Chapter 2: Warii Kuramu
国際男子校「ワリー・クラム」は、海辺に佇む歴史ある全寮制の学校である。幼い子どもから大学生まで、幅広い年齢の生徒を受け入れている。
多くの子どもたちが、人生の何年もの歳月をこの塀の内側で過ごす。ともに成長し、学び、まるで一つの家族のように暮らしていく。
少なくとも、それが外の人々がいつも語る、ワリー・クラムの物語だった。
ブルーがこの学校へ足を踏み入れたとき、芝生の上では中高生たちが楽しそうに駆け回り、別の生徒たちは木陰に腰を下ろして本を読んでいた。
その光景を目にして、彼はふと、人生のある季節を思い出した。
かつては、これほどまでに単純だった頃を。
だが――
鐘の音が、彼の思考を断ち切った。
ブルーはふと、遠くに建つ一棟の青い建物に目を向けた。
ひどく静かだった。
まるで、そこだけが切り離されているかのように。
その建物には、ひとつだけ窓が開いていた。
そして、小さな生徒が一人、窓から下をじっと見つめている。
指先で窓枠を小さく叩きながら、少し不機嫌そうな顔をしている。頬には、ほんのりと赤みが差していた。
けれど、その窓の外を見つめる瞳だけは、かすかに輝いていた。
その瞳は、まるでこう考えているようだった。
> 「……きっと、楽しそうだな」
ブルーは、黙ったままその少年を見上げていた。
その一方で、少し離れた場所に立っていた金髪の少年もまた、ブルーと、あの青い建物をひそかに観察していた……。
自動ドアが、かすかな息遣いのような音を立てながら、ゆっくりと開いていく。
その先には、明るい空間が広がっていた。
古い本の紙の匂い。
そして、窓の隙間から差し込む、暖かな陽射し。
この朝、ブルーを呼び出したのは、この学校の校長だった。
そして、二人の初めての対面は――あまりにも奇妙なものだった。
> 「あなた……タラニー・ブルーさん」
> 「あなたの仕事は、ワリー・クラムの創立記念ドキュメンタリーを撮影することだけではありません」
>
> 「あなたには、ここで臨時教師も務めてもらいたいのです」
中年の女性は、ゆっくりと書類を机の上に置いた。
その表情は穏やかで、まるで何でもないことを話しているかのようだった。
> 「ワリー・クラムは、長い歴史を持つ学校です」
>
> 「けれど、子どもたちに映画を通して物語を記録することを教えた者は、これまで一人もいませんでした……」
>
> 「だから、私が夫の後を継いで校長になったとき、あなたの名前をもう一度目にしたのです」
>
> 「世間を騒がせたニュースではありません」
>
> 「あなたの作品を通して、です」
ブルーは、しばらく黙っていた。
やがて、その瞳がゆっくりと伏せられる。
いつも不機嫌そうに見えるその顔には、知らぬ間に、かすかな赤みが頬に浮かんでいた。
> 「どうして……僕なんですか?」
その問いは、囁きのようにこぼれ落ちた。
中年の女性は、かすかに微笑んだ。
そして、優しい声で答えた。
> 「ここにいる子どもたちの中には、あなたのような先生を必要としている子がいるかもしれない――そう思ったからです」
部屋全体が、ふいに静まり返った。
聞こえるのは、時計の針が刻む音だけ。
一年ぶりに――
彼は、何一つ答えることができなかった。




