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11 秘密

 イルナが、急いで転移門へと向かい、その手前で倒れている十四人の者達の傍を抜ける時だけは若干速度を落とし、警戒したものの転移した事を確認し、ライザはアルマンへと声をかける。

 

「さて、ただ待つのも退屈だ。簡単で良いから説明を頼めないか?」

「面倒だから、ギルド長に丸投げしたかったんだけどな。まあ、良いか」


 そう言って話し始めた内容は、驚くべきものではあったが、ライザにとって無関係では無いものだった。


「要は、ライザが探索者をやってる理由、それが一つの原因だ。

 ライザは、あと半年くらいで、最低でも金Ⅰに上がる事で、ある貴族からの求めを突っぱねられるという約束になっていた。ってのは間違い無いか?」

「何故それを!」

「良いから、間違い無いかどうか」

「ああ、うん。間違い無い」

「その約束が果たされそうだったから、ってのが、イェランが二人を麻痺させた理由だろうな。

 今回の指名依頼、必死に受けられる様に動いたのは、これを達成すればライザが金Ⅰに上がる条件をクリアするからだしな」

「え? いや、確かにここで指名依頼を達成すれば、評価が上がる判断はあったが、その後で試験があるだろう?」

「その試験が、今回の指名依頼だよ」


 そう、今回の指名依頼である、異常種の探索は、ライザが金Ⅰランクへと上がる為の、ギルドからの試験でもあったのだ。


「その貴族との約束は、ライザが条件を達する事が出来た場合、援助した分を全て白紙にする。逆に、条件に達しなければ、ライザはその貴族の妾になるってものだな?」

「あ、ああ。そうだ」

「それな、嘘だ」

「え?」

「元々、ライザを自分のものにするつもりしか無かったって事さ。

 とは言え、それなりにランクを上げた探索者となったライザを迎え入れた形にすれば、その貴族としても格が上がるだろ? 要は、銀Ⅲで止まっていれば問題無し、金Ⅰに上がるのは阻止したかったって訳だ。

 勿論、探索者をやっている間に万一の事があるのも困るからな。そこで送り込まれたのがイェランって訳だ」

「なっ、何だと!」

「ライザはこれまで、気を張って頑張ってきたんだろうけど、もう少し人を疑った方が良いぞ」

「っ・・・」


 そもそも、なり立ての探索者は戦力敵に見ても、受け入れてくれるパーティーは多くない。しかも、女の探索者ともなれば、下手なパーティーに入ってしまえば、迷宮内で襲われる事も少なくは無いのだ。

 その為、大抵はソロで頑張るか、似た様ななり立ての探索者同士で組む事が多い。

 ライザは、たまたま同じ日に探索者登録をしたイルナと出会った為に、余計にどこかのパーティーに入る事が難しくなった。

 何しろ、新人の女探索者二人だ。邪な目的を持った連中でなければ、自分達で世話をするにも、足を引っ張られて危険性が増す事になるのだから、受け入れに躊躇するのは当然だろう。

 それでも下積みを、二人で頑張ってクリアした、その苦労を知っていた為だろう。数ヶ月後に、登録したものの、どうしたら良いか困っていたイェランと出会い、一緒に動く事となったのだ。

 しかし、実はイェランは、ライザが探索者登録をした当初から、隠れて見張っており、ある程度の間を開けてから接触して来ただけであった。


「まあ、こうした事情は、言い方は悪いけど副産物だったんだよ」

「副産物って・・・」

「ここ最近、迷宮内で異常種が確認され始めた。その頻度が高かった事に疑問を感じたギルドが、ライザの昇級試験としてその調査を充てたわけだけど、当然任せっ切りって訳じゃ無い。

 そこでおかしな動きが引っかかった訳だ。

 ライザと約束事をした貴族の領から、頻繁にやって来る探索者パーティー、ああ、そこに転がってる十四人の事な。そいつらは、ギルドに出入りしないで、迷宮に数日入ってはクレリアナを出て、また戻って来る。

 で、探りを入れたところ、ライザの事も情報として上がってきたらしい」

「そんな事が」

「まあ、ギルドとしては、有能は探索者に対する援護の意味も有ったんだろうな。

 危険性を減らせないか、試験内容を変えるべきか検討した結果、結局は試験の時には危険性が避けられないだろうって事で、オレをぶっ込む事にしたらしい」


 そう、裏で怪しげな動きがあった為、そこへの保険と、問題が確認された場合の対応こそが、アルマンが受けた本当の依頼だったのだ。


「アルマン、貴殿・・・いや、貴方は何者なの?」

「オレか。良いのかな? ま、良いか。

 アルマンってのは探索者的な偽名でね。本当の名前はアル=ローウェン。アルマンの時は、見せた通り黒鉄Ⅱランクの斥候役だけどな」


 そう言って、懐から探索証者を取り出して示す。


「なっ! そ、それは・・・」

「アル=ローウェンの場合はこれだ」


 その手の探索者証は、虹色に輝いていた。


「虹銀Ⅱランクの魔導師、って事になる。

 一応これは内緒なんで、出来れば口外しないでいてくれると、面倒が無くて助かる」

「ミスリルランク・・・実在したんですね」

「ん?」

「あ、いえ、申し訳ありません」

「いや、そんな謝らなくてもさ。

 みんな同じ様に内緒って事になってるけれど、虹銀なんて、現時点でオレを含めて三人居るぞ?」


 そもそも、通常の形で上がれるのは白金ランクであって、虹銀ランクになるには特別な条件が必要となる。

 あまり知られていないが、その条件とは虹銀貨を得る事であった。

 そもそも、硬貨の全ては迷宮品として採集された物のみとなっている。これは、同じ素材、同じデザインで作製した場合、偽造の可能性が避けられないが、迷宮品の場合は真偽検証魔法で確認が出来る為である。つまり、迷宮品の硬貨は偽造出来ない事から、通貨として流通するのに都合が良いのだ。

 とは言え虹銀硬貨だけは、これまでの歴史の中で七枚しか確認されていない為、定義上は白金貨百枚と同価値となってはいるが、当然流通しておらず、加えて、持ち主が死んだり、他者に譲り渡す等して、その持ち主の手を離れて一定時間経つと、何故かその行方が分からなくなる事から、その持ち主以外に所持が出来ない遺失技術品、または、迷宮内で様々な物品が消失する様に見立てて、迷宮の卵とも言われているのだ。

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