第六章4話 戦闘準備2
彼等の意見程説得力のあるような意見を出せるとは思っておらず、実際彼等とは案をだす部類が違っているのだから仕方がない、そんな後ろ向きな気持ちで自分を鼓舞し自分の無い知恵を嘆き悲しみながら、策とも言えない策を語る。
「すげぇ説得力のある意見を聞いた後に」
「そんな前口上は良い、さっさと本題に入れ」
心を落ち着ける意味合いもあった時間稼ぎを一刀両断され、これ以上引きの増すことのできなくなった時間の中、小声で話している状況にわをかけ声が小さくなるのではという不安を抱きつつ
「まず俺の案と言うのはこれを使う」
口に出す。
口から言葉が流れると同時に、ポケットに入れて居た過去一度使い、電源を切っていた携帯を出す。
電源は切っていたため節電されておりおそらく使用可能。
「あの時の?」
「なんじゃこの珍妙な機械は」
「兄者……」
「ユウヤこれって」
二人はかつて見たことの有る物体を見て、かつてと同じ使い方をするのか? と疑問を抱き、一人は見たことも聞いたこともないとじっくり眺め、一人は懐かしそうにそしてどこか悲しそうにつぶやく。
「これにはいろいろな機能があってだな」
話をするのは今ではないと、頭の中で何とか自分を律する。
今携帯の説明をしても仕方がない。そんな時間はそれこそ無駄になる、これをどう使うかそれだけを端的に説明さえすればそれで構わないのだ。
「数多くある機能は今は良い、これを使ってしたいことと言うのは」
「あの時と同様のことではダメだということは理解してるのだろうね?」
信頼していないのか、ただの確認なのか分からないが問いかけてくる声。
もちろんそれは承知の上だ、だからこそいろいろな機能があると言ったのだ。
「今回使おうと思うのはタイマー……時限式の時報みたいなものだ」
タイマーと言って理解されるか不安だったため、言い直したのだが三人とも理解できたらしい。一人は知って居るからカウントしない。
「そのタイマーを使って奴らをおびき寄せようと思うんだ」
「確かにそのタイマーを使えば安全におびき寄せることは可能だろう、だが距離は?」
問題は距離だがその距離自体俺たちが長々と作戦会議を行ってる現状を鑑みれば、おのずと大体の距離は分かる。
少なくともこの程度は離れて居るのでは? という予想を立てることは可能だ。
鹿がどの程度の距離なら音を聞き取れるのかそれ自体が定かでない以上確実にこの距離、と断言できないがそれでも目安にするくらいなら可能だ。
そこまで考えて自分の浅慮に笑いが込み上げてくる。行き当たりばったり、一寸先は闇の綱渡り。
そんな危険な綱渡りを大切な仲間を連れて行う自分の神経の太さに驚きと笑いしか湧かない。
「何を笑ってるのか知らないが、距離の方の説明をしてくれないか?」
一人の世界で楽しんでる俺にそう苦言を呈すヴァインズ。
彼の言葉に現実に戻され、緊張感が少し消えて居る自分にまたおかしくなるが、話をしなくてはという気持ちで、笑みを表に出さない。
「正確な距離は分からない、でも俺たちから距離が有ることは確定している。それならタイマーを最大限の音量に設定して後はお前たちが察知できる距離と俺たちの中間より遠めに投げれば準備万端」
彼らが何故察知できたのか分からないが、彼らが察知できる距離を知ることが出来ればそれで相手のおおよその距離が分かるその上で俺たちに近づきすぎて居ない距離を割り当て、投擲すれば問題は解決というわけだ。
これで彼等の察知したわけが分かる。……てそう言えば索敵に優れているのってローリェだったような……
「察知したのわわしらじゃ無い、ローリェさんじゃ」
俺の思考が正解にたどり着いたと同時くらいに答えが投下される。
「拙者らは起こされた後の周囲の警戒をしていただけでござる、それなりに旅をしていたものの集まり、夜忍び寄る的の察知には自信があるというものでござるよ。本職には負けるでござるが」
彼は苦笑気味に言う。
確かに魔法で索敵をすることのできる、ローリェに比べれば彼らは足元にも及ばないということになる。
納得も言ったところで後ろに居る彼女の方を振り返り、質問をする。
「ローリェどの程度の距離までなら分かるんだ? いやどの程度離れて居た敵を察知した?」
彼女が察知してから数時間と経っている可能性がある中、彼女は一度も敵の距離について語って居ない。
それは彼女が察知したのちに範囲外に離れたということになる。もしくは……
「500メートルくらいかな? 正確には分からないけど」
500メートル……意外に鹿の耳は良くない?
