30 共有資産
「な・・・なこ、これ?」
宝石や貴石は迷宮で原石を見つけて加工、金や銀の塊は同じく迷宮で鉱石を見つけて精錬した物を売らなければ、未だ理解出来なくもない量ではある。それでも多いとは思うけれど、運の良い探索者が大量に見つける事も有る為、絶対に無いとは言えない程度と言えるであろう。
問題は硬貨だった。
青銅貨から銀貨までは未だ良い。金貨がおそらく数百枚、白金貨も数枚有るのだ。
「白金貨なんて、初めて見た」
「ああそれ、普通の店だと使えないから、不便なんだよな」
何しろ白金貨一枚は金貨百枚に相当するのだから、その場で釣りの用意が出来るのは、相当な規模の商店か、商会そのものくらいなものであろう。
「そういう問題かな? じゃなくてっ!
何でこんなにお金持ってるの?
虹銀ランクって、こんなに稼げるの?」
ギルドランクで言えば、確かに銀ランクでは銀貨報酬程度の依頼が、金ランクでは金貨報酬程度の依頼がこなせる実力を持つと言われている。が、そもそも金貨報酬の依頼ともなると、年に数回有るかどうかでしか無い。
当然白金ランクだからと言って、白金貨報酬の依頼ともなれば有り得ないのだから、最高位ランクだからと言って、これだけを稼ぐ事は難しいであろう。
実際、この会話を行っている間に、アルはロッカー経由で受け取った報酬をこれらの硬貨の中に入れたのだが、二つの依頼報酬と言われるその総額でも、金貨一枚を越えるかどうかというところだ。
報酬が比較的多い指名依頼の報酬でそれであるのだから、溜め込む事を好む性格であったとしても、難しい事は明らかだ。
「んー、半分正解ってところかな」
「半分正解?」
「まあ、依頼でこれだけを稼ぐのは、まあ無理だろうね。
何しろオレも、二人とそう変わらない探索者歴二年程度だからなあ」
「えっと、ライザと同じで、元貴族とか?」
「いや、親からと言うか、家として引き継いだ金は青銅貨一枚無い。
ただまあ、虹銀ランクであれば、同意さえすればギルドとの依頼契約で稼げる、かも知れない」
「ええと、どういう事?」
「丁度もう直ぐだろ、天浮島での薬草回収」
天浮島。それは文字通り、空に浮く島である。
大きさは小島程度である為、この世界の欠片であり、軽い為により上空に浮いているのだとも言われているが、正確なところは一切分かっていない。
その多くの島へは、行く方法さえ未だ無いのだが、ほんの幾つかの島に行く為の転送門だけは確認されている状態となっている。
島によって、地上では絶滅したり稀少と言われる薬草が未だに残っている島や、独自の魔物が生息する島、稀少鉱石が有る島、迷宮を持つ島等々、特徴は様々となっている。
薬草回収とは、その中で地上では絶滅したり稀少と言われる薬草が残っている島で、年に一回だけ、ギルドより特定のパーティーに指名依頼が出て採集が行われるそれを指す。
「虹銀貨ってのは、天浮島二つの所有権を示す物らしくてな。
オレが所有権を持っている島は、薬草採集が出来る島と、迷宮を持つ島だ。そこを年一回、ギルドに開放して、その時の利益の三割が、対価としてオレに支払われる事になってるんだよ」
「え? えええっ! あの島の所有者って、アルさんんだったの?」
「まあ、そういう事だな。
薬草にしても、迷宮にしても、天浮島独自か、稀少とされるものが採れるからな。当然それなりの利益は出るらしい。
オレにしても薬草を間引いたり、迷宮放置で魔物大発生を引き起こすのは厄介だから、年に一回、転移門を開放しているって訳だ。
自分で管理するのは面倒だからな」
そもそも、薬草島と迷宮島と呼ばれる天浮島に行ける転移門が、此処クレリアナに有る時点で、此処のギルドに何かあるのではないかという噂が囁かれてはいたのだ。
他に開放される事がある、独自魔物の島と鉱石の島は、普段は人が外から訪れる事もほぼ無い、小さな村の近くに転移門があり、開放期ともなると探索者が集まる為にお祭り状態となるらしい。
「あれ、でも現在の虹銀ランクって三人居なかったっけ?
開放される事がある島って四つ、だよね」
「もう一人の島は開放された事が無いからなあ。そいつは完全に、自分が所有する天浮島に隠居してるから、ギルドも交渉さえ出来ないって嘆いていたよ」
「そうなんだ。
でもそっか。その利益を考えたら、年に一回とは言っても相当利益が出るもんね」
実際には、利益をギルドと等分で五割という話しもあったのだが、転移門解放時の管理をギルドが責任を持って行うという事で、アルからの申し出で三割となっている。
薬草島での採集は、ギルドが信頼出来る特定の、限られたパーティーのみが、指名依頼として引き受けていて、環境が荒れる事を防いでいる。
迷宮島に関しては一年に一回、一ヶ月間の開放が行われ、普段採れない魔物素材を狙って数多くの探索者が迷宮に挑むが、開放が始まって未だ二年の為、その全容は未だに見えていない状態だ。
「でもそっか。それならもしかして、カズさんの許可があったら、その天浮島に行けるのかな?」
「ん? イルナは興味あるのか」
「私だって興味ありますよ」
「ライザもか。まあ、行くだけなら何時でも連れて行けるけど、それこそ薬草と迷宮以外は、特に特徴も何も無いぞ」
「それでも、普段行けない所なので、興味はありますよ」
「あー、私は薬草が・・・」
「イルナは薬草が欲しいのか。
そっちなら特に魔物も居ないし、一人で採る程度なら幾らでも問題無いぞ」
「そうなの? じゃあ、今度時間がある時にでも連れて行ってよ」
「ん? ああそうか、未だ言って無かった。
この地下って、その薬草島の地下だぞ」
「「え?」」
「家の地下になんか造る訳無いだろ。
何かあって他の町に移るとかの事情が出来たら、引っ越しが面倒だし」
「そういう理由?」
「それ以外に、何かあるのか?
まあ、そういう事で、上にあった階段を上れば、薬草は何時でも採れる」
「あの階段って、ダミーとかじゃ無かったんだ・・・」
半ば呆れ気味に、ビックリ宝箱の様な部屋を出た後は、想像以上に充実していた調合室や作業室を見、それでも足りない品物を確認して行ったのであるが、それも終わり、さて家に戻ろうという所で、アルが爆弾を落とした。
「そうそう、あの部屋にまとめてあるお金とかは、共有資産って事で、必要な時に使って良いからね」
「「ええっ!」」
一応ここで、第一章本編は終了となります。
この後、Extra3と、第一章の登場人物紹介、設定資料を連日投稿し、第一章終了となります。
第二章は、未だ書き貯めが終わっていないので、書き貯めが終わり次第投稿開始となる予定です。
・・・あと十話程なので、一月以内に投稿開始が出来る・・・ハズ(、、;




