転生者とひとかけのこころ
柔らかい布団に、体が埋もれている。
両手は布団の上に出ているけど、寒くはない。
遠くでぱちりと薪のはぜる音。
…生きてる。
一瞬、何で、と絶望して、すぐにその思考に戦いた。
それで、あ、前世と今生がごっちゃになってる、と自覚した。
今は、今。
私は、17才の、ヘスター·グレン。
だから、生きていて当然。
今は、絶望しなくちゃいけない前世じゃ、ない。
そう、ひとつずつ、自分に言い聞かせるように考える。
生きているんだから、今どういう状況か、確認しないと。大丈夫。今は、今生なんだから。
心の中で繰り返し唱えて、目を開けた。
それなのに。
「きゃああああああああ!」
瞳を開けた次の瞬間体から出た、自分のものとは思えない悲鳴。
絶叫する私の前で、若様がなすすべなく立ち尽くしている。
それなのに、叫ぶのを止められない。目が熱い。何かが溢れこぼれてぼたぼた顎をつたって落ちる。
「…ヘスター」
ためらいながらも若様が一歩前に踏み出した、それを見て全身の毛が逆立つ。
まごうことない恐怖。
「やあああああああああああ!!」
がくんと視界がぶれて、ベッドから転がり落ちたと知っても、よじ登ろうなんてみじんも思わなかった。
ただただ私は、視界を隠すシーツにすがり付いて、震えながら叫び続けた。
それから、しばらくの記憶がない。
「ヘスター。私よ、マリエ。分かる?」
「今、あなたがいる場所は、お城。貴女の部屋。ね、安全でしょ?」
「皆、部屋から出たから、今いるのは私と貴女だけよ」
気付いたときには、マリエさんの声を聞いていた。聞き慣れた少し高めの声が、ゆっくり、静かに頭に入ってきて、ようやく自分の耳がどこにあるのかを思い出せた。
そこから身体の感覚が戻ってきて、自分の呼吸が異様に速いことにも気付いた。
息が苦しい。
「ゆっくり息を吸って。そうよ、大丈夫、ゆっくりよ」
手で目をぬぐうと、戻ってきた視界が、口に袋のようなものが当てられているのを捉えた。
過呼吸…
苦しさの原因が分かって、また少し頭が冷える。
絶えず優しく語りかけてくるマリエさんの声を聞きながら、息を整えた。
「落ち着いたら、まずベッドに戻りましょう?落ちたとき、怪我をしなかったか見せてちょうだい」
まだ、声は出せなかった。でも、頷いて身体を起こすことにはなんとか成功する。
マリエさんが私の身体を布団ごと支えて、ヘッドボードに寄りかからせる。
「痛いところは、ない?」
聞かれて、横に首を振った。
「あのね、貴女は、駅で倒れたの。若様が内緒で貴女につけていた護衛に、お城に運び込まれたのよ。解毒が早かったから、目が覚めれば大丈夫ですって」
私はなんて言っていいのか、分からなかった。
「今は、夜の2時よ。7時間くらい気を失っていたから、喉が渇いているんじゃない?」
2時…こんな時間に皆を騒がせたのか。
さっきの叫び声を思い出して謝ろうと思ったけど、まだ頭が痺れたようで、言葉にならない。
「あ…」
かすれた小声を出しただけで、のどがびりっと痛んだ。
マリエさんが、にっこり笑った。
「まず、話すよりも先にお茶をのんでね」
渡されたお茶は、熱すぎず、じんわりとのどを通って身体を温めていった。
「お菓子もあるけど、食べる?」
見せられたのは、口に入れたら溶けてしまうような小さなマカロンだった。大好きだけど、食欲が湧かなくて首を横に振る。
「そう。じゃあ、また後で食べましょう」
「うん…」
今度こそ、まともに声が出せた。
私はゆっくりゆっくりお茶を飲んだ。