そんな感想を抱くと共に。
「一応聞くが今は魔法使ってるのか?」
抱いていた疑問を聞いてみる
彼女が察知した後魔法を解くようなことは無いなら、彼女が距離について言わなかったのは、察知外に移動したのか……
「ごめんなさい、維持して居たかったんだけど魔力がもう……」
魔力切れ……
簡単には起こらないらしい現象だが俺たちは最近ひもじい生活をしていた、取るものを取って居ればそう簡単にはならないものも、免疫力や体力精神力気力などがすり減っていると病にもかかる。
魔力切れは疲労の一種らしいが。
「いやいい、ローリェ君は悪くない」
問題は500メートルより先かそれより近いかだが……。
仕方ない、500メートルギリギリに狙って投げるほかないか……
「目標地点は500メートルということでいいか?」
「構わないよ」
「拙者も異論はないでござる」
「うむ」
三人とも異論はなく、投擲位置は決まったがどうやって投げるかだ。500メートルただ飛ばすだけなら、後月なら何とかしそうだが、木々が邪魔で着地するまでに減速してしまう。
「ごめ」
「君は悪くない。謝らないでくれ」
彼女が謝りかけたところを制して謝らせない。
「君が察知してくれなければ今頃皆一緒にあの世で仲良くやられてた可能性だってあるんだ、だから謝らないでくれ。それに君が謝るくらいなら俺の方が役立たずだ、皆に迷惑ばっかりかけて居る」
「ぬしさまは良く理解しておるのぉ」
何か聞こえた気がするが放置する、構って居る時間がない。
「だから気にするな」
彼女の顔が明瞭には見えないが少し気持ちが落ち着いたような気がする。
彼女の心配が晴れたことで次の問題にぶち当たる。が予想より近かったこともあり何とか出来るかもしれない案が一つある。
「でぬしさまその物体をどうやってこの木々の中500メートル先まで投げるつもりじゃ?」
「それなんだが……これを使おうと思う」
そう言って登場したのは過去の遺産イヤホン。
このイヤホンの耳の部分を引きちぎり、根っこまで割いたら短いが二つの紐状になる。この紐を使って投石機を作る。
遠心力で回して飛ばすスリングの様なものを作れば何とか行けると思う。
「それは?」
「またぬしさまが変わった物を出しおった」
「……」
「ユウヤ何それ?」
「これ自体の説明をしてたら時間がかかるから、どうやって使うかだけを端的に説明すると。二本の紐状になるよう付け根まで裂いてた状態で、片方を携帯に括り付け遠心力を利用し飛ばす」
口で説明しながら実際に作ってみると思いの他イヤホンが短くスリングを作るには至らなかったので、途中で使用方法を変更する。
初めは挟んで飛ばす予定だったが括り付けて飛ばすことにする。こうすると遠心力は十分に行き渡るが、イヤホンも一緒に飛ばすため木々に引っかかる恐れがある。
だがイヤホンは手元に残る方法だと十分に飛んでいかない可能性が高い。
なら飛ばないより飛んだうえで引っかかる方が良いと思い、ストラップを書けるわっかのところにイヤホンの紐を通し、途中でほどけない様しっかりと二重三重に結ぶ。
「だがそれじゃと木々に引っかかった場合途中で失速は免れぬ、最悪その場で停止する可能性も高い」
「それは承知の上だ、だが俺にはこれしか思い浮かばない」
現状の手持ちはそう多くはない、だがその中でも天才なら良策を思い浮かぶのかもしれない、俺にはない才能で今無いものをねだったところで、自体は好転しない。
「拙者は策を弄することは出来ないゆえそれでも構わないと思うでござる」
「僕もこの手持ちで、その上時間も限られているこの状況で名案を出せると思わない。賭けにはなるが君の案に乗るよ」
「私は……それしかないと思えるの」
「わし意外満場一致……ならその案に乗るしかないの」
皆ありがとう。
「作戦は拙いが決まった。準備も終わってる、後はタイマーの設定も投擲1分後にすればいい。次は殲滅方法だが……」
今度は難題だ、こちらは走り慣れない山道を走り敵に接近し倒さなくてはならない。
防具や武器は身に付けておらず、木々に苛まれ明かりは薄く、視界も良好とは言い難い。こんな中敵を見つけれるローリェは索敵を行えず、敵位置の把握はままならない。
敵は音反応するであろうということから、タイマーがなればそちらに近づくと思われるが、それでも500メートル以上もの距離があったとしても走ることになれており、山道もホームで有る向こうの方が早いに違いない。
「各個撃破が望ましいが、敵に接近して倒すにしても近づいた時点で気づかれる、遠距離で攻撃しようにもこうも障害物が多いと邪魔になって戦えない……」
どうすればいいんだ?
この状況で敵の撃破。五感が並みの相手なら、まだうまく立ち回ることで殲滅することが出来るかもしれない、だが五感のどれか。
今の状況だと味覚と視覚以外どれが鋭くてもダメな気がする。
この状況で目が良くても、木々が邪魔で視界が遮られこちらの接近に遅れを取る。相手の弱点をつける様な立地なら良かったのだが、今状況では全てが相手の利になって居る気がしてならない。
「各個撃破ではなく同時撃破じゃダメなのかい?」
そんなことを言いだす彼に一同きょとんとするのは当たり前で、数の利を活かす方が安全で確実それはどの世界でも共通。
それをわざわざ投げ捨てて2対2で戦闘しようと言っているのだ、理解が及ばないのは当然。それどころか彼の意を問いたくなるのは必然だ。
「どういう意味だ?」
「簡単なこと、敵が寄ってくる位置が変わってるのなら待ち伏せてその場で迎撃すればいい。相手の位置が分からない状況で近づき、接近に気づかれるくらいなら、その方が安全で確実だと思うんだが?」
彼の言ってることは目から鱗だった。
各個撃破が確実に安全なのは変わりないが、それは敵の位置と戦力をわかっている状態に限りということだった。相手の戦力が分からないのなら罠にかけ一網打尽と言う手もあるのだ。
だがそうなるとわざわざ携帯を投げ飛ばして敵を誘う必要性がなくなってしまう。それならここで戦えばいいのでは?
