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20 新装備決定

 ライザとイルナは、自分達が思っていた以上に時間をかけて装備を選び、戻って来た。

 時間がかかった理由は単純で、防具の置かれた部屋には、一見して単なる服と思われる物も置いてあったのだ。

 添えてあったメモには、耐火属性と言った属性対策、衝撃緩和等といった、本来であれば高価な付与防具に付けられている様な効果があった。

 勿論これらは、元々の素材もあって、実際に防御力を上げる防具程の効果は得られないものの、それでも駆け出し探索者が使う初期装備クラスと比べると、防御効果が高いのだから軽視出来るものでは無い。

 女の服選びは時間がかかるという基本に違わず、二人が時間をかけてしまった事は仕方が無かったであろう。

 それでもアルの予想よりは、十分に早かった様ではあったが。


「二人共、なかなか似合ってるね」

「そうかな。普段こういう格好しないから、ちょっと落ち着かないんだけど」


 これまでの装備はライザが、ありきたりとも言える布製の服の上に、革の軽鎧やブーツ等といった、素材こそそれなりの物ではあったけれど、多く居る探索者としては、軽装備系の標準的な物であった。

 色合いこそ淡いクリーム色系統となっており、女性らしさも見られたものの、それだけという状態だった。

 対して今回着替えた姿は、若干赤味がかってはいるものの、ほぼ黒という濃い色の上下に、その上には黒色に、銀で縁取られた軽鎧を合わせ、腕にも胸当てと同色の革手袋にも見える手甲、足下は濃い茶系のブーツを履いていて、全体的に暗い色合いでまとめられていたが、その分美しい銀髪と、肌の白さが引き立っていた。

 また、服は下がロングのスカートとなっており、色合いの割に、女らしさは元の装備よりも引き立っている。


「ライザは静謐装備でまとめたのか。

 その装備は、オレが付与したメモの昨日に加えて、元々の素材特性で動きに特性効果があるらしいし、見た目もライザの良さを引き立ててるね」

「あ・・・ありがとう。

 でも、装備の事を覚えているの?」

「そりゃ、自分で付与した物だからね。

 ちなみにそれは、闇精霊の領域で作られたものらしいよ」

「精霊領域の? それって、いやうん、言わなくて良いよ。聞いたら着ていて良いのか悩みそうだし」


 イルナのこれまでの装備は、白を基本に部分部分を緑で飾り付けられた模様が描かれたローブに、淡い茶色系の革製の胸当て、足下はライザと同じ頑丈なブーツだった。

 これは、探索者というよりは、むしろ教会の術兵に近い装備であったのだけれど、そこは所詮、店売り品をそういう組み合わせで着ていただけであった。

 対して今回着替えた装備は、色合いこそ白を地に緑の模様ではあったが、その模様自体が魔術式の文様、つまりは魔法陣となっている物である。その効果は防御結界の自動発動陣。

 色合いこそこれまでと似てはいたが、元は被る様に着るタイプであったのに対して、今回のローブは前合わせのタイプであった事から、歩く度に裾がひらめくのだ。

 勿論中には、おそらくワンピースタイプであろう服を着ているのだが、丈が膝上の為、裾がひらめく度にイルナの足が覗き、ついつい視線を引っ張られてしまう。

 エロス的な露出と言うよりは、イルナの持つ雰囲気もあるのだろうが、健康的な美しさの方が強いのだが、アルとしては一言言っておくべきと考えた。


「なあ、イルナ。ちょっと中の服、丈が短くないか?」

「あー、アルさんったらやらしいんだ。

 でも別に、アルさんには見られても嫌じゃ無い、かな」

「いや、そうじゃ無くてだな」

「ん?」

「つまりはそれで、外を歩くって事だぞ?」

「ああっ! それを考えると恥ずかしいかもだね」

「とりあえず、素足はやめようか。

 確か薄手で細身のズボンが、その服があった辺りに置いてある筈だから」

「う・・・うん。探してくる」


 そう言って部屋を出て行くイルナであったが、それまでの間、丈の短さが気になったのか、引っ張る様に押さえていたその姿が、余計にその部分へと意識を引いてしまい、アルは頭を抱えたくなった。


「なあライザ、イルナはあれで、大丈夫なのか?」

「ええと、あれでも身持ちは堅いんだよ。

 ただちょっと、気が抜けてるところがあると言うか、一つこれって考えると他への意識が薄くなると言うか」

「あともう一つ、言って良いかな?」

「何かな」

「ライザもここに来るまで、あの姿は見てたんだよな。何故止めない?」

「あー、えっと、うっかり? そうそう、気が付かなかったんだよ、うん」


 絶対、ライザもどこか抜けてるところがあるんだろうな、と思ったアルではあったが、そこは流してあげる事にした。

 ただ、全体に目が行くと、細かい部分が抜ける様なので、自分が気を付けておく必要があると、意識を改めるのであった。



 そんなこんながあったものの、その後はお茶を貰い一息付いて、アルの家を辞したライザとイルナの二人は、宿へと戻ったのであった。

 宿に戻る途中、落ち物や迷宮品を売る為にギルドに寄り、そこで一新した二人の装備を見て、その華麗さに、居合わせた探索者達の目がいつも以上に向いた事は、蛇足ではあったが、二日後に決闘を行いその結果を考えると、アルにとって大きな試練が、更に大きく重くなった事は、おそらく間違いでは無かったであろう。


「それにしても、凄かったねアルさんの家」

「家と言うか、地下の倉庫が、だったけど。昔一度だけ入った事がある、うちのお屋敷の宝物庫よりも凄かった、かも」

「伯爵様だったんだよね。

 そっか、伯爵様の宝物庫より、やっぱり凄いんだ」

「やっぱり?」

「うん。だってさ、あれだけの物が有って、売り難いのは分かったけどそれでも、売らずにいられて、生活出来てるんだよ。

 普通なら、探索者をやって危険に身を晒すくらいなら、ちょっと工夫してあの中の一つでも売ると思うし。

 実は、もの凄いお金持ちだったりして」

「指名依頼は受けているみたいだから、私達よりは稼いでいても、おかしくは無いと思うけれど。でも、あれだけの素材の物を買ってたら、幾ら有っても足りなくなりそう」

「でも、ライザとわたしが貰った装備、そもそも貰ったって言ってたよね」

「そう言えば・・・」


 もし、あれだけの物のほとんどが、自分で買った物では無かったとしたら、お金は持っている筈。

 それならば何故、探索者何かやっているんだろうと、疑問に思うも答えは出ない二人であった。

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