第六章1話 旅路
昨夜の一件がありあまり寝つきが良くなかったが寝ることには成功し、睡眠がバッチリ取れたかどうか少しどころかかなりの心配を残している状態で朝起きた。
起きたというより起こされたのだ相部屋の二人に。
二度寝を決め込もうとしても、相手が二人がかりでは抵抗むなしくあえなく惨敗。
抵抗する前から配線は目に見えて居たのだが、抵抗してしまい労力の無駄遣いをした。
そんなもう少し寝て居たかった俺を起こしたのは旅支度のための買い物にあった。
昨日皆で話した内容から特に用意が必要なものが防寒具とのことで調達するものは決まっている、食料と服の二つ。
食料はないと困るどころか旅にならないので必須、服も凍えることを考えれば必要だろう。
だが一つ問題が起きた
「ここの環境で冬服を所望するのが間違いだよなぁ」
そうなにも考えて居なかったが、ここは砂漠のど真ん中。そんなところで厚手の服なんて誰が買うというのか?
暖かい気候で厚着をするやつは普通居ない、それを失念していた。
売って居るものは皆布面積が少なく露出が高い物ばかり、それ以外となると薄手でスケスケの様な物。
誰がこんなものを着るのか不思議で仕方ないが、数軒回っても結果は同じ。そのことから他の店も同様の品ぞろえで有ると考えるとこの町では服の調達は諦めた方が良さそうだ。
「今さらだが、誰か保温系の魔法とか持ってないのか?」
保温の魔法があるかどうか知らないし有ったとしても知名度的に二人とも使えない気がする。
でももし魔法自体が存在し、彼らが使えるのであれば問題がなくなる。
「私は何かを身に纏うことのできる魔法は使えるけど保温は出来ないかな」
「僕は火をおこすことは出来でも高温すぎて人に当てると消し炭に」
「ヴァインズ調節とかできないのか?」
「そうだね出来たとしてもやっぱり火傷は免れないレベルの火力になるかな」
火力の調節なしにはなった場合最大火力じゃ無い場合でも、彼の言う程の火力があるのなら使用は論外。
火力を抑えても火を焚くことは可能でも人に向ける使用すると暖かいのではなく、火傷レベルの火力は保持しており人に向けて使うと調節してもしなくても、結果は変わらず怪我は免れない。
彼の火力は戦闘では大変心強いが日常生活に使用するには不便極まりない。
彼の調節能力が低いのか最大限調節しても最低守る力の様なものが人によって定められているのか……と関係ないことを考えても仕方ない。
ローリェは何かを纏うことのできる魔法は使用できるがその魔法自体に保温機能はない……
ちょっとまて?
「ローリェその魔法って何でも纏うことは出来るのか?」
「何でもって? 大抵のものは纏えると思うけど……」
「熱気とか……」
「熱気自体は纏ったことがないから分からないけど、空気は纏ったことがあるから確証はないけどおそらく纏えると思うけど……」
てことはこれで保温は完璧じゃないのか?
二人の魔法を使えば別に冬服なんてなくてもある程度はイケるんじゃないのか?