「それは良くない」
何も言って居ない上に、この暗闇表情の変化で思考を読み取られるとは思えない、となると俺の思考を単に予測したって事か?
「この場所で戦えばと思ったのだろ? それだと敵が接近するまでに時間がかかる。それにここまでの距離が遠ければ遠いほど救援を出しに行く可能性が高くなる。その可能性を考えれば相手から近く、それで居て二人なら勝てるかもしれない、そう思わせなければいけない」
近くで音がすれば片方が近寄り片方が待機。だが相手の数が二人だと分かれば二匹揃って襲ってくる可能性が高くなる。
そこまで考えての……
「俺よりよっぽど策を弄するのに適してそうだな」
「僕はあくまでも火力支援を担当させてもらうよ、時々作戦に口を挟むかもしれないけどね」
彼が作戦を考えるとなれば戦力が欠けることにつながる。
確かに口を挟む程度の方が俺たちには良いように回るのかもしれない。
「そうなると、昨晩ローリェがかけてくれた魔法の効果が効いてるうちに行動に移した方が良いな」
彼女が魔力欠乏で有る今、かけ直しは出来ない。
その上で先回りをするとなれば、音を出さない様注意を払いながら500メートル先に行かなければならない。流石に日が空ける前で有る今から夜までかかることはないと思うが、正確な時間が分からない以上早急にことに移った方がいい。
「ヴァインズ苦労を掛けて悪いな」
彼は先回りした後まだ役目が残って居る。
魔法で相手の無力化を図る。仮に無力化が出来なければ後月が残りを請け負う手はずだが、装備の無い彼に二匹のモンスターを相手取る余力はない。
そう考えれば、彼の魔法に頼るしか術はない。
だが魔法も人が使うもの、その者の体力が著しく欠いていれば魔法の威力は落ちるし、注意力が散漫になって居れば途中で途切れることもある。
そんななか彼に神経をとがらせたままの、移動を強要し。消耗した神経を次は仲間の命と自分の命という掛け金をベットした戦闘に挑むという、重圧を感じさせてしまう状況での抗戦。
仮に今この場で皆の命を背負った戦いが起こるのであれば、彼の火力は体力の消耗分以外衰えるく力を発揮されるだろう。
だが体力も疲弊し、神経をすり減らせたうえでの重圧。
これだけの要素が重なればいくら彼が強くとも簡単には行かない。
それどころか失敗する可能性が跳ね上がる。
「気にすることは無い、今できる最善を尽くせばいいだけだ」
そう言う彼はいつもの気障さを感じさせない辺り余裕がないように感じる。
言ってることはただただかっこよく聞こえる。
「兄者それに拙者も付いているでござる問題ないでござるよ」
確かに何とかなりそうな気はするが、それ以上に心配でもある。
彼が何かへまをしないか。彼は見かけによらず繊細で人の心をくみ取るのに長けている、その上戦闘経験も豊富へまはしないが、頭で理解で来ていてもなぜか不安が拭えない。
彼の性分なのかもしれないが、彼に失礼と思いながらもそんな不安を抱いてしまう。
「後月お前も気をつけろよ? ヴァインズが仕留め切れなければお前がやる事になるんだ、くれぐれも慎重に、安全にだ」
言って居て矛盾が生じる、皆危険と隣り合わせで死ぬ覚悟を必要とする状況。
安全など確保されておらず、逃げるにしても相手の方が速い。そんな状況でどう安全に木を使えというのか?
言って居ておかしくなって来る。
「兄者何もおかしくなどないでござるよ、人を心配してくれるその優しい気持ちに触れることで頑張ろう、負けられないと、自分を鼓舞する人もいるのでござる」
いつもと口調が同じだが、言ってる言葉の重みが違う。
いつもはキャラ付けのために言ってると感じる違和感しかない、口調だが今はいつもと違う違和感がある。
邪魔で仕方がない、せっかく良いこと言ってるのにいつもの口調が彼のセリフを貶めて居る。
「兄者行ってくるでござる」
「あまり話してる時間はないね、それじゃぁいってくるよ」
二人のいつもと違う雰囲気に言い知れぬ不安を抱くが、彼らに限って何か悪い子とを考えてるなんて事はないだろう。それに彼等なら何とかしてくれる。
過去もそして未来も彼等なら……
願望込のその願いはいずれ仲間を滅ぼす、そのことに気づかないと自身のせいで傷つく仲間を見続けなければならない、それを知るのは遠くない未来のことだった。




