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12 帰還

「ええと、これまでのご無礼、大変失礼致しましたっ」

「いや、だからさ、畏まらなくても」

「いいえ、虹銀ランクの探索者は、国であっても意見出来ない存在です。

 そんなお方に、失礼をして来たと思われますし」

「そういうとこ」

「え?」

「そういう堅い態度をされるのって、個人的に嫌なんだよね、オレの場合。だから正体を隠してるわけだ」

「はあ」

「だから、むしろそうやって畏まられる方が失礼?」

「ええっ! しかも何で疑問系?」

「うん、そういう方が気楽だからさ」


 そもそも、ギルドランクというのは、そのランク以上を稼げる、あるいはそのランクの報酬依頼を達成出来る、という意味も持つらしい。

 つまりは、銀Ⅲのライザは一回の探索で銀貨以上、あるいは銀貨が報酬となる難易度の依頼が達成可能な力を持つ、という指標になる訳だ。

 まあ、実際にはソロで活動する探索者は少ないし、運や、適正等々もある為、先刻ライザが言っていた様に、あくまでも指標でしかないのだけれど。

 さて、ここで問題となるのが虹銀硬貨である。

 この硬貨は、ある時突然現れる。

 迷宮を探索して帰って来て、収集品を整理しようと荷物を見ると、知らない間にその中に現れているのだ。

 そして、本人が意図せず紛失、つまり落としたり、盗まれたりした場合、一定時間が経つと持ち主の元に戻る。本人が意図して手放せば、一定時間を経て消滅する。

 そして、過去に虹銀硬貨の持ち主となった者は、例外無く何かしらの形で、異能と言う程の能力を持っていた。

 それこそ、一軍を一人で相手取れるだけの能力、と言われている。まあ、その真偽は分からないものの、国をして、無視出来ない能力を持つ者こそが、虹銀硬貨に選ばれると言われ始め、何時の間にか、最上位の虹銀ランク探索者という位が生まれた訳だ。


「突然、虹銀硬貨の持ち主になっただけで、オレが偉かった訳でも無いのに、急に畏まられたりしても、窮屈なだけなんだよね」

「えっと、そうなの?」

「そう。と言うかさ、ライザ」

「え?」

「先刻から、口調が地に戻ってる」

「は? え? あれ? ええっ!」

「パニクり過ぎ」

「でもでも、意識をしっかり持って、態度も含めて毅然とあれ。そうであれば害意も退けられるって・・・」

「誰かに言われた?」

「・・・ある本に書いてあった・・・」

「本かよっ!

 まあでも、オレは地の方が良いと思うけどな」

「え? そ、そう・・・かな」


 このアルマン改めアルの意見は、おそらくほとんどの者が同意する意見であろう。

 何しろ、見目麗しい女性が、我と自称していれば、かなり近寄り難いのだから。色々な意味で。


「うん、そっか。じゃあ、アルマン、あ、違うか。アル・・・さん? 様? 「アルで良いから!」あ、はい。 えっと、じゃあ、アルに対しては、うん。地で話すね」

「えっと、何でオレ限定?」

「だって、その・・・恥ずかしいし」


 この時点で、アルが『こいつ何か、あるいはどこかおかしい』と思っても、それは誰も責められないであろう。


「そ、そうか。うん、まあ、良いんじゃないかな?」

「何で疑問系?」

「いや、気のせいじゃないかな」


 そんな事をしている間に、ギルドからの応援が転送して来たので、そのやり取りもそこまでとなった。

 アルとライザは、ギルド長が呼んでいるという事で、拘束を終えた段階でアルが魔法を解き、後を任せる事となった。

 何しろ、転移は本人が飛ぶ階層をイメージしなければならないのだから、転移門を使うと逃走される可能性もある。ギルドから派遣された面々は、拘束された十五人を人海戦術で、迷宮の外まで運び出す事になるのだ。



「皆さん、ご無事で何よりです。

 先ずは依頼達成ご苦労様でした。達成報酬は窓口にて受け取って下さい。

 また、ライザさんとイルナさんは、ランクが一つずつ上がりますので、忘れずに窓口で手続きを行って下さいね」

「了解。じゃあオレはこれで。って、どういう事かな?」


 依頼達成という言を受け、とっとと退出しようとしたアルだったが、その服の裾は、ライザによって、しっかりと握られていた。


「えっと、ちょっと心細いって言うかさ、ほら、あれだよ」

「どれだよ」

「ほら、まだ説明も済んでないって言うか」

「だから、ギルド長が説明してくれるだろ」

「えっと、それじゃ」

「それじゃ?」

「あー、はいはい。そこ二人、じゃれつかないの」

「じゃれついてません!」


 何か、デジャビュを覚えるアルであった。


「とにかく、話が進まないし、アルマン君も残って貰えるかしら?」

「依頼なら、報酬貰うぞ」

「うん、帰って良いわ。お疲れ様」

「マディナ殿!」

「だって、アルマン君にとっては全て終えた状態だし、強制は出来ないのよ」

「ううっ」

「その代わり、後でアルマン君の居場所は教えるから、今は我慢して頂戴」

「ちょ、ギルド長!」

「依頼が終わったから、関係も終わりって訳じゃ無いでしょ? それとも、この状態の女性を放置するのかしら」

「・・・ちっ。分かったよ。

 だけど、この二人に箝口令も、しっかりしとけよ」


 というやり取りの後、アルはギルド長室を退出した。

 居場所云々で反発したくせに、貸した無間袋を返して貰っていない事、また、分配報酬分を受け取っていない事を、アルがすっかり忘れていた為、結果が変わらなかったであろう事を本人が気が付くまでに、およそ一日を要したのであった。



「改めて、お二人共お疲れ様でしたね」

「いえ。ところでアル、いやアルマンに簡単には聞いたのだが、どうやら我に関わる事も多かった様だ。

 出来れば、詳しく教えて欲しいのだが」

「詳しく、と言われても、やっと色々と証拠が得られて、これから調査という状態ですからね。未だ詳細は分からないのよ。

 この場では、現状で分かっている事の概要で、詳細は後日、で良いかしら。

 勿論、教えられない事とかは無理だけれどね」

「ああ、それで構わない」


 詳細とは言え、自分に関わりがある部分のみであろうとは、ライザ自身思っていた事である。

 事が貴族や変異種が絡んでいる事、そして何より、国という枠を越えた組織である探索者ギルドが動いたという事から考えて、表に出せない話しも多く絡んでいる可能性が高いのだから。

 またライザとしてみれば、虹銀ランクのアルが動く程だったという事から、容易く情報が流せる様なものでは無かったと考えた事が大きい。

 実際には、虹銀ランクの動きは本人次第な部分が大きい為、事の大小は結果論でしか無いのだけれど。

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