正直空気の壁を身に纏うだけで温度の壁とかどうにでもなりそうな気もするのだが……
「熱気がまとえるなら、ここで服を買うのではなく枯れ木や落ち葉の様な燃えやすいものを買えばいい」
「それなら買わずともそこら辺に落ちておるじゃろうが」
その発言を聞き、辺りを見回すが少なくともこの通りには落ちて居ない。
落ち葉などなく綺麗なブロックが並んでいる、塵くらいはあるだろうが目に見える大きさのごみや汚れなどは見当たらない。彼女は何を言っているのだろう、と首を傾げようとしたところ。
「ぬしさま何とおりなど見回して居る? わしが言ったのは道中のことじゃ」
そう言う彼女の瞳には冷徹で凍てつくような瞳でこちらを見ており、口元はうっすら笑っているが苦笑や冷笑の類の物。
今回は確実にコロネの言葉足らずだが、口論になると今日中には旅立てなくなる、そう思い、コロネの言っていた道中を思い返す。
正直半分以上おかしくなっていたので、あまり詳細な部分は思いだせないが葉っぱは無かった気がするが、枯れ木の様な棒は言われてみれば落ちて居た気もするが……
「兄者そんなものどうするのだ?」
うっすら気づいている様子のヴァインズ、コロネ。さっぱりわからんと頭の上にクエッションマークを浮かべているローリェと後月。
綺麗に分かれた二チームだが、別に難しい事何て何もない。
そうただ
「簡単なことだ。火をおこすそれだけ」
「火をおこす? それで……!」
「熱気を体に纏うって事ね?」
一人の魔法でどうにもできないのであれば二人、二人で出来なければ三人と出来ることを寄せ集めれば大抵のことは何とかなる。ただ複数人集まって居ても同じことしかデカいない場合や、人手不足の場合はどうしようもない。
だがローリェは他の人に出来ないことが出来る。これはかなりのアドバンテージになり、ヴァインズも長けた能力に翻弄されず操ることが出来ている、この二人がいれば大抵のことは何とかなる。はず……
先ほどまでの疑問符を頭の上に浮かべていた二人は理解でき、謎が解けたおかげで憑き物が落ちたような晴れ晴れとした顔を見せる。
二人は感情に素直だなぁと思うと
「それはいいと思うが、そうなると熱気でも相当な火力になると思うのだが?」
「そうじゃ、それにそれなら火をおこす機械を買った方が良かろう?」
二人の意見はごもっともだ、熱量を一人でぶつけるとなると結局は同じこと。それどころか木を燃やしてる分最低出力より多少は上乗せされる。
その熱気をぶつけるには火傷で収まらなくなる。
「熱気に関しては何とかなる気がするんだ、一度火をおこしその熱気を一人に押し付けるのではなく分散すればいい。空気としてまとうのなら分散も出来ると思うんだ」
何かに火を移すことによりヴァインズの疲労も抑えられ、操るローリェも少しは楽だと思う。だがこれはローリェが複数に分散することが前提の提案。
そうのため確認のために顔を向けると
「今までは私一人にしか使ったことなかったけどたぶんできるわ」
と本人の太鼓判も押してもらったことだし、この案は採用の流れになり。
「なら問題ない」
「わしも特に異はない」
「流石兄者」
と皆の承諾を得ることで服の一件は解決した、残る目的は一つこれは目的と言うか生きて行くために必要となる食料。
旅の途中に狩ればいいと思う気持ちもあるが水や食料はあって困ることは少ない。
あり過ぎると困るが、無いのが一番困る。
実際ここに来る途中にそのせいで二人がダウンした。
一度した過ちを再度行うのはバカのすることだ、同じ轍を二度踏まないためには……
「有り金全部使って買うか」
決断するのは早く、反対意見も出なかった。
事実目的としていた商品の半分はなくもう半分に金を使うことになるのは必然。それになかった商品は代用として二人の魔法を駆使して何とかなりそうなことが判明。
そうなると誰も反対する理由はない。
「だが有り金全部使っていいのか?」
誰も反対しないし俺も自分の決断の速さ以外は思うところはない。
間違って居ないと思って居るが、少しは残しておいた方が良いのでは? と思いが拭えない。
「大丈夫よ、それに中途半端にお金を持っていて食料不足でまたリタイアするよりは惜しまず使って、後でお金を増やす方法考えた方が良いんじゃない?」
「ぬしさま、そんなに気にする必要はない。それにこれからは簡単に町にはいかんだろ?」
町に訪れることは簡単だが、取りあえずは今回の龍同様辺境に居るモンスターをメインに仲間にすることになるだろう、そうなると町によっているとその分遠回りになったり、町に災難が振りかかったりと良いことは無い。
「お金くらいモンスター退治した後の戦利品でも売ればいいじゃないか」
「兄者戦利品の良い売り場を某知っているでござるよ」
彼らが経験したのなら、モンスターの戦利品は金になるのだろう。正直可能であればドワーフなどの亜人を仲間にして戦利品も活用していきたい。
魔法があると言っても魔法は全人類が使用可能というわけではない、魔法が使えない人様にモンスターの素材は良い材料になるということなのだろう。
「なら金は惜しまず使えるな」
使用するしか選択肢はなく、それに反対する者もおらず、自身でもその選択が最善だと思っておりながらも金がなくなると、心細くなる。なんとまぁ優柔不断なことだ
向こうの世界では金がすべてだったからなぁ……
「じゃぁ手分けして買い物しましょ」
ローリェの掛け声で各々飲食物を買いに別れて行く。
考え事をいて居た俺は皆に忘れされ話によって居なかったせいで買い物の分担は任されて居ない
「俺は……」
チェックアウトでもしてバッシュを連れて行くとするか……。
あいつ俺にあんまりなついていないように思ったのだが、俺で大丈夫なんだろうか?
