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Extra5 アルの居ぬ間に

「さて、試された後でまた此処に来たという事は、お二人にも聞きたい事がある。と言う事ですね?」

「ええ。アルが居ないところで聞くのが正しいのかは分かりませんけど・・・」


 ライザもイルナも、アルに聞いたところで何の問題も無く、むしろ聞けば教えてくれるであろうとも思ってはいた。

 しかし、本人による見解よりも、他者から見た意見が欲しかったのだ。


「虹銀ランクとは何なのか、どういう存在として見られているのかが、お二人は知りたいのでしょう?」

「え、ええ。よく分かりましたね」

「それはそうでしょう。

 噂程度で実体の知れない、探索者としての最高ランク。

 同じ探索者でも、その多くが関わる事の無い、現状で世界に三人しか居ない存在ですけれど、今やその一人の身内、つまりは当事者となったのだから、ご自身の身の置き場を知りたくなるのは当然でしょうしね」


 それ以前に、二人にとっては探索者を含めた、一般的な噂程度は知っているが、王侯貴族や、各ギルドの上層部等、所謂立場ある人達がどの様に捉えているのかを知りたかったのだ。

 マディナが言う様に、既に二人は身内であると共に、外観と装備を変えて、虹銀ランク探索者としてのアルと共に居る者としても動く事となった。

 そうなると、一般レベルでの話しだけでは対応し切れない場面もあるだろう。

 それ以前に、アル自身がこれまでの人生の大半を非一般的に過ごして来た事から、まともな対応が出来ない可能性も十分に考えられるのだ。

 こうした考えは、元とは言え貴族として育てられたライザによってイルナに示され、ある意味では育ての親とも言えるマディナに相談しようという事となったのであった。


「先ず言えるのは、立場がどうであれ、基本的には一般に流れている噂と大きな差は無いという事ですね」


 つまりは『不可侵』『一人で一軍に値する戦力』『王であってもその言葉を無視出来ない』という、特定の国に属さない反面、最大の権力を持つ存在という噂である。


「ただ、実際に知っている一握りの者とすれば、多少の差異はありますけれどね」


 その差異とは、不可侵では無く、反発を受ければ命取りの為に不可侵である方が都合が良い。

 一軍に値するのでは無く、一軍をもっても圧倒される。

 その言葉を無視出来ないのでは無く、指摘されるだけの事をしているのに無視すれば反発を受ける。

 というものであった。


「そもそも疑問なのですが、そのランクの根拠となる虹銀貨を持つ、ただそれだけで、それだけの力が得られるというところが分からないのですが」

「そうでしょうね。

 そもそも、問題の虹銀貨の所有権がどうして得られるかは聞いているのかしら?」

「はい」


 曰く、『迷宮から出て来ると、何時の間にか所有している』という、原因も理由も分かっていない状態である。


「未だに詳しくは分かっていないけれど、推測では、虹銀貨を得たから、その立場を得る訳では無いのよ」

「ええと、どういう事でしょうか?」

「あくまでも推測、だけれど、特殊な存在であるからこそ、その印として虹銀貨が与えられるのではないか、というのが研究者達の多くが出した現状での結論ね」


 卵が先か、鶏が先か、という話しにも聞こえるが、実はそうでも無い。

 そもそも、迷宮で得られるという条件に、研究者の中で引っかかりを覚えたのだ。

 これまでの虹銀貨所持者は、天浮島の力を除いても、それぞれが何かしらの形で、大きな力、才能と言っても良いものを持っていた事は分かっている。

 そうなると、何らかの才能に優れた者が、虹銀貨を得るのであろうという推測は、結果論的ではあるが想像に易い。

 では何故、迷宮で得られるのか。

 そもそも迷宮とは何なのか。

 誰がそれを与え、また判断しているのか。

 当然、人の成せる技では無い事だけは確かであろう。

 その為、人が想像する範囲の外、神の御技であろうと考えるしか、人の身では考えられないのであった。

 そう考える事で、迷宮自体も、神の御技によって作られ、何らかの意味を持つ、この世界において必要な要素であるという定義付けが出来る事となるのだ。


「まあ、正直なところ、何も分からないから神の御技による、という流れで説明を付けたという事ですね」


 その後、それを元にして教会の巫女や、教国の姫巫女等が神へと問うたものの、それを否とする神託が無い事から、現状では神の御技で才能ある者が選ばれ、示されているのだというものが定説となっているのだ。

 加えて、人の手による物とは思えない虹銀貨そのものや、空に浮く島もあり、神によるという説を強固なものとした。


「それにね、これは貴女達お二人にも関係するのだけれど、虹銀貨所有者は、単に才能があるというだけでは無いのよ」

「と、言いますと?」

「お二人は、魔王誕生の際に召還される事がある勇者の事を、どこまでご存じですか?」

「勇者、ですか?」


 勇者とは、不定期に現れる魔王により、人の世界が蹂躙されない事を神に願い、結果として異世界より召還される存在の事だ。

 世界を移動するに耐え得る存在となる為、そして魔王を討伐し得る存在となる為、その身は神と同等となり、現人神という存在へと引き上げられているというのが、何代か前の勇者が、実際に神から聞いた話しで分かっている。


「教会によると、勇者程の存在では無いのだけれど、虹銀貨所有者は半神と位置付けられるらしいわ。

 その身は人間ヒューマン種でありながら、寿命も魔力保有量も上位精霊ハイ・エルフ種並。研究者によっては上位人間ハイ・ヒューマン種、或いは神人種と称する者も居るわね」

「半神、ですか・・・」

「言い方は悪いでしょうけれど、所謂人の異常種と定義している者も居ます」


 神とは、人の手が届かぬところに位置する力を持つ、絶対的存在。

 魔物の異常種は、基本的に通常種より強靱な体や生命力、強力な攻撃力等を持つ事が知られており、同じ様に人という枠組みから逸脱した力を持つ存在が、虹銀貨を所持しているという妙がそこにはあった。


「人が決めた権威や立場に関係無く、存在として上位。それが虹銀探索者という定義になりますね」


 だからこそ、真っ当な思考を持つ者であれば警戒し、距離を置くし、それを利用しようとする思考を持つ者であれば、様々な手を尽くして取り込もうとするのだ。

 上位の力を持つ存在を、敵に回せばリスクが大きく、味方にすればリターンが大きい。そんな存在が、虹銀ランクであった。

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