」
「まず、今回の野盗ですが、何かおかしくなかったですか? というか、おかしいといえばほぼ全てがおかしいのですか」
「お、おう、、?」
「まず気になったのは剣です。ウェッツさんに聞けば、野盗はここ1年くらい各集落に出没して、様々な被害をもたらしているそうです。同一の集団と見て間違いないでしょう。にもかかわらず、野盗にしては剣が綺麗すぎる。遠くからでも綺麗に磨かれた光が見えました。まるで、ちゃんと手入れができる場所に保管されていたみたいに」
確かに髭もじゃの剣はしっかり手入れされていたように見えたな。
「さらに、その方法です。風車を質にするのも効率が悪すぎます、そもそも風車を質にするにしても、なぜ古い風車の時は何も要求せずに壊したのか? どうしてもその方法でお金を奪うのならば、私なら、新しい風車の建設資金の受け渡しを狙います。それならお金のやりとりをする2~3人の当事者を殺すだけで済みますし」
お、おお。今結構怖いこと言ったな。ウェッツさんの表情が固まっているぞ。でもまぁ、確かに。
「もう一つ言えば、ここまで住民に傷をつけていないのも若干引っかかりますね。これも他の集落でも同じだったとか」
「住民に傷をつけないと、何が違うんだ?」
「一番単純に考えられるところでは、住民が殺されでもしたら、王都が、つまりいずれかの騎士団が動くでしょうね。物の破損だけなので、現状は領主が対応する段階に留まっているものと」
「なるほど。狙ってやっているということか」
「私が考える限りですが、その可能性は高いと思います」
バーンは近衛兵だから流石に出てこないか。緑の鎧の人の騎士団とかが来るのかな?
「そして、衛兵の挙動も怪しすぎます。野盗が出ていることから巡回していたとしても、幾ら何でもタイミングが良すぎですね。それに、衛兵は野盗の人数を知っていた」
ふむ。確かに。一人逃げて7人って分かってたもんな。
「それでクロトさんに後を付けてもらったわけですが、衛兵達は馬車3台で来ていたんですよね?」
うん
「衛兵は6人。馬車を操る人が1人で、乗るのが1人? 完全に多すぎます。が、仮に8人足して最初から14人乗っていたとしたら」
14人なら手頃な台数、、、か。
「そして、馬車が街に入っていったまま、その後は誰も出てきてないのですよね?」
ずっと見ていたから間違いない。
「皆さんはご存知ないかと思いますが、野盗などを捕らえた場合、領主および各地の衛兵長には王都への即時報告義務があります。そのために夜間でも伝達番を置いているのです。そして、これはいかなる事情があろうと伝令を発しなければならない。仮になんらかの理由で伝令が遅れた場合は、領主、衛兵長ともに懲罰対象となります」
なるほど、もう完全に面倒臭い展開になるのはよく分かったので、もう今日はここまでで良いですか? ダメですか。
「一番わからなかったのは動機です。が、これもウェッツさんに話を聞いて納得しました」
ウェッツさんが深く頷き、言葉をつなぐ
「ああ、私たちは皆、領主に騙されていたんだ。トナンの集落全員な。古い風車が壊された時、領主の使いが来て「領主が王都から金を借りてやる」と言ってきたんだ。領主なら使える制度がある。借りた金は利息はつくが、徐々に返していけばいいと。その使いが言うには、他の集落も大きなものが壊されたので、王都に借金をしたらしい。ただ、俺たちは自前でなんとかなりそうだったので、また何かあったら頼むと言って断ったんだ」
「もうお分かりだとは思いますが、王都にそのような制度はありません。トナンは王都の食料庫と呼ばれる地。借金など背負わせて民が逃げたり、生産効率が落ちては自分たちの首を絞めるようなものです。当然、風車などの施設の再建が必要で、資金が出せないなら、王都から調査員が来て確認した上で、費用は王都持ちで直します」
シーラは呆れ顔でため息。
「こんな王都の近くで、こんなつまらん不正を働くとは、、、領主の質も落ちたものだ。。。」
それで、どうするの?
「どうするも何も、そうだ、クロトさんが預かった「アレ」使うのにちょうどいいですね。 そうしましょう!」
ああ、アレな、、、、アレって何?




