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07 家守りの結果

 ライザやイルナと、エーファがやり取りをしている間、アルは一人口を挟まずにお茶を飲んでいた。

 下手に口を挟むより、互いにやり取りをして納得した方が早いという判断だったのだけれど、アル自身も疑問を持ってしまい、それを頭の中で一度整理していた為でもあった。


「なあエーファ、ちょっと聞きたい事があるんだけど」


 話しが一段落した事を見計らい、アルは質問する事にした。


「とりあえず、姿を現したって事は、ライザとイルナは住人として問題無いって事で良いんだよな?」

「最初から問題などありませんでしたが?」


 そう、最初アルは、ギルドで言った様に、エーファが人見知りだかそういうので、直ぐに姿を現さないのだと思っていたのだ。

 そう思うに至った理由は、自分がこの家に住み始めてから暫くの間、同じ様にエーファが姿を現さなかった事、その後の生活の中で来客者への対応等を行わずに、姿を隠してしまっていた事が理由だった。

 では、何故今日、此処でエルザとイルナの前に姿を現したのか。

 エーファ的に、一定期間を経ての判断であった可能性はあるし、ギルドで聞いた二十四人の撃退に端を発している可能性もあった。

 しかし、一定期間を経ての判断であれば、もう少し説明的な話しがあっても良かったと思うのだが、帰宅時の言葉は単に出迎えのものであった。

 撃退に端を発してであれば、そもそもの人見知り的な要素に疑問が生じる。

 そこで、振ってみたのであったが。


「そもそも、認めない方であれば、様子を見る以前に追い出すのがシルキーとしての性質ですので」

「いや、それならこれまで、何で姿を現さなかったんだ?」

「マスターと奥様方にとっては新婚生活ですので、お邪魔にならない様にと」


 その言葉を聞いて、憮然とした表情となるアル。ライザとイルナは顔を赤くして俯いていた。


「妖精が何を気遣ってるんだ」

「家を守るというのは、そこでの生活を守る事ですので」


 間違ってはいない。間違ってはいないが、それを聞かされても反応に困るアル達であった。


「マスターと奥様方の仲もよろしい様ですので、今後はしっかりと務めさせて頂きます。

 ちなみに、お客様への対応も、お任せ頂いて大丈夫ですので」

「ちょっと待て、これまでも無粋な客には対応していたみたいだけど、何故態々ここでそんな事を?」

「無粋なお客様にはそれなりの対応を致しますが、正当なお客様にも対応致しますので」

「は? いや、これまで来客時には何もしないどころか、姿を消してたよな」

「当然です。わたくしの様な存在がお客様に対応してしまい、何かの間違いでマスターの女性関係に障害となってはいけませんので。

 けれどマスターも奥様方を迎え入れられましたので、今後は無用かと」

「・・・そういう気遣いも、どうなんだよ」

「家の事、ですので」


 シルキーにとって家の事とは、そこに住む者も含まれる様だ。


「じゃあ何で、俺が暮らし始めてから暫く、姿を現さなかったんだ?」

「趣味です」

「は?」

「人間観察は、趣味ですので」

「・・・おい、それって、ライザとイルナの前に姿を現さなかったのも、そういう事だったんじゃないのか?」

「さて、何の事でしょうか?」


 顔ごと視線を逸らして、明らかに惚けていますと表すエーファ。本当に妖精か? と思わせる程に、人間くさい仕草であった。

 そもそもシルキーに限らず妖精は、いたずら好きという特徴がある。このやり取りや仕草も、どこまでがいたずら要素を含めたものなのか、どこまでが真実なのか分かったものでは無いので、溜息一つ吐いて、アルは流す事にしたのであった。

 なお、この日を境にアルの家での生活は一変する事となる。

 大きなところで言えば、有能過ぎる侍女よろしくお茶に食事に、家の清掃、洗濯等々、家事の一切が、気が付けば済んでいるという状態となったし、不在時は当然として夜間も含めた敷地内の守りも、下手な防護系魔道具を設置する必要も無く、設置した以上の効果が発揮されていた。

 倉庫からの持ち出しや倉庫への収納も、自分達で行わなくても頼めば行ってくれる為、急ぐ場合や、目的に合った物を探す手間が必要無くなり、非常に利便性が上がったのだ。

 こうした状況は、元伯爵家令嬢であったライザにとっては、それなりに慣れたものではあったが、アルやイルナにとっては、慣れるまでに時間を要する事となったのは蛇足である。


「で、その無粋な客について、何か分かってる事とかはあるか?」

「特には無いですね。無言で、身振り手振りで意思疎通が図られていましたので。

 ただ、全員この様な物を持っていました」


 そう言ってテーブルの上に置いたのは、小剣と言うには刃が短く、ナイフと言うには刃が長い、鞘に入った刃物であった。

 あえて言えば山刀マチェーテに近いのだが、刃は両刃で小刀の様な作りとなっている。

 鞘から抜いた刃は濡れた様に光り・・・いや、実際に薄く濡れていた。これは鞘に仕掛けが施されており、鞘から抜くと刃に薄く塗られる様になっている為であった。


「毒、か」

「おそらくは。二十四人全員が各自、これを一つずつ装備しており、他に武器を装備していなかった為、全て回収しておきました。

 また、自決用と思われる毒物を仕込んでいたので、それも回収してあります」

「こんな物騒な武器を持たせたまま、或いは毒物を仕込ませたまま放置は出来ないから、回収したのはまあ良いとして、それらはどうするかね。

 正直、扱いに困るな」


 話しの通りであれば、国軍の暗部が使っている代物だけに、下手にどこかに流出するのも危険な代物だ。

 とは言っても、持っていても使い道がある訳でもでも無いのだから、扱いに困るのは当然であろう。


「ねえあるさん、その毒、わたしに解析させてくれないかな」

「ん? イルナ、どういう事だ?」

「ええと、狙いは分からないけど多分、わたし達の誰か、あるいは全員を狙って来たんだよね。

 だったら、万一の事を考えて対策を立てておいた方が良いと思うんだ」

「んー、それこそ王国が本気で、国を挙げてオレと敵対するつもりじゃ無ければ、解毒方法は聞き出せるとは思うけど・・・それこそ最悪想定をしておいた方が良いか。

 まあ、任せる」

「うん。とは言っても、薬師としての好奇心もあるんだけどね」


 悪戯心を秘めた笑顔で語るイルナ。

 流石に探索者として、命のやり取りが身近な生活をして来ただけあり、なかなかに神経は太い様であった。

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