隠し扉
一方その頃、廊下に一人取り残されたロゼは幽霊に対する恐怖心と独りぼっちの心細さに身を震わせながら手で壁を伝って真っ暗な廊下を進んでいた。
「うぅ……二人とも何処に行ったんだよぉ……」
手に持っているカンテラの灯りを頼りに進むロゼであったが、既に自分が今居る正確な位置も何処へ向かうべきなのかも分からずにいた。
だがその時、上層階から何かを叩き付けるような大きな音が廊下に響き、ロゼはビクッと身体を震わせると振り返って天井へ向けてカンテラの灯りを向けた。
「な、何……ッ!? ……何だよビビらせるなよ」
おそらく城が古いせいで何かが床に落ちたのだろう。そう考えたロゼは溜息を吐くと後退りしつつ再び灯りを正面に向ける。
だがその瞬間、カンテラの明かりが届かない範囲にいた為にそれまで気付いていなかったのか突然、悪魔を象った巨大な彫像がロゼの前に現れた。しかもよりによって狂気的に歪んだ笑顔を浮かべる悪魔の顔がロゼの眼前に迫っていたのだ。
「ーーーイッ!? イヤァァァァァァッ!!?」
悪魔の彫像と目が合った瞬間、ロゼは悲鳴を上げながら彫像を通り越して廊下を全速力で走り抜ける。普段のロゼであれば全く微動だにせずに過ごせていたであろう。しかし元から持つ幽霊へ対する恐怖心と独り取り残された今の状況が重なりもはやパニック状態に陥っていた。
そうして走り続けていたロゼだったが、廊下の曲がり角に差し掛かった所で花瓶が置かれている装飾棚の陰に飛び込むとその場で座り込み深呼吸をすると気持ちを整える。
「はぁ……はぁ……ま、マジで勘弁してくれよ……」
涙交じりの声でそう呟くロゼは取り敢えず今の状況を整理すると同時に今後の目的を考える。
まずエアリスとブレイドが突然消えた件だが二人が悪戯でやったとはまず考えられず、自身が気絶している間に何らかのトラブルがあったとみて間違いない。
そして現状で最優先すべきはエアリスとブレイドと合流する事でありこれが出来なければ本依頼の達成など不可能であった。
「とにかく今は二人と合流しないと……」
ロゼは立ち上がろうと真横にある飾り棚の装飾に手を掛ける。だがその時、その装飾が『カチッ』と音を立てて傾くと、それを皮切りに何処からともなく壁の中から歯車の噛み合う回転音が聞こえてくる。
「ーーーえ?」
突然の事で一瞬何が起こったのか分からなかったロゼだったが次の瞬間、ロゼの背に凭れていた壁の一部が突然開き、そのまま転がり落ちる様に壁の中へ吸い込まれてしまう。
「わぁぁぁぁぁッ!!? 何なんだよこの城はぁぁぁぁぁッ!!?」
そうして真っ暗な空間の中、スライダーの様な坂道を滑り落ちながらロゼの絶叫がこだました。




