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10 力

「まさか。流石に探索の為だけだよ。

 下手に天浮島の防衛機能なんか使ったら、周辺への被害が考えたくも無い事になる」


 天浮島にはそれぞれの特徴があるが、基本的に備わった五つの、同一機能もあった。

 一つは探索機能。

 一つは迎撃機能。

 一つは転移機能。

 一つは移動機能。

 一つは譲渡機能。

 そもそも何故島が浮いているのかさえ、所有権となる虹銀貨そのものが謎である為に分かっていないが、少なくとも所有権を持つ者には所有する天浮島の機能を、自由に使う事が出来るという事は分かっている。


 探索機能は、周辺の詳細探索情報を得られるという機能で、天浮島を中心に半径五十キロ程の範囲を探索する事が出来る。

 探索可能なのは範囲内の生命、鉱物、地形情報となり、生命は種別毎の探索が可能であるので、遮蔽物に隠れていても捜し出す事は可能となるが、特定個人を探し出すという様な使い方は出来ない。

 今回の場合は軍が相手となる為、多人数が集まっている場所を探索すれば済む訳だ。

 但し、地中となるとおよそ一メートル程度しか探索効果が得られない為、地中や洞窟等に隠れられてしまうと意味を成さなくなる。


 迎撃機能は、対地対空攻撃機能であり、大気中の魔素を蓄積し、高濃度な魔力弾として撃ち出す、あるいは防御壁を作り出すものらしい。

 らしいというのは、そもそも魔素や魔力自体の存在が推定である為、そういうものらしいという推測止まりなのだ。

 しかしその威力は、過去に天浮島同士での争いで用いられた記録が残されており、その時にはたった一発の攻撃で、半径十メートル程の大穴クレーターを台地に穿ち、その周囲に衝撃波が走った事で、近くにあった村が一つ吹き飛んだという。

 それだけの威力を持つものが、島の全方位に数百という数で装備されており、しかも六秒に一発撃てるというのだから、もはや天浮島同士でなければ手出しすら出来ない。


 転移機能は、単純に天浮島とを繋ぐ転移門を設置出来る機能であり、天浮島が移動しても機能を失う事は無い。

 これはアルが、刻印魔法を用いて作り出す転移門と大きく異なる点であり、再現するに至っていない。


 移動機能は、これも単純で、天浮島を指定した場所に移動する事が出来るものである。

 但し、移動を操作出来る訳では無い為、移動途中で止めたり、異動先を変更する事は出来ない為、使い勝手は良くない。


 譲渡機能は、おそらく他者に権利を譲渡出来るものであろうと推測されている。

 と言うのも、所有権を持つのは虹銀貨所有者のみであり、また、他者に譲渡しようという者も居なかった事から、これまでこの機能が使われた事が無い為である。


「ギルドで探索者を放ってくれても良いし、王国からの情報待ちでも良いけど、手遅れになる可能性があるからな。

 だったら天浮島で探索して、見つけたら近くに転移門を仮設して、強襲すれば済む話しだろ?」

「聞く迄も無い話しかも知れませんけど、探索した情報を、王国に渡して後を任せるという方法は」

「無いな」

「ギルドを通して、指名依頼という形ででもですか」

「ギルドの依頼に、天浮島の機能は基本的に使わないのは分かっているだろ。

 それ以前に、王国の動き待ちなんかしてたら手遅れになる可能性もある」

「本心は?」

「オレの身内に手を出しておいて、素直に反省するならともかく、つまんねえ小細工してる王国に見せしめ?」

「何故疑問系?! いえ、そうでは無くて」


 実際に手を出したのは、アルの身内になる前の話しではあったけれど、その後の対応は身内となってからであったのは事実だ。

 しかしこの辺りの思考が、理屈ではない事をマディナは良く知っていた。

 アル=ローウェンという人物の根本は、過去からの経緯によって、力によって強制的に事を運ぼうとする相手に容赦が無いという事を。

 普段は自身が持つ力を振りかざす事、そしてその力による恩恵を極力嫌う反面、そうした力押し行為が自身や、その身近なところで振るわれた場合は、自身の力を振るう事を躊躇わないのだ。

 そして、何より質が悪いのは、それが出来てしまう事だろう。

 もっとも、これはアルに限らず、虹銀ランク探索者の多くに見られる傾向でもあるのだけれど、特にアルはその点について極端であると知られていた。


「まあ、王国だろうがギルドだろうが、動きたければ動けば良いさ。

 オレはオレで動くってだけの話しだから」


 この件について、実際に独自で動いたところで、誰も文句は言えないのだ。

 何しろ、隣国を刺激する可能性さえあり、そうで無くてももし、この推測が当たっていれば、辺境伯領が騒ぎとなり結果として国内の、特に東方は暫く荒れる事になる。

 そうなれば自分達の生活にも関わってくるのだから、対応出来るだけの手段が有る以上は、それが国の問題だからと様子見に走るのも、対応に走るのも、それこそそれぞれの判断次第という事になるのだから。


「反論の余地も無いですね。

 一般的であれば『個人が動いて引っかき回すな』と言う事も出来ますけど、対処出来る訳ですしね」

「それ以前の話しだな。

 直接的であれ、間接的であれ、オレは自分と、その周囲に手を出す馬鹿を許さない。

 知ってるだろ?」

「本当に、難儀な人ですね。

 一応、代官に報告は上げますよ。

 無いとは思いますけど、つまらない逆恨みをギルドに向けられたくは無いですからね」


 国に縛られない立場であるギルドに対し、王国として目に見えて反発する事はおそらく無いだろう。

 しかし、貴族等一部が暴走する可能性は、誰も否定出来ないのだから、クレリアナのギルド支部を預かる身としては、マディナの判断は間違ったものでは無い。


「貴族の面子だか知らないが、難儀なのはやらかしてる馬鹿共だろうに」


 そう一言残し、アルはギルド長室を出て行く。

 そんな後ろ姿が、閉じるドアに隠れて見えなくなると、マディナは一息吐いて気持ちを切り替える。

 ここからは時間との勝負になるのだから。

 少なくとも、ギルドで動く時間は無いだろうから、王国から依頼が出る可能性は低い。

 そうなると、この情報、特にアルが動くという情報は、王国に対してそれなりの貸しとなるだろう。

 アルからの反発を受けない形での立ち回りを検討しつつ、マディナは代官に報告する為に、外出の準備を始めるのであった。

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