19)野盗退治
クロト達が現場に急ぐ道中、ココの話によると、野盗たちは出来たばかりの風車を盾に金と食料を要求しているとのこと。
現場にたどり着くと幸いまだ風車は無事だったものの、野盗たちが手に松明と剣を持ちながら、風車の周りを囲んでいた。
遠巻きに見る住民へ「話ができるやつを連れてこい!」と怒鳴っている。
人垣をかき分け、ココの父さんが前に出る。
「私がこの集落の取りまとめ役のウェッツだ。なぜこのような真似をしている!」
ココの父さんが偉い人だった。人は見かけによらないね。
「へっ、あんたが頭か、じゃあ早急に村から金を集めてきな! 金額は、金貨1000枚だ! それと食料を1週間分だ、もちろん俺たち8人分な」
リーダー格の髭面が要求を投げる。
「金貨1000枚!? 無茶を言うな! そもそも前の風車を破壊したのも貴様らだろう! 風車再建に皆で金を出し合ったばかりだ! そんな金はない!」
ちなみに金貨1枚あれば、クロトたちが止まった宿に素泊まりなら5日は泊まれる。
クロトが旅立つ時に、餞別として両親からもらったのが金貨20枚で、これだって十分な大金である。
「へえ、出せないのかい? じゃあ仕方ねえぁ、せっかく新しくした風車なのになぁ。俺たちが脅しでやってるんじゃないってのは、古い風車で分かっていると思うけどなぁ」
下卑た笑いかたをしながら松明を風車に近づける野盗たち。
ウェッツさんの後ろで様子を見ていたクロトとシーラは互いに顔を見合わせ
「シーラ、何人いける?」
「あの程度なら8人全員でも問題ないが、半分ずつでいいだろう。わたしは左半分をやろう」
「分かった。じゃあ、俺はあの髭面と右の残りをやる」
「ただし、クロト、全力で殴るなよ。あいつらの首が一人残らず飛んでしまう。野盗よりそんなものを見せられる村人がかわいそうだ」
「分かってる」と苦笑。
それを合図に、2人は野盗に飛びかかった。
俺は加速ブーストをかけて一番風車に火を近づけている下っ端Aの目の前に飛び込む。
「えっ」間抜けな顔で俺を見る下っ端をほどほどの力でぶっ飛ばす。
「クケっ」鶏みたいな声を出し、コマのように回転しながらすっ飛ぶ下っ端。ちょうど向こうに小川があったらしく、バシャンという着水音がした。
「!?」状況がわかっていない両サイドの下っ端は、その辺にあった石を投げつける、綺麗に両顎にHIT!
「ぎゃっ」まぁまぁアホ面のまま両膝から崩れ落ちる下っ端BとC。
シーラの方を見ると、こちらもすでに2人が倒れ、残り2人を押し込んでいる状況が見えた。
ブーストなしであのスピード、やるなぁ。
「さてと、、、あとはお前だけだな」
髭面に近づくと、先ほどの笑みは姿を消し、鋭い目つきで手入れの行き届いた剣を握る。おっ、その構え、いっぱしの剣士っぽいじゃん。
「死ねっ」短く言って斬り掛かってくる髭面。
「遅っ」剣先をのんびり避けながら、ダガーを取り出し、その柄を鼻に叩きつける。
「があぁ」鮮血とともに白いものがいくつか飛び散った。あっ、少しずれて歯に当たっちゃった。あーあ、前歯全部逝ったな。これ。
わざとじゃないよ。多分ね。
のたうつ髭面の服でダガーの柄を拭いてから、五月蝿かったので軽く蹴り上げて気絶させる。
おっ、向こうも終わったみたいだ。
「さすがだな」シーラが剣をしまいながら歩いてくる。
「そっちこそ」流石王国の赤き、、なんだっけ? 赤い鎧着てただけありますね。
「あ、、あの。。。」
呆然と見つめているウェッツさん達。
「面倒だったのでぶっ飛ばしちゃいましたが、良かったですよね?」
「あ、はい。もちろん。。。」
コクコクと首を振るウェッツさん。
さて、一応全員縛り上げておいたほうが良いと提案しようとした時、背後から声が
「なんの騒ぎだ!」
住民が避けるとそこから現れたのが、この領地の衛兵と思われる格好をした6人組。
「なんだ、そいつらは、まさか、、、最近騒ぎになっていた野盗どもか!」
「あ、はい。こちらの旅の方が取り押さえてくださいまして。。」ウェッツが前に出て説明する。
「旅人? ふん、まぁご苦労だったな。あとは我々が衛兵館の牢屋まで連れていく。貴様らはさっさと解散するように」
おお、偉そう。君が偉そうに言っている相手の一人は、この国の王女様ですよ。
と、アメリアを見るとシーラと何やらこしょこしょ話をしていたが、こちらの視線に気がつくと歩み寄ってきた。
「あの、衛兵様? 先ほどの野盗のことで聞きたいことがあるのですが、よろしいですか?」
「ああ? 誰だお前は?」
「先ほどの者達を取り押さえた旅の者の一人です。それで、聞いても?」
なるほど、姫というのは明かさない方向なのね。
しかし衛兵はすげなく手を振る。
「ダメだ、ダメだ。ここからはこちらの領分だ。お前ら旅人が出る幕じゃない」
「そうですか? 1つだけでもいいのですが?」
「あまりしつこいと、お前らも牢屋に入れるぞ!」
言いながらアメリアを押しのけようとするが、その前にシーラが衛兵の手首を掴む。
「な、なんだ、貴様、、、」
黙って衛兵を睨むシーラ。
「シーラ、大丈夫です。行きましょう」
すっと手を離すも、結構な殺気を放って衛兵を見つめるシーラ。完全にビビっている衛兵。足、震えてますよ?
「あ、一応、親切心からお知らせしますね。盗賊のうち一人が勝てないと見るや向こうの方に逃げて行きましたから」
と、あさっての方向へ指差すアメリア。
「ちっだから7人しかいないのか」言いながら、シーラの視線を離れるいいチャンスと見たか、そのまま風車の方へ進んでいった。
「任せといていいのか?」
クロトが声をかけるも、手を顎において何か考え事をしているアメリア。ふと、顔を上げるとシーラに命じる。
「シーラ、あの一団、尾行できます?」
「はい。恐らく大丈夫です」
あ、まったまった! クロトは会話に割って入る。
「尾行なら俺が行くよ。少しは夜目が利くからそういうの得意だ」
「そうですか。。。では、すみませんがお願いできますか。2つほど確認してきてもらいたいことがあるのです」
アメリアの言葉を聞くと、クロトは闇に溶けるように姿を消すのだった。




