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22 決着

 マディナの声を受け、一瞬にして体勢を低くし、パラシュを隙無く構えるライザ。

 体のバランスは若干前気味に保ち、体重移動でどの方向にも動ける様、意識を定める。

 対するアルは、足を軽く開き、両腕はだらりと垂らしたままだった。普通に考えれば構えている様には見えなかっただろう。

 しかし、ライザは攻めあぐねていた。


「流石斥候職、と言ったところか。

 自然体で力み無し、どの様な急変にも対処可能な体勢、と」

「お喋りしてて良いのか?

 斥候職に情報を与えるのは感心しないな」

「確かに!」


 言うと共に、矢の様に飛び出すライザ。進む方向はアルへと真っ直ぐに、手にしたパラシュは体に添える様に引き気味に、しかしその切っ先をしっかりとアルに向けていた。

 かなりの速度で迫る為、後ろへと流れる銀髪は、まるでライザの後を追う銀光の様にも見え、その姿は銀の風妖精という二つ名を体現するものであった。

 周囲に集う、それなりに場数を踏んで来た探索者達から見ても、その速度は速く、流れる様な動きでライの目前に迫る。既にそこはパラシュの攻撃範囲内であった。

 踏み込みと共に、パラシュの切っ先が突き出されると誰もが思ったその瞬間、ライザは自ら左へと若干進行方向をずらすと共に、腕を振るかの様に、手にしていたパラシュを横振りの斬撃で放つ。が、読まれていた様で、合わせる様にアルは左手に逆手で持った小剣を合わせる。

 しかしライザは、受け流される前に躊躇無くパラシュから手を離すと、腰のシャブラを引き抜く。

 刀身が見えないシャブラを勢いのまま振り切り、手放したパラシュは左手に掴むが、次の瞬間、アルが右手に持った小剣が、シャブラの見えない刃に合わせられ、その斬撃を止める。

 腕に伝わるその衝撃を感じた瞬間、力押しせずライザは後ろへと飛んで間合いを取り、左右の剣を持ち替えた。この間、開始の合図から十秒もかかっていなかった。


 一旦仕切り直しという状態となり、アルが元の体勢へと戻し始めたその瞬間を狙い、ライザは再び前へと飛び出し、今度は両手二つの剣で突きを放つ。

 元々長さが異なり、加えて片方は刀身が見えず、しかもライザが意図して狙いをずらして放った突きを、しかしアルは避けるでも無く、上手く合わせて切っ先を流す。

 体勢を崩したライザに対して、その勢いのまま小剣を繰り出そうとするアルに対して、しかしライザは流された刀身を無理矢理、横振りの斬撃へと変えた。

 剣線が、クロスするかの様に振るわれ、左右から襲うが、アルは後ろへと下がり、その斬撃をかわす。

 その分、前に空間が出来た事で、崩れかけた体勢を前に出す事でライザは態勢を整えると、その勢いのまま、連続の突きを放ってアルを追い詰める。


 ライザは突きの間に、小さく切っ先を振る様な斬撃を加え、アルを追い詰めていく。

 一撃毎の強さはそれ程でも無いが、その分速度を載せた突きと斬撃が、左右から不確定にアルを襲い、身に付けた軽鎧に傷を付けて行く。

 数歩後ろへと下がるアルと、その分前に進むライザの姿は、端で見ている者からは、このまま手数とスピードでライザが押し切るかの様に見えたが、ライザの呼吸の間を取るかの様に、アルは不意に右へと体の位置をずらし、前へ出る。

 丁度その時、ライザは左手のシャブラを突き出すところであり、その切っ先はアルの左肩を鋭く突き刺した。

 その事に気を取られ、ほんの一瞬ライザの動きが止まったのと同時に、アルは刺された場所を軸にするかの様に体を回し、更に前へと出した。

 そして、ライザが気が付いた時には、アルが右手で持っていた小剣が、ライザの首元へと添えられていたのだった。


「勝負あり! 勝者、アルマン」


 マディナの声が練習場に響くが、ライザは正直、それどころでは無かった。

 シャブラが突き刺さった後後も、アルが前へと出て来た事で、その刃は完全に肩を貫通していたのだ。


「やだ、え、どうしよう。

 ちょっとアルっ、い、痛いよね。そうだ、イルナ。早くこっちに来て、アルの治療を」


 半ばパニック気味であり、言葉遣いも、周囲に多数が居るというのに、完全に地が出た状態となっていた。


「はいはい、落ち着いて下さい」


 マディナが横から言葉をかけ、アルからライザを引き離すと、やって来たイルナの方へと押しやる。


「治療よりも、まずはこの剣を引き抜かないといけませんね。

 それにしても、これってイシルディン製ですよね・・・まあ、出所は何となく分かりますが」


 ちらりとマディナが目を向けると、合わせない様に目を逸らすアル。答えている様なものである。

 その後、マディナがアルから剣を抜き、そこに準備をしていたイルナが、治癒魔法と薬で治療を行った。

 イルナの治癒魔法は簡単なものなので、完全に治すには至らないのだ。

 しかしこの状況で、アルはただただ、早くこの場を離れたいとしか思っていなかった。

 理由は単純で、人目が無ければ、この程度の負傷は自分で治癒魔法をかけて治せるのだから。

 アルマンとして此処に居る為にそれも出来ず、かと言って、混乱しているライザを放置してこの場を離れられ雰囲気でも無い。

 『そもそも、何でオレは此処に居るんだろうか?』と、左肩の痛みを堪えながら思っていた事は、この場では本人しか知らない。



 決闘終了から暫くして、三人の姿はギルド長室にあった。

 先日の迷宮での件で、話しがあった為である。

 寸前まで若干混乱を残し、また、多くの探索者の前で見せてしまった自分の態度に落ち込んでいたライザも、その事を知ると直ぐに気分を切り替えたのは、流石と言えるであろう。


「まず、先日確保した者達には、真偽検証官立ち会いの下で、取り調べは終了した事をお伝えします。

 また、確保した魔晶の検証を行い、異常種を生み出す事を確認しました。

 これによって、迷宮での異常種騒動は人為的であった事が確定しました」

「そうですか。それで、捕まった者達の処遇はどうなるのでしょうか」

「まだ確定はしていませんが、軽く見ても犯罪奴隷として、どこかの鉱山で十年以上は確実でしょうね」


 犯罪奴隷として鉱山に送られる場合、危険性が高く、その大多数は、生きて戻る事はほぼ無い、極めて死罪に近い扱いとなる。

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