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俺みたいなダメ人間でもやればできると信じたい  作者: 富田雄也
第六章 心強い新メンバー
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第六章2話 野営

 ラクネリアを出てから数日たったある日、ようやく光景が変わった。行く方角を間違えたのでは、と幾度不安になったか分からない。

 それでもようやく変わり映えのしなかった砂だらけの砂漠から緑が生い茂る森に到着する。


 外から中を見るにも見通せずだがうっすらと日の光が入って居ることは分かる。

 光がないと歩けないのでその点は問題ない。


「だがここからはバッシュはいけないな……」


 そう木々が生い茂っており、荷を引くバッシュはここで留守番する羽目になる。

 荷を置いていけば入る事も出来るかもしれないが、木々の間を縫っているだけで時間がかかってしまう。


「ごめんね」

「留守番他のんだよ」

「ぬしは強い任せたぞ」

「心苦しいがすまぬ」


 と各々のしばしの別れの言葉を告げ森に入る。何日かかるか分からないため少し多めの食料を置いておく。


「ここは暗いな」


 外から見て居るよりよっぽど暗く、一寸先は闇とまでは言わないが数メートル先は暗く視界が明瞭でないので分からない。


「ローリェ頼む」


 ここからは何があるか分からない、そのため彼女の隠密魔法を頼む。

 隠密を行えば多少はモンスターからの奇襲に備えることが出来る。備えあれば患いなししっかり備えておいて損はない。


【闇の生にお願い申し上げます、我ら5名に御身の力をお授け下さい】


 彼女の言霊を聞き届けたのか体の周りに空気が一瞬まとわりつきすぐさま霧散する。


「これで今から一日は魔法が持続するけど、私はまだ未熟だからないよりはまし程度で考えて置いて」


 彼女の祖の言葉を聞き苦笑してしまう。

 確かにないよりはまし程度で考えるのが定石。慢心していては何があるか分からない、だが彼女のないよりはましの魔法がなければ、ここで生きて行くのも不可能な気がする。


「ユウヤ何笑ってるの?」


「あぁ悪い、君が卑下しているのが少しおかしくて。慢心は行けないと思うが、子の魔法が無ければこれから先どれほど多くの危険にさらされるか分からないことを考えればおかしくてね」


 俺の発言にこの薄暗い空気を吹き飛ばすかのように、後ろのメンツからも小さな笑いが生じる。


「そうじゃのこれからはローリェの力も必要になるからのぉ」

「君の力は僕たちの生命線だからね」

「ローリェ殿のおかげですな」


 そんな皆の意見に彼女は顔を少し赤らめつつ、顔を反らす。

 砂漠は暑く変わり映えがせず疲労が溜まってたが、ここは砂漠とは違う閉塞感を味合わせる。

木々はどれも似て居るようでどこか違い、日の光も木々に邪魔されて薄暗く辺りは見えるが日の傾き加減で時間を推し量ることも出来ない。


 先程入ってすぐに気に傷をつけ目印にしようとしたらヴァインズとコロネが制ししてきた。理由は話さなかったが彼等の制しを無視してまでしなくてはいけない、必要性の有るものだとは思えなかったのだが、少し歩いた今は少し後悔している。


 方角はあってると思うが、木々が邪魔で自分がどの方向に行ったか分からない。

 と言っても日が完全に落ち辺りが、闇に包まれると方角が間違って居ようが合って居ようが差はなくなる。獣やモンスターから身を守る必要を考えなくてはならないのだから。


 仮に襲われたうえで夜目の聞かない俺たちが一塊になり戦い勝つにしても、逃げるにしてもその時点で方角云々は分からなくなってしまう。


 ローリェの魔法も発動後永続なんてことは無い、使用者が意識をなくしたり、魔法の使いすぎで魔力の枯渇。このような場合は魔法が解けるということは無いようだが時間制限があり、魔法の発動時魔力が無ければどの道使用が出来ない。

 そういう意味で永続発動は不可なのだ。


「そろそろ野営の準備でもするか」


 日は枝葉が遮っており辺りの暗さは全く分からないと言っても問題なく一応木漏れ日はうっすらうかがえる。

 だがその木漏れ日が薄くなってきて気がする。この場で野営を張るのが適切だろう。


「そうだね」

「ぬしさまにしてはしっかり判断しておるではないか」

「僕も異論はないよ」

「なら綺麗そうな枝でも探すでござるか」


 枯葉や折れた枝などを使用することに対して彼らは反対しない。

 生きているものを傷つける時にのみ彼らはそれを諌めようとする。訳は分からないが少し気になる。


「生きているものを傷つけたらだめなのか?」


 気になったことを口に出し質問すると、少し驚いたような表情でこちらを見る二人。

 彼の方は普通に驚いているようだが、彼女の方はすぐに感心したような笑みを浮かべている。


「何故そんなことを聞くんだい?」


「落ちてる物を使うのは良くて木を傷つけるのはダメ。それは下に落ちれるものは自然の摂理として淘汰された、若しくは寿命をまっとうしたものだ。それに対して幹に傷つける行為は生きている木を傷つけることになる。なら生きているものは傷つけてはダメで、死んだものはどうしようと構わないと取れたんだ」