そんな疑問を抱きつつ任されて居ないが役割がないせいで、することがなく今できることを行う。
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チェックアウトは難なく終わった、元々宿泊は四日の予定、今日で四日目、金の返金や追加で払うことは無い。
持ち物も各々片付けて出て行っているので忘れ物はなく、部屋に帰って確認することもなかった。
後はバッシュだが……
「バッシュ?」
「バウッ」
いきなり襲い掛かって来るということは無く、馬小屋に居る巨大な犬。明らかに場違いだ、周りに居る馬は皆ビビっている。
がいようにデカい異質な生物が一匹いるにもかかわらず大人しいせいか、ビビって居ない馬もいる。
「バッシュもう行くぞ」
そう言い引っ張っていく。途中で馬車も繋ぐが繋ぎ方が分からず苦労した。
「バッシュ皆遅いな」
「バウ」
大人しくなった犬に違和感を感じざるを得ないが、襲い掛かってこないことは良いこと。
取りあえず皆の帰りを店先で待っている。
「兄者戻ったでござる」
一番最初に帰って来たのは後月、彼は水を買いに行っており両肩には樽を担いでいる。二つの樽を見るに相当な量があると思われるのに最初に帰ってくるというのは流石というかなんというか……
「ご苦労さん、馬車はあるから積んでくれ」
正直俺も手伝いたい気持ちは少なからずある。だが俺が割って入ると手伝いではなく邪魔になるのは目に見えて居るので、後月任せで悪いと思いながら手助けはしない。
「兄者終わったでござる」
案の定直ぐに積み終わるりこちらに顔を出しにくる後月。
「悪いけどローリェのところに手伝いに行ってくれないか?」
「良いでござるが兄者が行かなくていいのでござるか?」
「あぁ、俺より力の有るお前の方が助けになるだろ」
「そうでござるか……なら行くでござる」
正直俺が行きたいそんな気持ちで胸の中一杯だが行ったとして二人になる、そうなると昨夜のことを思いだしてまともに話せる気がしない。
皆と居る間は多少平常運転で行けて居ると思うが、二人になると不可能に違いない。
少し残念に思いながらも皆の帰りを待つことにする。
そんなことを考えて居ると後月が通りに消え間もなく次なる人物のお帰り。
「コロネ」
「なんじゃぬしさま一人か? てっきりあのでっかいのがいるかと思ったのだが」
この幼女も俺がローリェの下に向かったと思って居たのだろう、何故幼女と言い彼と言い、俺たちを二人にしたがるんだ?
「でお前はもういいのか?」
彼女は手に何も持っていない。買い物をしていないのだ、彼女の担当は買い物ではなかった。彼女は最初に巻いた小銭の収集に向かっていた、その結果は
「あぁ、だがあまり良い情報は出なんだ」
その表情声音を元に彼女の発言は嘘や冗談ではなく、本心らしい。彼女は自分の成果がなかったことに悪く思ったのか顔を伏せ申し訳なさそうにしている。
少し期待はしていたが、そんなものだろうと割り切っていると
「ぬしさまは何も思わぬのか?」
「どういう意味だ?」
「初めは貴重だったお金を使用してまで情報収取に役立たせようとしたのに結果はゼロ。ぬしさまなは怒ると思ったのじゃが」
自分の申し訳なさを軽くするために怒りをぶつけて欲しかったのか、そんなことを言いだすコロネ。
顔を伏せがちにそんなことを言う幼女を怒れると思うのだろうか? それともそこまで俺は鬼畜だとこの幼女には見えて居るのだろうか?
