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よろず屋K  作者: やしき丸


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2/8

佐伯さんの事務所にて

「昨日の今日で悪いんだけど、急ぎの仕事を頼みたいの。電話じゃ話せないから、事務所まで来てくれる?」


 オカルト全般を取り扱うと決めた翌日、佐伯さんから電話がかかってきて、佐伯さんの事務所に呼び出された。どうやら早くも幽霊以外の依頼があるようだ。


 スマホから漏れた佐伯さんの言葉を聞き、うちの子たちがざわつき始める。

 彼女たちは生きている女性に対して強いコンプレックスを持っている。そのため、俺が生きている女性に会うことを極端に嫌がる。

 今も首を横に振って会うな会うなと拒絶の意思を示しながら、俺の体を撫で回してアピールしている。


「仕事の話なんだから仕方ないだろ? 君らが気にしてるようなことはないから安心しなって」


 スマホを一旦遠ざけてうちの子たちを落ち着かせるように言い聞かせる。


「これからは色んな依頼が来るから、生きてる女性に会う機会も増える。できるだけ慣れてくれよ?」


 うちの子たちは渋々頷いた。


「それじゃ今からタクシーで向かいます」


「わかったわ。待ってるからねー」


 電話を切ると、うちの子たちは俺の周りをぐるぐると(うごめ)き始めた。俺を怒らせたと思って焦っているんだろう。


「怒ってないから落ち着いて。ほら、順番に撫でてあげるから」


 俺がそう言うと、みんな一斉に自分から撫でろと群がってくる。一人ずつ撫でていき、全員が終わったところでうちの子たちはようやく落ち着きを取り戻した。

 すでに何度も会っている佐伯さんに対してでさえこの反応なのだから、本当に困ってしまう。


「それじゃ、佐伯さんの事務所に行くぞ」


 今度はさすがに拒絶反応はなかった。

 

 佐伯さんの自宅兼事務所は隣町にある。

 除霊の依頼料が入ったばかりだし、贅沢をしてタクシーで向かうことにした。


 とある高級マンションの前でタクシーを降り、入口でインターホンを鳴らす。

すると、すぐに女性の声で返答があった。マネージャーさんの鈴木さんだ。

 鈴木さんは日中事務所に通って佐伯さんの手伝いをしている。


坂木葉(さかきば)です」


 名前を名乗るとすぐにオートロックを解除してくれたので中に入って行く。

 さすがは高級マンションと言うべきか、オートロックの奥にまた扉がある。

すぐ脇に窓口があり、そこで身分証を見せなければならない。

 身分証を見せると、受付の男性がどこかに電話をかけた。多分佐伯さんの部屋に確認しているんだろう。

 確認が済んだのか、男性はすぐにボタンを操作して扉を開けてくれた。

 俺は男性に会釈をして扉をくぐっっていった。


 運よく一階に降りていたエレベーターで、佐伯さんの事務所がある8階へ。

 このマンションは十階建てで、最上階にはなんと一部屋しかない。その値段を聞いた時は驚いたものだ。

 さすがの佐伯さんもそこまでは手が出なかったらしく八階に住んでいるが、八階も二部屋しかないので相当なものだ。


 八階でエレベーターを降りると左右に玄関が二つある。二つ()()ない。


 右の八〇一号室が佐伯さんの事務所だ。


 玄関の前でもう一度インターホンを鳴らすと、すぐに玄関が開けられて鈴木さんが出迎えてくれた。


「坂木葉さん、お久しぶりです。社長がお待ちですので、どうぞ」


 鈴木さんに先導されて部屋に入って行く。相変わらずお洒落な部屋だ。あまり派手さはないが、しっかりと空間をコーディネートしてある。

 さりげなく絵画や小物が配置されていて、家具の位置も計算されている。



……だと言うのに。



「ケイさん、待ってたわよー! ちょっと、また痩せたんじゃない?しっかり食べないとだめよ?」


 そう言って現れたのは佐伯さん。佐伯さんは部屋の良い雰囲気をぶち壊すかのような、珍妙な格好をしている。


 肩の辺りで整えられた髪はアッシュグリーンに染められている。

 一応スーツ姿ではあるが、どこで買ったのか、その色合いは非常にカラフルだ。パッションピンクを基調に、色んな色で模様が描かれていて、正直見ていると目が痛くなる。

 そこに更にアクセサリーをじゃらじゃらと身に着けているので、落ち着いたお洒落な部屋の雰囲気が台無しになってしまっている。


 促されるままソファに座り、鈴木さんが淹れてくれた紅茶を一口飲む。


「早速だけど、依頼について話すわね。この話は絶対に外に漏らさないように気を付けて」


 電話で話せない上に外部に漏らせない依頼……これは大きな案件の予感がする。


「わかりました」


「それと、ついでに今のうちに言っておくわね。これからオカルト全般を担当してもらうに当たって、今回みたいに外に漏らせない案件も増えるから、そのつもりでいてね。……まあ、ケイさんは一人だから大丈夫だと思うけど」


「うちの子たちは漏らしようがないですし、俺もあんまり他人と接触しないですから、そこは大丈夫だと思います」


「オッケー。じゃあ本題に入るわよ? ――今回の依頼主は、警察なの」


「警察ですか……それはまた大きな案件ですね」


「と言っても、内密の依頼だからケイさんが依頼主に会う必要はないわ」


「そうですね。むしろ下手に会ってるところを見られる方がまずい」


「その通り。ケイさんは直接現場に向かって、怪異を退治して帰ってくる。それだけでいいわ」


 警察がオカルトの依頼を出しているなんて知られるわけにはいかない。実際に怪異が発生しているとしても、世間は許してくれないだろう。


「神奈川県の御霊川(ごりょうがわ)玉川(たまかわ)町の住宅街。これが今回の現場よ。神隠しが起こっているらしくて、その捜索中に怪異に遭遇したみたいね」


「神隠し……」


「捜索中に怪異に遭遇した警察官は5人。いずれも重症を負って入院してる。遭遇したのは大きな目玉の化け物だったと全員が揃って証言してるわ」


「目玉の化け物……」


「何をされたかわからない内に大きな傷を負ったらしいから、何か能力を持ってるかも知れない。注意してね」


「わかりました」


 神隠しということは、何かしらの能力があるのは確定と思っておいた方が良さそうだ。うちの子達にも後で言い含めておかないと。

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