 話しているうちに彼の表情も驚きから感心に変わっていく。


「少々違うね。落ちているものは森自体が使用することを許可しているのだ」


 ? 言っている意味が分からないんだが……


「ぬしさまの考えで大体は間違っておらんのじゃ、だた言葉のチョイスが違うだけじゃの」


 ……尚更分からなくなってきた。

 残りの二人も野営の手を止めてこちらの話を聞いているようだが、首をかしげてる辺り理解が及んでいないようだ。


「この森はいわば龍のおひざ元。龍に許可なく浸食などすれば逆鱗に触れ塵も残さず消されてしまうと言えばわかりやすいかのぉ」


 ものすごく恐ろしい言い回しだがこの上なく分かりやすい。

恐怖を植え付けるには最適の言葉で今後の行いには気をつけねばと、身を引き締めねばならないと気持ちを新たにさせてくれる発言であった。


「そこまでビビらなくても良かろう、特に害を及ぼすような行いをしなければ何も起きぬ」


 こちらの緊張を察してかそう言ってくれるコロネだが彼女の言葉でもまだぬぐえぬ感情が胸のうちに渦巻く。

 俺が今ここに、この森に足を踏み入れている時点で害を及ぼしていると思うんだ。


 俺は災いを引きよせる、なら俺の存在自体が害そのものだ。何故そこには触れずに行いだけで言うのだろう?


「なんぞ疑問でも抱いておるのか?」


 心を読まれたように思うが、ただ単に表情に出て居ただけであろう。

 心を読まれるのはあのばぁさんだけで十分だ。

 他にも心を読める人物が数百数千と居ればそれだけで世界征服が出来そうだし。


「あぁ俺の存在は大丈夫なのかなぁと思って。俺は存在するだけで災難を振り撒く体質じゃないか? それで森の主である龍はご機嫌斜めになったりしないのかなぁと」


「そんな些末なこと気にせんわい。元々自分の私有地に踏み入れたものを無差別に殺して居ったら人が存在せぬ世界になるわい」


 彼女の言ってることは論点がずれてる気がする。


「いや俺はそういう意味で言ったんじゃなく」


「龍からすればあまり大差ないのじゃ、ぬしさまの体質がいかに悪影響を振りまこうと、周りを幸せにしても龍にしてみれば同じ括りにしか見えない。人レベルの問題でしか無いのじゃから」


 納得のいくような、いかないような説明を聞かされまだ胸の辺りにもやもやした気持ちがあるが取りあえずは身を引くことにする。


「兄者もう寝どこの準備はすんでいるでござるよ」


 こちらで話をしているうちに向こうでは作業を再開し完成までさせてくれたようだ。

 ここで火をおこせないのは先の話でなんとなく察しているため、残りわずかとなった乾パンと道中に焼いて置いた食料で夕食にする。


「そう言えば森に居る動物とかを殺すのって可能なのか?」


 寂しくなってきた食事にそんな感想を抱く。

 森の生きるものを食すって事は、この森の主である龍は自分の所有物を侵されたと思われるのではないのか?


「その心配はない。そこらに落ちている小枝や葉も同じく、わしらの前に現れるということは、わしらに授ける、与えてもいいという存在じゃ」


 思って居たより緩いな、もっと出てくる生物からも逃げで殺さぬようにしなければいけないのかとそんな風に思って居たんだが、思いのほか龍と言うのは優しいらしい。

 そんな感想を抱く俺に知ってか知らずか続きを語るコロネ。


「だが出てくる生物はそこらに居るモンスターとは桁違いに強い」


 ……


「ちょっと待て、そんなの俺たちでどうにかなるのか?」


 俺たちの戦力と呼べるのはヴァインズと後月のみだ。

 そんな少数精鋭と言えば聞こえはいいがただの人手不足の俺たちに、どうすれば勝てるというのだろう?