泣いたせいと、過呼吸のせいで、頭ががんがん痛かった。体中がだるいのもそのせいなのか、それともさっき聞いた…毒が抜けきらないせいなのか。
「…毒を、飲んだの?私」
かすれた声が出た。
私の言葉に、側にいたマリエさんが頷く。
「駅前で食べたたい焼きに入っていたらしいの。お店とその周りにいた人について、もう若様たちが調べているから、安心してね」
「そう…」
美味しいお店だったのに、こんなことになって迷惑をかけてしまった。もうあそこにたい焼きを買いにいけないんだな、と残念に思った。まあ、その前にしばらくはたい焼きを見るのもいやだけど。
ただ、不思議なことにそれ以上の感情は湧かなかった。それより…
「ねえ、マリエさん」
「なあに?」
マリエさんはすぐに返事をしてくれたのに、私は何を言う気だったのか自分で分からなくなってしまった。話したいことは、確かにあった。でも、何から言えばいいのか、誰に言うべきなのか、どう言えばいいのか、どれもこれもが分からなかった。
「…ごめんなさい。いろいろ、話さないと」
「急ぐことはないわ。ごめんね、一応安静だから、ご家族には明日の朝来てもらえるわ。眠れるようだったら、今のうちにもう一度眠りましょ?」
眠れるのか。
自分に問いかけたら、身体が震えた。それをごまかすために、慌てて首を横に振る。
「たくさん眠ったから…」
マリエさんが、顔をくしゃりとゆがめた。そして、椅子から降りてベッド傍にしゃがみ込むと、掛け布団越しに私の腕に手を置いた。
「ヘスター。無理しないで。眠れないなら眠れないって言って。怖かったら震えて。平気なふりなんか、しないでいいの」
…マリエさんが。
そんな優しいことを言うから。私はもう、肩の震えが大きくなるのをどうしようもできなかった。
「怖いの、どうしても。どうしたらいいのか、分からないの」
震えてくるの。ここは安全だって思っても、怖いのが止まらないの。
「あのね、毒は、もう。…毒を飲まされたことは、もう怖くないの。でも私、それで前世を思い出しちゃって…怖いの。死んだときのこと、死ぬまでのこと、全部、一気に」
ばらばらだ。
こんな半端で支離滅裂な言い方じゃ、マリエさんが困ってしまう。
そう思うのに、うんうんと頷いてくれる彼女に甘えてしまう。
一度止まったはずの涙が溢れてシーツにぼたりと染みをつくる。しゃっくりが、出た。
そんな私に気付いて、マリエさんが手を伸ばしかけて聞いた。
「背中、触ってもいい?」
頷くと、優しい手つきで寝間着の背中をさすられる。
指先が触れた瞬間、びくりと身体が反応してしまった。多分、マリエさんも気付いたはずなのに、何も言わない。こわばりは、少しずつマリエさんの体温でほぐれていった。
こんなに、人の手は優しいのに。
温かいのに。
それなのに、怯えてしまう自分が嫌で、また涙が出る。
「こんなの、嫌。マリエさんのこと、大好きなのに、ごめん」
「私のことなんかどうでもいいの。ちゃんと、怖くなったら言ってね」
マリエさんは、私が怖がっていることを分かっている。それを聞かずにいてくれて、それを厭わず気遣ってくれてくれる。
そのマリエさん一人を私の側に残してくれたのは、お城の人たちだ。きっと、若様や、ロンや、領主様ご夫妻や、皆。
皆、優しい。今周りにいる人たちはいい人たちだ。それなのに、もう大丈夫だから行っていいとマリエさんに言えない。安心感をくれた彼女と2人きりの状況を、壊す勇気がでない。
こんなふうに周りの人間を恐れている自分が醜く思える。
