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14 自重無き結果

「アルさん・・・少しは自重しようよ」


 イルナの言葉は、おそらく誰が聞いても同意を示すだろう。が、ライザの様に、ある程度地位有る立場、或いは身分を持つ者にとっては、どれだけの代物なのかがある程度認識出来てしまうだけに呆然としてしまうのは仕方の無いところであろう。

 であっても、そんな事に動じないのがアルである。


「実際、使おうとして作って無かったからなあ。

 オレとしては、とりあえずどこまで出来るのか試してみた結果だから、初期装備は特に自重してないんだよ」


 そう言われると、まるで初期に作った物だけがそうである様にも聞こえるが、要は自覚在りという事だ。

 しかも、試しの為に自重していないと言う事は、つまり今後も・・・という事でもある訳だが。


「性能的にはまあ、確かに二人を守る意味では十分だろうから良いんだけど」

「けど?」

「ちょっと魅力的過ぎないか?

 正直なところ、あんまり人目に晒したくないと言うか」

「マスター・・・ここで惚気ですか?

 選んでおいて何ですけれど、そのぶっ壊れ性能より、奥様方への視線の心配ですか」

「そりゃそうだろ」


 根本的に論点がずれているアルもどうかと思うが、契約精霊が契約者の作った物に対して『ぶっ壊れ性能』と言っちゃうのはどうなんだろうか。と思わずにはいられないライザとイルナであったが、アルの心配がヤキモチに類する類であった為の喜びが勝り、この場には誰もツッコミを入れる者は居なかったのであった。



「んっと、ライザ。何時までも呆けてても仕方無いし、アルさん“だから”っていうだけじゃ無くて、エーファ“だから”も加えて、諦めるしか無いと思うよ」

「え? あ、ああ、そうだね。

 アルとエーファ“だし”、仕方無いと思えば良いんだよね」


 色々重要な部分を放置する宣言をした二人に対して、アルもエーファも何かを言おうとしたけれど、二人に視線を向けられて、その口から何か言葉が出る事は無かった。

 何しろ自覚有りなのだ。追求されれば勝ち目は無い。


「まあ、それはそれとして、だ。

 ライザもイルナも、新しい装備、特に武器に関しては試して、慣らしてから使った方が良いぞ。

 自分で言うのも何だけど、結構危険な代物だから」


 片や、魔法的に分解して切断という結果に至り、片や、魔法的に重さを与えて打撃という結果に至る、知らずに見れば切断と打撃だが、中身は全くの別物である。

 それこそ、当たれば終わり、文字通りの一撃必殺効果を与えるに容易い代物であるのだから、一つ間違えれば味方や自分にさえ、その結果を与えかねないのだ。


「それと、流石に安全策として、それぞれライザ、或いはイルナだけにしか発動出来ない様に、特定認識はさせて貰うよ」


 つまり、剣ならライザ、杖ならイルナでない者が手にした場合、付与した魔法が発動しない様にするのである。

 そうすれば、アダマントの超重量によって振るう事は厳しく、切断や打撃効果も発動しなくなる為、盗難の防止にもなるし、万一敵性存在に奪われたとしても、このトンデモ武器が使われるという事態は防げる事になる訳だ。


「うん、それは良いけど、ちょっと気になる部分があるんだけど」

「気になるって?」

「ええと、素材が凄いのもあるんだろうけどね、それでもほとんどの機能と言うか性能? って、付与によるものだよね」

「まあ、そうだな」

「それって、同じ様に付与すれば、こういう武器が作れるって事なんじゃないのかな?」


 そう。付与によってトンデモ武器化しているのであれば、同様の武器は付与術師が居れば作製は可能という事となる。

 ここまでのスペックを誇らない、多少劣化した物であったとしても、それを装備した一部隊でも居ればその国は、他国に対して相当優位となるのは間違いが無いのだ。


「それは正解ではあるけど、間違いでもあるなあ。

 先ず第一に、オレが扱う刻印魔法による付与であれば可能だけれど、一般的な儀式魔法では、魔法陣を描くスペースが必要になる」


 刻印魔法は、所謂表意文字を方式に従って並べる事で、効果を発揮出来る様になる。

 対して魔法陣は、方式に従って陣を描く事で、効果が発揮出来る様になる。

 つまり、同じ効果を儀式魔法によって付与させる為には、陣を描くだけの平面スペースが必要となるのだ。

 今回の場合、切断効果を発動させる為には幅広の大剣で可能かどうか、打撃効果を発動させる為には巨大な大槌で可能かどうか、といったところとなる。


「第二に、刻印魔法は刻印を魔法的に刻む事で成立するけど、儀式魔法は魔法陣を描かないと成立しないんだよ」


 刻印魔法は、表意文字を魔法的に刻む為、完成された品に対して、その素材構成さえ分かっていれば、後から刻む事が可能となる。

 ここで言う刻むというのは、その素材に記録させる事を示す。今回の場合、例えば剣であれば、軸となっているアダマントに一つ、精神受容金属に一つ、魔力伝達金属に一つ、といった感じ、或いは片面に一つ、もう片面にもう一つ、といった感じに刻む事も可能となるのだ。

 つまり、剣だけで都合六ヵ所、付与を刻む余地を持つ。

 対して儀式魔法は、魔法陣を、魔石等の推定物質を砕いた粉を溶かして魔法的処置を施した専用のインクを用いて描かなければならない。

 その為、素材毎に付与を施す事は出来ず、完成した後で、平面部分に魔法陣を描かなければならない。

 つまり、剣で言えば刀身の両面に二ヵ所が限界となるのだ。

 魔法陣を描く為に通常より巨大な平面を持つ武器を作った挙げ句、付与は二つまでしか施せないのだ。


「第三に、そうした理由から必要以上に素材が必要となるし、当然かかる金額も跳ね上がる。

 作ったとしても、肥大化した武器は取り回しや持ち運びに難が出るといった、様々な理由で現実的じゃ無いんだ」


 それこそ、金に飽かせて作り上げ、重量軽減を施したとしても、嵩張る武器の実用性が相当落ちる事は確実となるだろう。

 見た目からの威嚇武器としては有効かも知れないが、であれば、むしろ実用的な武器を用意した方がより有効であろうし、そうした事情が考えられる相手であれば、むしろ見せかけだと侮られる事になるだろう。

 加えて言えば、見た目による威嚇が効かない魔物相手では、それこそ単に、使い回しの悪い武器でしか無いのだ。

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