↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/120

転生者、さぎにあう?

「それはこっち。三つずつ、この袋に小分けにして」

「ああ、そっちのは依頼品だから、別にしておいて」

黒猫屋は案外真面目だった。前回のデートうんぬんのやりとりがあったので若干警戒していたのだが、手伝いをしている間は無駄口も聞かず、指示は端的だった。

私はその指示通りに、昨日都から仕入れてきたというお菓子やらお茶やらアクセサリーやらを注文品とそれ以外に分けて、梱包していく。実は、こういう作業は得意だ。頭脳労働よりも、単純だけど根気のいる作業が自分には向いていると常々思っている。ちなみにロンは私の付き添いだが、手伝わず、座って何か書類を読んでいた。黒猫屋はそれについて何も言わないけど、私は何となく身内が働いていないようで落ち着かず、2人分働かねばという気分で手を動かした。

数時間経って一段落ついたころに二人の若者がやってきて、馬車に荷物を積んで出ていった。

それを見送ると、黒猫屋は長身をぐいっと伸ばしながら言った。

「助かったよ。あいつら昨日は店に戻ったの夜中だったから、午前は休みにしたんだ。雇用主としては従業員に安全運転させないといけないからな」

安全運転なんて、懐かしい響きだ。でもそれじゃあ、彼も夜中に帰ったんじゃないだろうか。横目にさっと観察すると、若干顔色が悪い。

「・・・働き者なんですね」

意外と。今日もピアスがキラキラで、とてもそうは見えないけど。

「惚れちゃった?」

「からかわないでください」

今日はお手伝いだから扇子がなくて、ただでさえ私はうつむいて生活しているのだ。これ以上下を向いて、爪先を通り越して背後の地面を見るはめになるのはごめんだ。

「からかってる訳じゃないけどな。まあいいや、今日は」

そう言って彼は私の視界にずいっと何かを差し出した。それは、さっき包んだお菓子の一つだった。

「なんですか」

「ん?餌付け」

餌付けって、あれだよね。動物に餌をやって手懐ける。この人、自分で餌付けって言った。

「私は動物じゃありません」

笑顔で差し出されたものだから、私は呆れながらもそれを受け取ってしまった。

「待ってろ、今茶もいれるから。そしたら、飲みながら例の話にしようぜ」

お茶の準備に立った彼の姿を見ながら、私はぼんやり考えていた。どうしてわかったんだろうと。包みの中は、私が作業中に食べてみたいなと思っていた小ぶりのマカロンだった。

ピンクのマカロンはラズベリーの酸味とバタークリームの濃厚さが絶妙で、上品な味だった。出されたコーヒーのすっきりした苦みと良く合う。

労働後の身体に甘味と苦みが染み渡る。少し元気が出て、私は自分から口を開いた。

「詐欺の種類だとか、具体例だとか、いろいろ書き出しては見たんですけど。でもまずは、詐欺の定義を確認した方がいいかなと」

「まあそうだろうな」

私はお城で書いてきた詐欺用語集を机に置いた。

黒猫屋はコーヒー片手に、それをめくって読んでいく。これ、若様に見せたときもそうだったけど、ものすごく緊張する。目の前でテストの採点をされている気分だ。

数枚目にさしかかったとき、彼が口を開いた。

「実はさ、うちにもちょっと事情があったんだ」

「事情ですか」

聞き返したのは同じくコーヒーを飲んでいたロンで、それに黒猫屋が頷く。

「最近、うちの店の名前をかたって勝手に荷物を送りつける奴が居るんだ。・・・あんたなら、この意味分かるよな?」

彼が私のほうを見て言ったので、私ははっとして身を乗り出した。

「代引き詐欺じゃないですか!」

黒猫屋は深く頷いた。

「どういうことか、説明しろ」

眉間に皺をよせたロンに、私は口早に説明した。頼んでもいない商品を送りつけて、代金を請求する種類の詐欺があって、それを代引き詐欺というのだと。送られる商品は、健康食品だったり送り返しにくい生ものだったり・・・確か中には、5000円で缶詰一個とか、代金に見合わない商品もあるんだった気がする。

「うちの場合、顧客の家にうちのを真似た箱が届けられるもんだから、家族がいつものものかと思って払ったら中身が空だったっていうんだ。そんなのがここ最近で数件あってさ」

他には、相手の威圧感に押されて払ってしまったりする場合もあるだろう。

「詐欺の知識があると分かっている転生者相手に、わざわざ詐欺をはたらいてくるんだ。まるで、挑戦されているような気分だぜ」

にやりと口の端があがる。

「これは、受けて立つしかないと思ってたとこに協会からあんた等の話が来たんだ」

そうか、彼にとっても渡りに船だったんだ。でも。

「・・・それじゃあ、私が報酬代わりに働く必要なかったんじゃないですか?」

私は、自分の眉間にしわが寄るのを感じた。

対する黒猫屋は、ますます口角を上げる。

「デートの機会をみすみす逃すバカはいないだろ?今日も2人っきりで手取り足取り教えながらってのもいいなって思ったんだけどお目付役がいたからなあ」

・・・ここに詐欺師がいる!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。