でも、はっきり思い出していなかっただけで、ずっと、私は醜かったのかもしれない。だって、人の顔を見るのも、外に出るのも、髪を切るのも、思えば何もかもを1人で勝手に怖がっていたじゃないか。
こんな自分が嫌なら、早く隠して、もう平気だって言わなくちゃ。
そう思うのに、涙が止まらない。
「…ごめん」
「大丈夫、泣いて。明日になったらあっつい蒸しタオル持ってきてあげるし、鼻垂らしたら拭いてあげるから」
甘やかされている。そんなふうにしてもらう価値、私にはないのに。
でも、温かくて。
背中をさすってくれる手が、優しくて。
私は、気付けばうとうとと眠り込んでしまっていた。
まどろみの中で、何か怖いものに捕まりそうになるたびに、しっかりと手を引いて引き戻されるというのを繰り返していた。
うつらうつらという浅い眠りから覚めると、マリエさんが私の手を握ったまま眠っていた。
あれからずっと、側にいてくれたんだ。
私は、お腹の中が温かくなるのを感じた。
そこへトントン、と控えめなノックの音がして、マリエさんがぱっと目を開けた。
「…おはよう」
「おはよう。私ったら一緒に眠っちゃったわ」
決まり悪さを隠せない私の挨拶に、マリエさんも少し恥ずかしげに返してくれる。
それから、扉の方へちらりと目をやった。
「大丈夫だから」
私が言うと、曖昧に頷いて扉の方へ向かう。
マリエさんは、廊下へ出た。
誰が来たんだろう、と私は思った。日の高さからして、もう8時過ぎだろうか。
「ヘスター。奥方様がいらしたんだけど…」
会えるかと聞けず迷っている彼女に、頷いた。
「着替えてお会いするわ」
「そのままでいいの!それより、無理をしないで?奥方様も、そうおっしゃっているから」
無理か。私は自分に問いただした。
マリエさんに泣きついて休んだことで、昨日より気持ちが大分落ち着いている。だから大丈夫だ、と思った。大丈夫にならないと、と言い聞かせた。
「無理なんかじゃ、ないわ」
マリエさんは気遣わしげに私の顔を観察したけど、私がきりっと彼女を見つめ返したら、諦めたように奥方様を呼びに行った。
間もなく、きれいな人が静かに入ってきた。
「ヘスターちゃん」
優しい声が私を呼ぶ。
そんなきれいな声で、優しく呼びかけられるような人間じゃないのに。
彼女の目に映るのが恥ずかしくて、私はお辞儀のふりをして身を縮めて目を伏せた。
「身体はどう?」
「はい、お陰様でもうすっかり元気になりました。ご心配をお掛けした上、このような格好で申し訳ございません」
頭を下げた私の頭頂部に、奥方様がため息を落とした。
「駄目よ。ヘスターちゃん」
駄目?
「そんな強ばった顔で元気だなんて、私に通用すると思って?」
優しい声で、だけどきっぱりと言われて、私は凍り付いた。
「私は、」
「あのね。平気なふりなんて、してほしくないのよ。私の前だと無理をしてしまうのなら、私はすぐ戻るわ。ただ、顔が見られればと思ってマリエに我が儘を言っただけだもの。ごめんなさいね」
すでに奥方様の口調は、いつもの柔らかさに戻っている。
それなのに、その柔らかな言葉がなおさら胸を刺す。
「…そんなふうに、気遣っていただくべき人間では、ありません…」
奥方様が小さく息を飲む音がした。
「ヘスター…何を言うの」
「私は、…」
言うな。こんなこと、この美しい人に知られたいのか。
口を閉じようとするのに、そこからひゅっと、うまく吸えなかった空気が音をたてて出て行く。
「私!」
駄目だ、知られたくない。言うな。マリエさんにも、奥方様にも、家族にも、若様にも…!
