合流
「ヴァンパイア族……ッ!? 君が……本当に?」
「信じられないかい? まぁ無理もないか。とうの昔に滅び去った筈の種族だからね……」
エアリスは少年から伝えられた衝撃的な事実に息を呑んだ。目の前にいるこの少年は大昔に絶滅しまったとされるヴァンパイア族、その生き残りだと言うのだ。だが余りにも突拍子もない話に流石のエアリスも疑いざるを得なかった。
「なんなら証拠を見せようか? ほら……」
エアリスの表情を見て信じていないと感じ取った少年は彼女に背を向ける。すると少年の背中から突然黒い翼が現れ、飾りや偽物ではないと主張する様にパタパタと羽ばたかせる。
「本当に翼があるんだ……魔法じゃないみたいだし、君のその赤い瞳といい伝承に残ってるヴァンパイア族の特徴と一致してる……うん、信じるよ」
少年の翼を見てエアリスは漸く信じる気になった様子であった。だがこの少年がヴァンパイア族であるという事実を受け入れた瞬間、また別の疑問が浮かび上がってきた。
「でもどうしてこんな地下に居るんですか? この城の城主は君の叔父さんなんでしょう? 足にそんな枷を付けられてるなんてまるで……」
少年に付けられた足枷を見つめながらエアリスはそう尋ねる。親族が城主であるなら地下ではなく城の上階に部屋を持つなど良い待遇を受けている筈である。だが現に少年は地下の一室で足枷を付けられているなどまるで囚人の様な扱いを受けている事に疑問を抱いたのだ。
「あぁこれかい? 君の想像通りだよ。僕はここに監禁されてるんだ」
「監禁!? どうしてそんな!?」
少年の口からさらっと語られた事実にエアリスは驚きを隠せなかった。
「僕と叔父上との仲は良好じゃなくてね。血の繋がりがあるってだけで向こうは僕の事を疎ましく思ってるんだ」
「酷い……家族に対してそんな……」
「さぁ、もう話は終わりだ。そろそろ行きなよ。これ以上モタモタしてると本当に叔父上が此処に来てしまうよ」
話を終えた少年はエアリスに背を向けて本棚へと向かうと次に読むべき本を探し始める。だがそれから僅か数秒後、足に付けられた足枷の鎖が動く違和感を感じて少年は再び背後を振り向く。
「ーーーえいッ!!」
するとそこには部屋の中心にある鎖が繋がれた支柱を引き抜こうと鎖を引っ張るエアリスの姿があった。
「な、何をしてるんだ……?」
早く逃げるよう勧告したにも関わらず、その様な謎めいた行動を取るエアリスに対して困惑する少年は思わず声を掛けた。
「何って、この鎖を外すんですッ。私と一緒にここから出ましょう……ッ!!」
非力ながらも必死に鎖を引っ張りながらエアリスはそう答える。
「やめろよッ! 誰がそんな事頼んだんだ! 僕の事なんか放っとけよッ!」
「放っておけませんよ! 理不尽に監禁されてる人を助けちゃいけない理由なんてある訳ないじゃないですか!! それとも何か此処に残らないといけない理由でもあるんですか?」
「それは……」
「此処に残らなければいけない理由」その言葉を聞いた瞬間少年は突然口籠る。その様子を見たエアリスはやはりここから出られない何か理由があるのだと察知した。
するとその時、天井の方から何処からともなく人の叫び声の様なものが聞こえると段々とそれが大きくなり、こちらへと近付いてくる。かと思えば壁に掛けられていた一枚の絵画が突然開いて中から何者かが勢いよく飛び出してくると二人の間を通り過ぎ、積み重ねられた本の山に突っ込む。
「ーーーな、何だ!?」
あまりにも突然の出来事に二人は目を見開いて驚くと、飛び出して来た者がいる方へ視線を送る。すると崩れた本の山の中から出て来たのは……。
「痛ってぇ……何がどうなったんだ……?」
「ロ、ロゼさん!?」
頭を押さえながら目を回しているロゼであった。




