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05 シルキー

「この格好、やっぱり目を引くよね」

「イルナごめんね、私の所為で」

「あ、違うから。そういう意味じゃなくて」


 揃いの長いローブに、深く被ったフードという出で立ちで歩けば、その姿の意味を知る者は道を空け、知らない者はその状況を見て合わせ、知っている者から話しを聞く事になる。

 結果として、数日の内にクレリアナでは、三人が歩けば周囲に空間が出来、また視線を向けられる結果となった。


「あのな二人共、そう言われると俺の趣味が悪いと聞こえるんだけど」


 ライザとイルナにとっては初めて着た訳だが、元々普段はアルマンとして表向きは動いているアルにとっては、虹銀ランクとして動く場合の標準装備なのだ。


「いや、アルは顔を出して表に出られないんだから、これは仕方が無いだろう」

「“これ”とか言うな」


 こんなやり取りも、本気で交わされていたのは最初だけで、今では半ば馴れ合いの内である。

 確かに、アルはローブの前を開いてはいたが、ライザとイルナは性別さえも特定させない為に、その長いローブで身を包んでいた。

 黒いローブで身を隠し、フードで顔を隠した三人が並んで歩いていれば、やはり異様である事は避けられないし、それだけでも注目を浴びる事になる。

 しかし、アルはこの装備で人目を引く事に慣れていたし、ライザやイルナは元々の容姿によって、人の目を引く事にやはり慣れていたのだから、開き直るのは早かった。

 それでも、開き直りではあったのだが。

 ちなみに、この日三人が揃って歩いていたのは、前日夕方にギルドに立ち寄った時に受けた指名依頼を行う為だった。

 何でも、クレリアナの周辺に怪しい人影が複数確認されているとの事で、その調査である。


「怪しい人影って、ライザ狙いの貴族の密偵とかだったりして」

「流石に町から撤退しておいて、町の外から探るなんてしないと思うけど・・・」

「まあ、それは無いだろうな。

 町の中だと目に付くからって、外から探っても意味が無いだろう」

「んー、そっか」


 指名依頼という、ギルドが出す依頼としては重要度の高い内容に対して緩い反応に、ギルド関係者がもしこれを聞いていたら頭痛を感じていた事であろう。

 蛇足ではあるが、そもそも探索者は騎士や兵士崩れ、家を継ぐ権利を持たない貴族の三男以下、食いっぱぐれた一般民等が集まる傾向が高く、依頼失敗に対する罰金こそあるものの、失敗という結果はそれなりに生じる。

 そんな相手に期待し、重要度の高い依頼は出せない為、極力成功させなければならない依頼内容は、信頼度の高い探索者に指名依頼として提示されるのだ。


 一通り、クレリアナの外周に沿って調査を行い、幾つかの痕跡と仕掛けを確認した三人は、その日の夕方、ギルドへと戻って来た。

 指名依頼の報告となる為、カウンターではギルド長への面会を希望すると、話しが通っていた様で、直ぐにギルド長室へと通される事になった。


「街壁九ヵ所に仕掛け、十六ヵ所に何らかの痕跡ですか」

「仕掛けと言うか、魔法陣だな。

 痕跡の方も魔法陣だが、途中で衛士に見つかりそうにでもなったのか、完成はしていなかった。

 問題なのは、その魔法陣なんだが・・・これだ」


 羊皮紙に書き写した魔法陣を示す。


「この陣の方式は、バゼーヌ王国の国軍が用いているものですね。

 そう見せかけた他国、という可能性も無いとは言えませんけど」


 儀式魔法に使われる魔法陣は、当然ながら基本的な構成は同じだ。

 しかし、使い勝手等で各国、あるいは組織によって若干手が加えられていて、細かい部分で差異が見られる。

 そもそも、目的の魔法が発動する事のみで構成された基本の陣を、そのまま使おうという者はほぼ皆無の為、これは当然の事と言えるだろう。


「無いとは言えないが、使い慣れていない陣を仕掛けると、効果的運用が難しくなるからな。おそらく仕掛けたのは国軍関係、と考えるのが無難だろう」

「自国の、しかも王族直轄地の此処に、国軍が陣を仕掛ける意味が分かりませんね。

 ただ、関係するかは分からないんですけれど、先程少し騒ぎがありましてね」

「騒ぎ?」


 いくら関連性があるかも知れない内容であるとしても、そもそもが依頼に対する内容であり、それをギルドが示して来るのはおかしい。つまり、何か嫌な予感がするのだが、聞かないという選択肢は、多分選べないのだろう。


「アルさんの家の前で、二十四人の衰弱し、傷だらけとなった者達が発見されまして」

「「はい?」」


 何が起きたのか分からないという反応のライザとイルナに対して、アルだけは思い当たる事があった為、冷静な状態だった。


「その反応だと、アルさんには心当たりがありますね?」

「まあ、あると言えばあるんだけど、ライザとイルナに紹介してからにしたかったな」

「紹介?」

「家には家付妖精シルキーが棲んでるんだよ」

「そうなの? 全然気が付かなかったけど」


 シルキーという妖精は、所謂エルフの様に亜人というわけではなく、幽霊や亡霊等と同じ精神生命体であると言われているが、詳細は分かっていない。

 そもそも、時に実体を持たず、時に実体化し、意思の疎通も可能で、自己意識を持つ精神生命体という存在自体、分かっていない事の方が多いのだから。

 分かっている事と言えば、その本質は家に付き、家事などの手伝いをする事と、付いた家を守るという二つに集約されるという事程度である。

 一説では、何らかの条件が揃った家に生じるとも言われるが、住人とは言葉を介してコミュニケーションが行えるにも関わらず、シルキーという存在自体に関して聞き出せたという記録は存在しないのだから。


「家のシルキーは、かなり人見知りが激しくてね」


 シルキーは、怒らせたり、相性が合わない場合、嫌がらせをしたり怖がらせたりして、その家から住人を追い出すと言われる。

 その一環であるのか、住人の見極め期間と思われるものがあるのだが、多くの場合は長くても二~三日とされるが、アルの家のシルキーは最低でも一週間はその姿を現さない事から、アルもその期間が終わったら紹介しようと思っていたと言う。


「そうですか。ですと、その二十四人の者達は、アルさんの家に不当に進入しようとした結果、シルキーにやられたと考えるべきなのでしょうか?」

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