口から出せなかった言葉の代わりだというように、目から熱いものが流れ出る。
それが、柔らかいものに吸い取られたと思うと、私は抱きしめられていた。
またしょうもなくカタカタと震え出す私の身体を、包むように抱き直して、奥方様が言う。
「ヘスター、私は貴方が好きよ。貴方がなんて言おうと、何を思いだして何を気にしようと、私は勝手に貴方が好きなのよ」
私は首を振りながらあえいだ。
「奥方様は、知らないんです…私、」
続きを言おうとしたとき、ことさら強く抱きしめられた。それで反射的に押しのけそうになって、ああやってしまったと気付いた。いや、違う。もともと昨日叫んで怯えた時点で本当は、薄々気付かれていたんだ。そう思ったら、たがが外れた。
「…人に触れるのが怖いんです」
そう言うと、あとは雪崩のように口から言葉が溢れた。
「死んだんです、私。街で会った男に騙されて、酷い目にあわされて。おまけに脅されて、苦しくて、毎日苦しくて…苦しいままで、死んだの。何かを飲んで、死んでしまったの」
意図的だったのか、間違いだったのか。
分からない。
分からないけど、死ぬまでの日々の恐怖は覚えている。
「覚えていたくない。でも、思い出しちゃったんです。一人ぼっちで、苦しくて怖くてどうしようもなかったこと。全部、前世のことだって思っても、怖いのが消えない…」
死と暴力の恐怖が消えない。
怖い。
全ての元凶を思い出して、男というだけでも、怖い。
「触られるのが、怖いんです。男の人が怖い。死ぬのが怖い」
「ええ」
「怖がりたくないのに。こんなの、嫌なのに。助けて欲しい。誰か、助けて」
前世の『私』を、助けて。
そんなことが出来るわけないのは分かっているのに、願うことを止められない。
「ええ。助けるわ」
何から助けるのか、なんて聞く気にはならなかった。ただ、本気で言ってくれているって、分かったから。私が一番欲しい言葉をくれたから。私は、奥方様の胸にすがって泣いた。
「私も、皆も、ヘスターのことを助けるわ」
私の嗚咽に、マリエさんが泣いている声が混じった。
「怖がって、いいよ。泣いていいの。前世で、誰にも言えなかったんでしょう。一人で苦しんだ分、今度は泣いて、頼っていいのよ」
側に駆け寄ったらしい彼女が、必死の声で伝えてくれる。
それに安堵を覚えながら、同時に、新たな恐れが沸き上がる。
「でも、私には」
そんなふうにしてもらう資格なんてない。愚かで、醜い私には。
口の中で呻いたそれを、奥方様に聞き取られてしまった。
「自分のことを責めているの?馬鹿なことを言わないで。何一つ、貴方のせいではないのよ。貴方は、いい子。前世の貴方も、いい子だった。悪い人間がいて、周りに心配をかけられないいい子の貴方がいただけ」
「違います、だって、騙されたのは私で」
「騙した大人がいたのよ」
「言いなりで、悪いこと…」
「辛かったわね…可哀想に」
「やめ、やめたいって思って、止めなきゃって思ってたのに…」
「一人で、悩んでいたのね」
「い、今も、勝手に怖がってるし…」
「当然よ。怖い思いをしたんだもの」
あれだけ泣いて枯れ果てたかと思ったのに、まだ涙はあとからあとからあふれ出す。
泣いて、ときどき思いつくままに自分を傷つける言葉を口にした。そのたびに奥方様は、頭を撫でて、可哀想にと慈しんでくれた。
可哀想。
第三者の視点の言葉だ。でも、温かい気持ちだ。
繰り返し撫でられ、可哀想にと慰められるうちに、私の中にもまた、可哀想にという気持ちが湧いてきた。
可哀想だ。
『私』、可哀想だった。
騙されて、可哀想だった。
痛い思いをして、悩んで、可哀想だった。
助けを求められなくて、可哀想だった。
そうやって前世を憐れむうち、私は前世の『私』をある程度切り離して見られるようになっていった。
混乱していたんだ。
今まで、前世をここまで同一視して、たった今経験したことのように捉えることなんてなかったのに。
謝って、奥方様の胸から離れる。
きれいなドレスをびしょびしょにしてしまったけど、奥方様はすぐに乾くわと笑ってくれた。マリエさんのエプロンも、同じくらいびしょびしょだった。