「怒らねぇよ、それにそんなに簡単に情報が手に入ることはないだろうと思って居た」
数日でいい情報を手に入れたければ情報を買わねばならない。そこらへんにいる人に聞く程度の情報なら正直数日じゃ良いのは手に入らないのは目に見えて居た。
だからこれは布石。
またこの町によった時はあの名も知らぬおっちゃんと、館の受付嬢後は露店の少々の人物に顔を覚えてもらって居れば底から情報が手に入るかもしれない、その程度でいいと今は思って居る。
「そんなこと気にするな」
そう言うと彼女は意外なものを見たかのように、瞳は大きく開き気を抜くと口まで開きそうな勢いの顔でこちらを見る。
そんなに驚いてはカワイイ顔が台無しだと思う反面、なぜそこまで驚くと疑問を抱く。
「そんなに驚くことか?」
「ぬしさまなら一言二言小言を言うかと思っておったのじゃ」
確かにそこは自分でも不思議だ、コロネの表情を見る前から怒りを抱いていなかった。
構わないと思って居たのだ。これから危険にさらす人物に怒りなど抱くのもおかしな話だし。
「自分でも何故か分からないが怒りが湧いてこない、だから気にするな気持ち悪かってもそんなもんだったと割り切ってくれ」
向こうは煮え切らないと何かを言いたそうにするが次なる人物の帰還に気づき、口にしかけて居た言葉を飲み込み黙ってしまった。
「やぁ君がいるとは意外だったね」
三人目の人物はヴァインズ。
彼はカンパン的な保存食を調達してもらう予定だった。その両手にはレジ袋サイズの袋に入ったパンのようなものがあることから入手事態には成功したようだ。
「僕は疲れたよ荷台で休ませてもらうね」
そう言って戦果の食料を荷台に積むと同時に休息に入る模様、愛犬に一瞥もくれないのは数日一緒に居たからなのか?
分かららないが聞きたくともすでに姿がない。
残りは二人、ヴァインズが帰って来たのならもうすぐ
「ユウヤー」
そう言って声を上げてこっちに向かってくるのはクリーム色の髪が光を反射させ愛らしい瞳と主立ちは肌の白さと相まって異様な魅力を放つ昨夜付き合うことになった俺の彼女。
「ローリェ」
彼女は大声で呼ぶが道行く人物は無関心、それでも呼ばれる方の身になると恥ずかしくて死にたい
「兄者」
持ち物は後月の方がもっており、加工のされた肉やら魚が少々。加工といっても日持ちする加工ではなく、魔法で強引に日持ちをするようにされた食料。
だがこれがないとカンパンと水の身では栄養失調でまたしてもダウンしてしまう。
「あまり買えなかったわ」
そう言う彼女は荷物を持って居ないが後月の方を見ると確かに量は多くない。
ヴァインズが持ってきたレジ袋二つを見たせいか彼の持っている袋が小さく見える。
ヴァインズが持ってたのがLサイズのレジ袋二つだとすると彼がもっているのはSサイズ一つこの差は魔法の有無にも関係あると思うがただ単にカンパンと肉や魚の物価の違いもあるだろう。
グラム100円と200円だと買える量が変わってくるのと同じだ。
「気にするな十分だ」
元々肉はモンスターの肉を食ってつなぐことも出来るので砂漠を抜けるまでの間の食いつなぐ分くらいにしか考えて居なかったのだ。
その分が確保できればそれほど困らない。
「さぁ皆帰って来たし、支度も済んだ。町を出て西に向かうか」
これより新たな旅が始まる。
荒く険しい茨の道。仲間を巻き込みさらに新たに加える仲間すらも巻き込み危険にさらし、それでも自分が生き抜くため、自分に災いが振りかかるよう調整するという大義名分を背負ったといい訳を作り周りを巻き込む。
そんなことを誰が許す? 仲間か? 神か? 召喚者か? 誰が許そうと俺は許さない。どんなお題目があろうと、大切な人を危険にさらすのはしてはいけない。だがそれを乗り越えられると信じることでいい訳を作る。
逃げるのではなく、目を反らすのではなく、背負う覚悟はあるが棚に上げるために。
すべてが終わったらまた向き合えばいい。迷惑をかけた人には詫びを入れ感謝の意を伝え、困って居たら手伝えばいい。
そうして振りまいた迷惑につり合わないまでも助けることで少しは恩返しが出来る。
勝手な自己満足誰も望んでいなく自分のためのおこない。
だが気にしない。
それが俺だから。




