Chapter 7: A Taste of Belonging
海風にさらされ、潮の跡が残ったクリーム色の二階建ての木造家屋は、どこか物寂しげに佇んでいた。
濃い色の瓦屋根が、道沿いの低い木の柵と対照をなしている。
玄関先には靴がきちんと並べられていた。その傍らでは、扉の脇に植えられたクチナシの木から、ほのかな甘い香りが漂っている。
陽射しの中を漂ってきた朝食の匂いが、古い木の匂いと混ざり合い、鼻先をくすぐった。
日差しをたっぷり浴びて熱くなった傘が玄関前に置かれ、その隣には、脱ぎ捨てられたばかりの靴が一足、乱雑に転がっていた。
扉が、ギィ……と軋む。
「スキン、帰ってきたの?」
女性が、柔らかな声で言った。
「早く飯を食べなさい」
義父が、嬉しそうに呼びかける。
スキンはしばらくその場に立ち尽くしていた。
やがて、階段の下にあるクリーム色の扉へちらりと目を向ける。
「ジョアンは?」
スキンが尋ねた。
義母は、階段下の扉へ目を向けた。
「まだ、あの部屋にいるわ」
少し間を置いてから、彼女は静かに続けた。
「この子……どうも、遠慮しすぎるみたいね……」
部屋の中が、しんと静まり返った。
つけっぱなしのテレビの音だけが、かすかに響いている。
「……そうか」
スキンは階段下の部屋へまっすぐ向かった。
そして、鍵のかかっていないドアノブをゆっくりと回し、扉を開ける。
狭い部屋の中では、ジョアンが布団の上でぐったりと横になっていた。
手には、まだ本が残っている。
窓は開け放たれ、外の空気が入るようになっていた。
午前の陽射しが、小さな窓から差し込んでいる。
スキンは部屋の中へ入ると、すぐに扉を閉めた。
「何してるんだ?」
そう尋ねながら、布団の端へ腰を下ろす。
ジョアンは慌てて身体を後ろへずらし、スキンのほうへ顔を向けた。
本を胸元で強く抱えたまま答える。
「……読んでる」
スキンは枕に肘をつき、ジョアンの手にある本へ目を向けた。
「読んでるのか……」
淡々とした、静かな声だった。
そして、背後からパンと牛乳を取り出した。
ジョアンは顔を上げた。
その瞳が、スキンの手にあるパンの袋へほんの一瞬だけ向けられる。
けれど、すぐにまた本へ視線を戻した。
スキンは身体を起こした。
「昔はな……俺も、一日中本を読んで、飯を食うのを忘れたことがある」
いくつもの味のパンを開け、包み紙の上に並べていく。
スキンはそのうちの一つを手に取り、一口かじった。
そして、それを置いた。
ジョアンはしばらく、その様子を見つめていた。
やがて、ゆっくりとスキンへ身を寄せる。
そして――
スキンが今かじったばかりのパンを手に取り、黙って口へ運んだ。
ジョアンはスキンの目を見た。
肩がわずかに縮こまる。
けれど、スキンの眼差しはあまりにも平坦で、ジョアンには自分が何か悪いことをしたのかどうかさえ、わからなかった。
しかし、スキンは何も言わなかった。
ただ、もう一つパンを手に取る。
そして、二人の間にある包み紙の上へ、そっと置いた。
ジョアンはそのパンを手に取り、今度はそれを食べ始めた。
その口元には、ほんのわずかな安堵が浮かんでいた。
そして――
静かな読書の時間が、二人の間に流れ始めた。