日が高く昇るころには、涙も乾いてぼうっとしてきた。
昨日の夜、今朝、とマリエさんと奥方様を相手に何度泣いているんだろうと思った。でもマリエさんにわけも聞かず泣かせてもらって、奥方様に全部吐き出して、そのたびに少しずつ胸の中の嵐が静まって、ばらばらになった心の欠片があるべき場所に収まっていくような、そんな感覚もあった。
昨日の約束通りにマリエさんが蒸しタオルをもってきてくれて、三人でそれを目に当てた。ついでに冷やしたタオルも当てて、それでまた一つ、心が収まった気がした。
それから3人でベッドの上で朝昼兼用のおにぎりを食べながら、少ししゃべった。
昨夜胃の洗浄をしたという私のお腹は、正直かつ剛胆にも空腹を訴えてきた。あんなことがあって、あんなに気持ちが荒れ狂った後なのに、また物を食べる気になっている自分に、驚きつつもほっとする。
「おにぎりって好きよ」
奥方様はピクニック中の若い娘のように布団の上にゆったりと座って、顔をほころばせた。
こういうときは無礼講なのだと言った言葉通り、少し砕けた言葉で言う。
「私もです。この、中身が見えないワクワク感がたまりません」
「ふふ。うちの息子たちと同じことを言っているわ」
子どもがいるとは見えない若々しい奥方様とマリエさんがおしゃべりしているところを見るともなく見ながら、白米と鮭を味わっていた私の頭に、その息子の一人が思い浮かんだ。
「私、若様に昨日、失礼なことをしてしまったのでした」
「悲鳴を上げたという件かしら?マーカスだったら怖がっても大丈夫よ。あの子は多少落ち込ませたくらいがちょうどいいのだから」
「そう、でしょうか」
「ええ。誰に似たのか強引すぎるくらい活力がありあまっていて、困ってしまうわ」
強引なところは少し、奥方様に似ている気がするけど。
返答に困っていると、マリエさんが助け船を出してくれた。
「そういえばヘスター。お家への連絡はどうしたい?」
「できれば、もう元気だから来なくていいと伝えて欲しいの。…家族の顔は、もうしばらく見られそうにないから」
家族には、心配をかけたくないと思った。他人であるマリエさんや奥方様にこれだけ心配をかけておいておかしいけど、家族だからこそどれだけ心配するかが分かるから、心配されたくない。
また、前世のせいでこんなふうに動揺しているなんて、知られたくない。
収まりかけた胸がざわりと騒いだとき、マリエさんがしっかりと頷いてくれた。
「わかったわ。まかせて」
私の我が儘を引き受けて、私の心を、また救ってくれる。
「…ごめんなさい」
思わず謝った私の気持ちを軽くするように、マリエさんはうふっと笑って言ってくれた。
「あら、大丈夫よ。ロン様に丸投げすればうまくやってくださるから」
私はその心遣いに感謝しながら、考えた。
これだけ心配をかけて、面倒を見られている。仕事だって…休んでしまっているし、やるべきこともある。やっぱり、ちゃんと話をしないといけない。
「午後、若様かロンに会えるといいのだけど」
「無理はしないでほしいと、さっき伝えたわよね」
奥方様の声には、探るような響きがあった。
「大丈夫です。今度こそ、本当に」
何度も泣いて、話して、落ち着いたから。でもお陰様でなんて言ったらまたうわべを取り繕っていると思われそうで、感謝を伝えるのは別の機会にすることにした。
まだ心配そうにする2人を安心させるために、できればあらましは先に話しておいてほしいとお願いすると、奥方様が快諾してくれた。それから言われたとおり診察を受けて、私は大人しく昼寝をすることにした。
なるべくヘスターの復活を急ぎたかったのと、だからといって簡単にすむ問題ではないと思ったので、いつもより長めになりました。
一人称小説のため、ヘスターが被害を受けた自分を卑下する表現がありますが、私は、悪いのは騙す人間、人を傷つける人間であって、それとおのおのが自己防衛をするのは別問題だと思っています。力不足で伝わらず、不快な思いをさせていないことを願いつつ、一応記させていただきました。




