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15 決意

「ああ、そうか。無間袋ね。

 そうだな、二人は今後も、探索者を続けるのか、もし良ければ教えてくれ。

 ライザは一応、探索者になった目的を達したんだろ? イルナにしても、イェランの件があったんだ、探索者を続けるにも不安があるんじゃないか?」

「それについては、二人で話し合ったよ。

 私もイルナも、探索者を辞めても、他に食べていく術が無いし、帰る場所も無いから、今後も続けていく予定なんだ。

 今日、訪ねさせてもらった中には、それに関係した事もあるんだけど・・・まあ、それは後で」


 言葉の後半で、うっすらと顔を赤くして、俯き気味になるライザの様子に、アルは小さく首を傾げるが、追求する事でも無いだろうと考えて、話を続ける事にした。

 これは、イルナの所為で脱線しまくっている状態だった為に、自分からはなるべく脱線しない様にしようと思っていた為でもあったが。


「そうか。まあ二人なら、続けていく上ではあまり無茶をしなければ、それほど危険でも無いかもな」

「それで、だな。分配についてなんだけど、迷宮品と落ち物の扱いを決めていなかったから、未処理なんだ。

 全部売って良いなら、等分するけど、もし欲しい物が有ったら、話し合わないとマズいでしょ?」

「別に二人で山分けしても良かったのに」

「そういう訳にはいかないよ」

「そうだよ。アルのおかげもあっての探索で得たんだから、ちゃんと分けないと」


 探索者間での揉め事で、一番多いのがこうした利益分配での事だ。何しろ、命と隣り合わせで得るのだから、少しでも多くの利益を得たいと考えるのは仕方が無いところであろう。

 その結果、隙あらばメンバー同士であっても、自分に都合良く持って行こうと狙う者、あるいは細かくきちんと行い、トラブルを減らそうとする者とに大きく分かれる。

 ライザ達が、迷宮品や落ち物を売らずに確認を優先したのも、トラブルを避け、きちんと対応しようという事からであった。


「よく覚えていないけど、特に印象に残った物も無かったからな。オレとしては、特に欲しいものは無いって事で」

「そうか。私達も、特に欲しい物は無かったから、今日中に全部精算してから分配しようか」

「ああ、オレはそれで良い」


 二十層程度では、旋風の翼としても、アルとしても、落ち物の素材的には魅力的な物が無かったし、迷宮品にもこれと言って当たりは出ていなかった。


「分配は、明日ギルドで渡すね。アルも来る事になるし」

「ん?」


 今のところ、ギルドからは特に呼び出しは無かった。特に指名依頼以外は、あまり真面目に取り組んでいないアルなので、多くの探索者の様に、毎日の様にギルドで依頼を確認したり、受けたりはしていないのだ。

 その為、特に明日もギルドへと行く予定は無かったのだけれど、丁度来るこの二人に、メッセンジャーとしての依頼でも出したのかと思ったのだった。

 しかし、その思いは一瞬の事で、ライザの雰囲気が変わった事を察したアルは、一応の緊張を意識した。


「えっと、あと、もう一つ用事があるんだけど・・・」


 言葉の途中で、大きく深呼吸をするライザの態度に、何か悪い話しでもあるのかと、一応の覚悟を決めるアルであった。


「アル、私達とパーティーを組まない?」

「は? 突然だな。

 そもそもオレが、何でソロなのか、ライザは知ってるだろ」


 そう口にはしたものの、ふと違和感を感じる。

 これまでのパターンなら、ここでイルナが『何? 二人で隠し事?』等といったツッコミが入っておかしく無かった。しかし、イルナも真面目な顔で、アルを見ているだけなのを確認して、疑問を感じる。

 アルがソロでやっているのは、勿論本人の性格的な部分も大きいが、虹銀ランクとして色々と、他者に明かせない事情が絡む事もある為だった。そもそも、虹銀ランクである事を隠しているのだから、身近に人を寄せない事は前提なのだから。

 では、ライザがイルナに対して、アルが虹銀ランクである事を明かしてしまったのかとも考えるが、それならイルナが、未だにアルの事を、偽名のアルマンと呼んでいるのはおかしい。

 そう考えると、ライザがそういう事情も考慮した上で、それでもパーティーに誘って来たのであろう。

 とは言え、アルとしては返す言葉は決まっていた。


「オレが依頼をあまり受けない、不真面目な探索者だって知っているだろ。そんなのを誘うなよ」


 要は、遠回しの拒否である。

 けれど、その程度で簡単に引き下がる事は無いだろうとも、アルは思っていた。が、アルの予想を越えて、ライザは強く意思を固めていた様だった。


「うん、アルはすんなりと受けてくれるとは思ってなかったよ。だからさ、私、ライザ=バードは、探索者のルールに則り、アルに決闘を申し込みます」


 そう言って、一枚の羊皮紙を差し出したのだ。


「おいおい、本気か・・・って、本気なんだな。しっかりと探索者ギルドに決闘申請済みとなれば、疑う余地も無い、か」


 決闘は、探索者ギルドで規則として存在する、探索者が行える権利だ。

 荒くれ者も多く、また、報酬等様々な理由でもトラブルの可能性が高い探索者は、同時に戦闘力も一般民よりも高い。

 その為、一応私闘の禁止というルールもあるが、それで済まない場合もある。

 その為、探索者同士のトラブル解消手段の一つとして、正当な理由が認められた場合、ギルド立ち会いの下で決闘を行えるのだ。

 正当な決闘となる原則は単純に、申し出た者は、その理由が、該当するギルドのある国の法に反しない事、下のランクへの相手には申し出る事が出来ない事、そして、負けた場合は、申し出た内容を越える益が相手に与えられる事である。


「っておい、何だこれは!

 これは、あまりにも・・・」


 ギルドが発行した決闘申請受理書を読んだアルは、自分の表情が引き攣るのを感じた。


「決闘条件は、書かれている通りです。

 アルが負けた場合は、私達とパーティーを組んで、つまり仲間になってもらいます。

 私が負けた場合は、貴方に私を差し上げます」


 今日、アルの家に来てから、俯き気味だったライザであったが、この一言の時は、真っ直ぐ顔を上げ、アルの目を真剣に見つめていたのだった。

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