「なら戦わなければいい」


 そう言うのはヴァインズ。

 もっともだがそれでは食うのにこまる。

 食うのに困れば後々生命の危機に立たされることになる。先の事を考えれば少し危険を侵してでもモンスターに挑み、食料を得ることになる。


 そうなると少しでも危険を減らすための努力を行わなければならない。

 ただ逃げ隠れするだけならローリェの魔法で事足りると思う、だがそれを戦闘に生かすとなると簡単な話では無くなる。


 近くに忍び寄り仕留める、そう言葉にすれば簡単だが、実際はそんなに簡単じゃない。

 相手の情報がないということはそれだけで危険だ。


 相手がどのような特徴を持っているかで戦闘は変わってくる。

 姿が見えずとも蛇の様に温度で察知する相手なら姿を隠しても意味がない。

 また犬以上に鼻の良い相手ならどれだけ遠くに居ても嗅ぎ分けられ、今こうして食事をしている時もどこからか俺らを狙って居る可能性も出てくる。


 色々考えてると不安ばかりが先にたつ。


「考え事ばかりを行っても仕方あるまい、先のことなど分からんのじゃから」

「先の事はなるようにしかならない」

「ユウヤ皆で考えればきっといい結果が出るよ?」

「兄者拙者も無い知恵絞って考えるのに協力するでござる」


 考え事に夢中で周りの事を見て居なかった。声には出していないので、彼らに不安が伝わったのだ。

 表情に出ていたことになる、周りに伝染しない様少しは周りの事を気にしなくてはならないな。そう思うと同時に皆の言うように、この面子なら何とかなる気がする。


「今日は取りあえず寝るか」


 もう日も暮れ明かりはない。

 食事は終えており寝どこの準備は済んでいる、火を焚けば自分の位置を知らせてるようなものだということから準備の済んだ寝どこに着く。


 床と言っても落ち葉を集めた程度の簡単なベットの様なもの。

 横になると地面の硬さと冷たさを直に味わう。だが緊張やら心配やらで火照りかけ散る体にはちょうどいい。

 吹く風は少し暖かく地面の冷たさと合いまり眠気を誘う。

 体に葉をかけようとも思ったが、寝返りをすれば落ちることから下に引くのみに止める。


 それに野宿と言うのに慣れて居ないから少し楽しい。この木々の向こうに広がる空には綺麗な星々が輝いているのだと考えると少し惜しい気もする。

 状況を考えず不謹慎極まりない考えが口に出て居ないことを幸いに思い。眠ろうとする


「なんだか楽しいね」


 横からそんな声が聞こえる、姿は見えず誰がどこに寝たのか分からないがこの声を間違える訳はなく


「あぁそうだな」


 自分と同じ思いを抱いてくれたものが居たそう思うだけで嬉しい。

 嬉しさが声に乗り思いのほか大きくなってしまった。


「二人とも不謹慎じゃぞ」


 少し離れたところから聞こえる声には言葉以上に笑いを含んでおり、怒って居ないことは直ぐに分かった。


「そういうお前の声も楽しそうだぞ?」


 からかい半分で言うと物音が聞こえる図星だったのだろうと思う。彼女が今怒りをぶちまけにこちらに来ることは不可能なので存分に楽しむ。


「楽しそうで良かったでござる」


 コロネの方が彼に近い位置に居るらしい彼は一人保護者みたいな意見を言う。

 そんな彼に


「お前は楽しくないのか?」


 少し離れたところからの意見に寂しさを感じていると


「兄者そんなことは無いでござる。某も楽しいでござるよ」


 と即否定にかかる彼に笑いを零す面々

 先程から会話に入ってこなく笑いもこぼさないやつがいる。

 周りの事を警戒してくれているのか、状況を考えろと怒っているのか全く分からない。


「ヴァインズはどう思うんだ?」


 そんな彼に声をかけて見る。おしゃべりなどしてたらモンスターが来てしまうよ?

 くらい言ってくるかと思ったが


「……」


 返事はない。もしかして寝てしまったのか?

 そんな疑問を抱くが彼が寝てしまているのなら、彼らしい。

 さっさと寝て休息を取るのが今最善の行いなのだろうから。


「おしゃべりはお終い。俺らも寝るか」


「そうね」

「兄者おやすみでござる」

「ようやく静かになるわい」


 少し寂しそうに言うコロネの声音、俺の勘違いか当たっているのか分からない。

 他の二人は十分楽しんだのか大人しくなる。


 最後にもう一度空を眺める。

 見えない夜空、木々に苛まれだが空に煌めくまばゆい空。

 今度はその綺麗な空を眺めながら安全にしゃべれる状況で野営を張りたいもんだ。

 そんな気持ちを胸に抱き眠りにつく。


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