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19 装備選択

 イルナが一本の杖を持って近づいて来たので、アルの意識はそっちへ向いた。それはライザにとっては都合が良かった。


「私を守るから、良いんだ。そっか・・・」

「ん? 何か言ったか?」

「あ、どれが良いかなと思って」


 咄嗟に誤魔化すライザであった。

 あまり考えていると顔に出そうなので、ライザは気持ちを切り替えて武器選びを再開する事にした。


「この杖が、軽いし、取り回しも楽なんだけどさ、何か、もの凄く魔力の通りが良いんだけど」

「ああ、扱い易いのがあったなら良かった。

 選んで貰った三本は、どれも精霊樹の枝製だから性能は良い筈だぞ」

「ええっ! それって伝説級じゃないの」

「いや、流石に伝説級って程では無いな。

 一応付与も施してあるから、それなりに近い性能は秘めてるけれど、流石に世界樹の枝でも手に入れないと、伝説級の杖は作れないからな」


 いかにも残念という感じでアルは語るが、精霊樹素材も、エルフの手から離れる事がほとんど無い稀少素材である。

 何らかの伝手が無ければ、種族以外の者が持つ事自体困難だ。


「何か、価値観が崩壊しそうな感じなんだけど」

「仕方無いだろ。稀少な素材程、付与実験が出来る機会が少ないんだ。下手な鍛冶屋よりも付与術師は素材に五月蠅くなるもんだ」

「そういうものなのかー」

「そりゃそうだろ。同じ付与を施しても、素材で大きく効果が変わるんだ、どういう変化があるか試さないと、効果的な付与が見出せないだろ」


 横でその話しが聞こえていたライザは、その結果がこの、まるでどこかの宝物庫の様な状態なのかと、ある意味納得した。

 付与術自体が稀少技術で、その情報はほとんど知られていない事に加え、素材との関係で効果も変わるのであれば、それはもう、試してみるしか無いのだ。

 ところが、試せば試す程、その後の処理に困る事になり、結局は倉庫で埃を溜める事になる。

 非常に贅沢な悪循環だった。


「そう言えば、どんな付与を施してるの?」

「基本的には耐性強化と現状維持だな。

 魔法を通すと、素材劣化が早まるから強化は必須だし、壊れると自分を守る武器が無くなるんだから、壊れない様に維持も必須と考えてる。

 後は、杖だと魔力蓄積、剣だと切断向上、って感じに、それぞれの特性強化を加えてある」

「・・・何かさ、もしかしてもの凄い性能なんじゃないのかな、此処にある武器って」

「まあ、売れば易く見積もっても、どれも白金貨一枚は下らないだろうな」

「「ちょ、ちょっと待って!」」


 思わず声を合わせて叫んでしまったライザとイルナは、決して悪くない筈だ。


「何かおかしいか?」

「その、アルの価値観が色々おかしいよ」

「うんうん。正直、持ってるのも怖いんだけど」

「でもなあ、使わなければ此処で埃を被ってるだけだぞ。だったら、二人にとって役に立つ方が良いだろ」

「・・・アルマンさん、あ、アルさんって呼んだ方がいいのかな? じゃなくて、実は結構誑しな人?」

「え、何で?」

「ねえライザ、色々注意してないと危険かも知れないよ」

「うん。何か不安になって来たよ」

「何だろう。オレが悪者にされてる感が強いんだが」

「大丈夫、アルさんは私達だけを見てれば良いんだからね」

「・・・うん、分からんから次行こう。

 で、ライザはパラシュの方、良いのは有ったのか?」


 この手の話題には弱い事が暴露されたアルであった。


「さて、武器の次はこれを渡しておく」


 若干冷たい視線に晒され、居心地の悪さを感じたアルであったが、どうして良いかの判断が付かず、流す事にした事が正解であったかは、将来の立場として現れて来るのかも知れない。


「これは、指輪?」

「特殊な物でね。身に付けて魔力を流すと見た目に変化が現れるから、それなりの相手に対して困った事があった時は、その状態を見せると、二人がオレの関係者だって分かる様になっているんだ」


 この指輪は、そもそも虹銀ランクの関係者に対して何かあれば、当然虹銀ランクに敵対する事となる為、トラブルを避ける為に用意された魔道具であった。

 当然、多くの一般民には通用しないが、逆に対処に困る権力者や、ギルドの幹部やギルド長等には知らされており、相応の対応が期待出来る事となる。


「あと、その指輪はこの家と、家との行き来に使う転移門のキーにもなっているから、持っていれば家の出入りも出来るし、転移門も作動する」

「え、それって私達も出入りして良いって事なのかな?」

「ああ、こっちの部屋に各種薬やアイテムも置いてあるから、探索準備とかに使うだろ。

 一々オレが立ち会わないと準備も出来ないと不便だろうしな」


 そもそも、此処に置かれている薬品類は、そこら辺で売っている物と変わらないのだけれど、アルによって瓶等に付与が施されており、効果が上げられているのだ。

 一緒に動く以上、こうした物も自由に使える様になっていた方が良いだろうという判断であったのだけれど、二人にはこの家に出入り自由という方に感心が集まった。


「それって、この家に住んでも良いって事なのかな?」

「まあ、決闘でオレが負ければパーティーハウスとして使えば良いし、オレが勝ったらそれこそ、別々に暮らす必要も無いだろうし」

「そっか・・・よしライザ、宿を引き払って来ようよ」

「ちょ、ちょっと待ってよ。

 流石に、決闘が終わるまではダメでしょ。

 一応のケジメは必要よ」

「どうせ明後日に決闘なんだから、良いじゃない」

「あー、イルナ。オレもケジメは必要だと思うぞ」

「何よ二人共、堅いなあ」


 堅いかどうかとなると、決して堅くはないのだが、色々驚き、刺激を受け、舞い上がってしまったイルナは気が付いていなかったのだが、その日の夜、この事を思い出して、その筈かしさで一人悶絶する事になるのは、また別の話し。


「とにかくだ、後は防具だな。

 こっちの部屋にあるから、後は勝手に漁ってくれ。一応付与効果とかは、添えてあるメモに書いてあるから大丈夫だと思う」

「選んでくれるんじゃ無いの?」

「いや、流石にそこもケジメってやつで。

 流石に防具類は身に付けるしな」

「んー、ま、良いか。

 分からない事があったら、家に転移すれば良いのかな?」

「ああ。一階の、先刻の部屋にお茶の用意でもしておくよ。

 そうだ、アイテムの部屋でも適当に選んで良いから。対状態異常効果を付与したアクセサリーとかも有るし」

「・・・総額が大変な事になりそうだけど、ねえアル、本当に良いの?」

「安全は、金じゃ買えないからな」

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