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18/201

18)クロトは再び巻き込まれる

今年はみんなに良い年でありますように

クロト達は王都からまずは西の砦を目指す。


アメリアを助けて王都へ向かったときは、アメリアたちは馬車内で眠りながら他の者は野宿でひたすら駆け戻るという慌ただしいものだったが、


「せっかくだからこの国の町村も見ながら行きましょう」


と言うアメリアの提案もあり、少し回り道をしていくつかの村を見て回ることにした。


ちなみに王証なる謎の首飾りのことは「ゲラントはああ言ったが、道中で話すようなものではない」と言う2人の言い分もあり、宿についてから、夜にでも説明を受けることになった。


最初に立ち寄ったのは王都とは比べ物にならない小さな村で、トナンと言う。


広々とした平野には麦が青々と伸びており、遠くには放牧されている牛も見える。牧歌的で開放感が高い村だ。


王都とのあまりのギャップに驚いたが、ここは王都の食料庫と称される農村地帯で、一つの村だと思った場所は一集落に過ぎず、同じような集落があと4つ。加えて領主の館と村の管理する街の1つをまとめてトナンなのだそうだ。


畑が広いので集落をひと所にまとめてしまうと、日々の作業に出かけるのが不便なのだそうだ。


なるほどなぁ。よく見たら麦畑の遠くに建物が見える。あれが集落の1つなのかも。


各集落にはそれぞれ宿屋があるので、どの集落でも宿泊できるが、シーラが以前泊まって食事がうまかったと言う最初の集落で宿をとった。


夕食までそこそこ時間があるので、集落を散策することに。


農村で働いている人々を眺めていると、小さな女の子がてけてけやって来て「何してるの?」と聞いた。


「みんなが働いてるのを眺めている」と答えると、「そんなの見て面白いの? 変なのー」と言うので「超面白いぞ」と言い返してやった。


シーラがちょっと大人気ない人を見る目で見ていた。


「ねぇ、お仕事よりも面白いものあるからそっち見に行こうよ!」と少女が言う。


アメリアたちを見ると、苦笑しながら目で頷く。


「面白いものなら見にいってみるか。案内してくれ」


「いいよ? えーっとお兄、、、おじちゃん?」


おい待て、今聞き捨てならんこと言ったな。俺はこれでも齢23だ。純然たるお兄ちゃんだ。


すると少女よりアメリアが反応する「えっ、25、6かと思っていました」そんなに年上に見える? 見られた理由によってはショックなんだけど。


「ああ、いえ。見た目というより、なんとなくのイメージですかね」


そうですか。


シーラからも意外そうな声


「私の場合はその実力から、もう少し年上かと思っていた。一つ下だったとはな」


と、聞かれなければなんとなくそのままになりがちな年齢トークが思わぬところで繰り広げられる。


「私はココ! 8歳です!」


少女、ココが自己紹介。ご丁寧にどうも。クロト23歳です。23歳のお兄さんですのでどうぞよろしく。


ココに連れて行かれたのは、新しい風車の建築現場だった。しかもココ曰くちょうど今日が完成の日なのだと。


クロトたち以外にも、手の空いている何人かの村人が見学に来ている。


風車、本では見たことがあるが間近で見るのは初めてだ。大興奮。


「一番はしゃいでいるの、クロトさんですね」と、アメリアが微笑む。


「これは麦挽き用か?」近くで作業している職人に話しかけるとそうだとの返事。


「ちょうどいい風が吹いている。もう少ししたら試運転するから見学ならその辺で見ていくといい」


職人さんの厚意に甘え、手頃な芝の上に座りその時を待つ。間食用に宿で買った焼き菓子をココにも分けて、ぼんやり作業を眺めること30分。


ちなみにこの焼き菓子、王都でも有名な焼き菓子でトナンの名物の一つなので、是非食べてほしいとアメリアが宿で求めたものだ。


「動かすぞ!」という大きな声とともに風車の羽根がゆっくりと回り始めた。なんか感動。


「すごいな」「すごいね」8歳児と同じ語彙力。だが、これはすごいとしか言いようがない。少し中も見せてもらうと、巨大な石臼が風の力を受けて動いていた。実際に麦を挽き始めたら、飽きずにずっと見ていられそうだ。


「今度は壊されないよね!」


ココが職人に声をかける。


「ああ、今度は大丈夫だろう」


二人の会話にアメリアが割って入る。


「風車、壊れたのですか?」


「ああ、実は先日何者かに壊されてな。多分最近この辺に出没する野盗だと思うが」


「野盗?」シーラの目つきが厳しくなる。


「ああ、安心してくれ、領主には伝えてあるから、今頃は犯人も見つかっているはずさ」


「そうか、なら安心だな」騎士の顔つきから戻ってませんよ、職人さん若干引いてますよ、シーラさん。


ココにお礼ついでに、残っていた数枚の焼き菓子をあげて別れたその夜。


逆に宿にココの父親がクッキーのお礼に来てくれた。


「気にしなくてもいいのに、ココには面白いもの見せてもらったお礼ですよ」


「いやぁ、この焼き菓子、この宿でも一番上等なやつじゃないですか。聞けば旅人さんにもらったというので、せめて飲み物くらい奢らせてもらえれば」


いやいや、お気遣いなく、いえいえ、そちらこそ遠慮せず。というやりとりを経て、じゃあ、ワインを一本おごってもらう代わりに、焼き菓子の小箱をココにプレゼントするというところで折り合いをつけた。


「それで、こちらには観光で?」


「はい、いろいろ見て回っているところなんです。と言っても、まだ旅立ったばかりくらいなんですけどね」


「この村はのどかでなんにもないところですが、焼き菓子やチーズ、干し肉など保存の利くものも絶品なので、旅のお供にぜひどうぞ!」


と、村の名物や見どころを教えてもらう。


その後も少し世間話をして、それじゃあとなった時、宿の入り口から小さな影が飛び込んできた。ココだ。


「お父さん! 大変! また盗賊が出たから、お父さん呼んできてって隣のおじさんが!」


「なんだって!!」色めき立つココの父と、宿屋の親父。


素早く剣を掴むシーラ。アメリアも立ち上がり、上着を羽織る。



またですか? まだ旅立ったばかり、、、のはずなんだけど? 一般的な旅ってこういうものなの?


トナン編開始です。

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