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04 虹銀ランクの来訪

 王太子が頭を抱えていようと、アル達にはどうでも良い事だったし、そもそもそんな事は知らなかった。

 ただ、軍務局長の動きだけは気になる為、ギルドに対してその旨を伝えていたし、ギルドとしても、明らかな失点があるのだから、特に要望が無くてもやらなければいけない事である。

 結果としてアル達は、通常生活に戻り、事態の推移確認はギルドに任せたのであった。

 ペラガルロ子爵のところへと向かう為の準備としての出費もあったけれど、そもそもギルドからの指名依頼扱いで向かう形であった為に、ギルドからの依頼破棄という事で報酬の八割が支払われ、むしろ収入を得ているので不満は無いし、準備した物があるから、そのまま迷宮探索に使う事も出来た。

 アルはその分楽をしたがったが、休んでばかりでは体が鈍ると、ライザとイルナに半ば引き摺られる様に、迷宮探索へと連れて行かれたりしていた。

 また、イルナが本格的にとまでは言えないが、製薬や調薬を始めたので、アルは付与魔法の研究を進めたり、それらをライザが眺めていたりと、比較的平和な日々を過ごしていた。


 そうは言っても、アル達の周辺では幾つかの動きが起こっていた。

 一つ目はライザの絡みである。

 ライザの父親が所領としていたカールフェルト領は、元々は肥沃な土地が広がる、王国内で一、二を争う穀倉地帯ではあったが、国境に面している訳では無いので辺境伯の様に軍事的な力を有する訳でも無く、王都周辺領の様に大商人が本拠として税収面で強い訳でも無く、所詮は田舎貴族でしか無かった。

 それがクレリアナ迷宮の発生により、急に活気づいたのである。

 クレリアナ自体は王家直轄地として所領より離れたものの、それでも見返りとして入って来る収入、商人の流れによって落ちる収入は大きく、更には街道が整備された事で作物の流通も大きくなり、一気に活性化したという背景を持っている。

 そんな領地での領主不在状況である為、王都ではそれなりの陣取り合戦といった様を示し始め、所領を持たない男爵位が、所属派閥上位の子爵位に働きかけ、その子爵位が親貴族である伯爵位に働きかけ・・・といった貴族間での牽制が繰り返されていた。

 当然ながら、バード伯爵家を親貴族としていた子爵位達も動いていた。

 バード伯爵の子貴族筆頭位置に居たペラガルロ子爵が空位となったのだから、ここで一気に上り上がろうとする事は当然の流れであろう。

 加えて、これまではライザがペラガルロ子爵預かりとなっていた為、バード伯爵家自体は形の上では、これまで通り存続していたものの、他貴族にライザが嫁ぐ、或いは他貴族からライザへと婿入りすれば、自分達の子爵位自体が傍流扱いとなり、所領を取り上げられる可能性さえあるのだから必死である。

 不動、或いは不変と称された現王の治世下であれば、子爵位の誰かがバード伯爵家に就く流れであったのだが、近年王太子によって改革が進む中では、最悪の場合、流石に突然爵位を失う事は無いとしても、所領の無い貴族位ともなれば一代限りの男爵位に降爵される可能性は考えられるのだから余計に、であろう。

 ペラガルロ子爵が騎士団に捕縛されると、王都では各派閥間での牽制が、更に発展して行った。

 バード伯爵家の子貴族からは、直接的なライザへの対応が始まり、多くの場合は使者が持って来た手紙によって面会を求められ、中にはクレリアナに当主自身がやって来た上で使者が立てられる事もあった。

 最初の内は数件、求めに応じてはみたものの、結局はライザの、親貴族後嗣としての責任を問い、アルと別れて自分の子との婚姻をという求めばかりであった為、早々に迷宮、或いは家に籠もって作業に徹し、使者が来ても不在という状況を作り出したのである。

 無論これは搦め手である。貴族ともなればアルの正体は認知している為、ライザに対して親貴族としての責任という流れでしか、話しを持って行けなかったという事情に依る。

 その結果、家の前に使者が張り付くといった行為に至った事で、これは流石にクレリアナの治安上問題となるという代官の判断で、使者に対して代官権限での警告が行われて表面上は沈静化した。

 王家直轄地であった為、代官権限を下級貴族が無視出来なかった為ではあったが、その分、今度は各子貴族が、王城への申し立てを行う結果を生み、王都での貴族派閥間での動きと相まって、宰相や王太子に大きな負担となった事は言うまでも無いだろう。


 そんな中、クレリアナでは天浮島での薬草採集依頼が、幾つかの探索者パーティーに指名依頼として出され、また、採集されるであろう薬草目当てに商人が集まり始めた事で、それ目当ての屋台も出始め、行商人達がおこぼれに預かろうと集い、お祭り騒ぎの様相を日々濃くして行った。

 貴族の直接的な行為こそ無くなったとは言え、目は向けられているであろう事は確実だし、常に迷宮や家に籠もっている訳にも行かない為、アルが取った手段は天浮島を中継して、ギルドの管理する転移門から外に出るというものだった。

 当然普段の姿では出歩けない為、アルは普段の姿では無く、虹銀ランク探索者としての装備で身を固めた。

 特殊な黒い装備は、光の反射によって微妙に虹色に光るという特徴を除けば、薄手のシャツにズボン、その上から裾の長いコートといったものであった。しかし実際の防御性能は、下手なフルプレートメイルさえ足元に及ばない。

 基本的に虹銀ランクだからと言っても、個々によってその装備は異なる為、アルのこの装備は、アル=ローウェンの専用装備として知られている。

 理由は単純で、その生地自体がアルの家でしか今のところ用意出来ず、見た目だけでも真似をする事さえ出来ないのだ。

 それ以外の虹銀ランク探索者も、迷宮品の特殊な装備であったり、特殊な遺失技術品であったりと、そのランクに見合った何らかの特徴を持っていた為、その装備を着けている者は虹銀ランクである、つまりは“不用意に関わると危険”であると知られている訳だ。

 勿論アル達は、その状態で顔を見せて出歩く訳にはいかない為に、同じ生地で作られた揃いの、足首辺りまでを覆う裾の長いローブを纏い、またローブのフードを深くかぶって顔を隠していた。

 揃いとは言え、アルのローブだけは赤味を帯びた銀色の縁取りが施されていた為、三人のその姿を目にした者には、薬草採集の開始に先駆けて、虹銀ランク探索者アル=ローウェンと、その従者二人がクレリアナにやって来たと認識された。

 その結果、こっそりとライザに目を向けていた貴族は、虹銀ランクが居る近くで騒動を起こす事に危機感を覚え、密かに放っていた者達を引かせる事にも繋がっていた。

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