第五章11話 予言
インチキ占い師と思っていた中に、俺の恩人であるばぁさんがいた。
このばぁさんも占いなんかして、人から金を巻き上げているなんて思えない、実際この地に来た理由も何やら不穏なことを察知してとか言っていた、なら本当に予言が出来るのではないのか?
何より助けてくれた人を疑うのは少々どころか心が痛む。
「ば、シヴィはここで何を?」
名前で呼ばすばぁさんと呼ぼうとしたのを察知してか睨まれ、ビビっては居ないが引いてやり名前で呼ぶ。
「馬車の中で言ったであろうここに来た目的を。その目的を達成するために、ここにならんでおる、者たちに紛れ商売目当ての人物が来るのを待っておる」
やはりそのためかでも、あの時は漠然としたことしか言ってなかった気がするが、今の口ぶりだと人だということは確定しているらしい。
何を起こすにしても大抵人が関わっているので、人と接触しその人を占うことで結果
漠然とした占いの明瞭な光をともすことが出来る。
という遠回りな道なのか、それとも昨日今日と何か収穫があったのか分からないが。
とにかく彼女の邪魔をするのは悪い、それより関わりたくない。
不幸なことになるのなら関わらない方が吉だし、それとは関係なく俺は胡散臭い者が嫌いだ。
この世界で魔法を知り、少しは現実味のないことを信じようと思えたが、それでも幽霊だの占いだのは信用するに値しない。
「じゃあなシヴィ、手がかりになるようなことを俺も聞いたらここに来るよ」
「どうじゃユー坊占っていかんか? 代金は要らん元々金のためにしてるんじゃないからの」
この場からさっさと帰ろうとしているのに引き止めるばばぁ。
俺はこんな胡散臭い者に付き合うつもりは微塵もないのに、そんな事言われたら遠慮しとくと帰る訳にもいかんだろう。
「正直占いなんて信じてないが、シヴィがそう言うなら一発占って貰うかな」
好意に甘える訳ではないが、断った方が面倒だと思い一応受けてやることにする。当たろうが当たらなかろうが、話半分に聞けばいい占いとは大抵そんなもんだ。
自分に良いことは聞き、悪いことは流す。当たれば凄いと思うが占いの大半は当たり障りのない事を言う。
万人に当てはまるようなことを適当に言って金をまきあげるなど詐欺以外の何物でもない。
「ユー坊は占いを信じちゃいないのか?」
「正直言ってそうだな」
「それは前居た世界と関係あるのか?」
……今なんて言った? 前居た世界。前居た背かいって言うのは日本の。この世界と違うあっちの世界のことを指しているのか?
流石にこればっかりは当てずっぽで言えることではない。
「何のことだ?」
平静を装うが虚をつかれたので表情やら態度やらでばれて居ると思う。
それでも虚勢と言われようが知らぬ存ぜぬを通す。そうすれば相手の言ってることが占いか適当に言ったホラか分かる。
だが普通に考えお前異世界人だろ? なんて相手の素性を知らなければ痛い人認定されるのでしないと思うのだが……
「知らぬ存ぜぬで通すのならそれも良かろう。ならこの主が居たのは沢山の高い建物があり人が群れを作り暮らしている鉄の町か?」
鉄の町……これもまた抽象的だが明らかに俺の居た町を指している
「こちらと違い鉄の馬車が走っておるなしかも速度もこちらとはけた違いに出ておる、鉄を空や海に浮かべ飛ばししておる、これはどうやっておるのじゃ?」
ここまで言われれば疑いようがなくなってしまう。彼女は本当に俺の居た町の事を知っている、占いで見たのかそれとも魔法なんかの力で見たのかは分からないがそんな些細なことは今どうでも良い。
「どうして俺の居た町の事が分かる?」
「素直じゃないか、もう降参か?」
ここまで向こうの世界の事を言われ、魔法があるこの世界で空飛ぶ鉄の塊を作るようなことはしないだろう。
それに虚勢を作ろえなくなった時点でこちらの敗北は喫している。
何に勝ち何に負けるのか曖昧なただの維持のようなものな気がするが
「あぁ降参だ、どれくらい見えるんだ?」
「ユー坊の事なら大抵のことは」
俺の事なら大抵……引っかかるものの言い方をする、それじゃぁ人によって見えやすい見えにくいが有るみたいじゃないか。
「ユー坊の思っている通り人によって見え方が違う。ユー坊は素直で優しい子じゃ、そう言った純粋な赤子の様な者はたいてい見える、じゃが逆に醜く汚い人間は見えにくい」
ちょ、ちょっと待て
「つまりは人の事を疑ってかかる人間は見えにくき信じる人間は見えやすいと言った感じじゃな」
すげぇ分かりやすいがさっきから何か違和感がある。そう俺は先程から口に出していない。なのに何故このばばぁは俺と対話しているようにすらすら話している?
これじゃまるで心が
「そう読める、じゃが今思っている思考を完全トレースすることは出来ない。先ほど言ったような人を信じれる人間だからと言って心を読むことは出来ぬ。なぜなら人を信じる信じないにかかわらず心で感じていることは移ろいやすい」
ならなんでこのばぁさんには読めるんだ、俺の心が
「読むのはむつかしいじゃは靄の上からでも想像することは出来る。だからこうやって会話を行えるのじゃ」
……要は考えは変わるので靄がかかりはっきりとは分からない、だが経験してきた時間は変わりようがないので明瞭に見えるということか?
「なんとなく分かった」
ならいつから見えて居た。俺がここに来てからか? それとも
「ユー坊主を診てやった時からじゃ、ただあの時は占いではなく診ていただけじゃ、今ほど明瞭には見えなかったがの」
このババアは一体何者なんだ? 信用してもいいのだろうか?
「そんな訳じゃそこに早よ座れ」
先ほどまでと違い心を読み会話するのではなく自分の意見を押し付けてくる。
そこと言われた先には小さなイスがある他の店と同じく小さな机に小さなイス、あまりに胡散臭いが言われるがまま座る。
「で、何を見てくれるんだ?」
「先程言ったであろう目的の人物を探していると、それが主なんじゃ」
……は?
人の心が読めるだとか、過去の体験を言い当てられ本当に占いがぞんざいするのかと思って居たらこのババア耄碌しているのか?
「何言って」
「主がこの世界に来た理由は分からんいや、もしかしたらないのかもしれない。ただ単にたまたま運が悪くそんな偶然かもしれない。だがこの世界に着てしまったがゆえに主は使命の様な不運を背負ってしまった」
何やら語りだすババア途中で遮ろうとするがそれも叶わず続きを話しだす
「その不運とは災いをその身に引きよせる体質になってしまったということじゃ」
……なに言いだしてるんだ?
「主にも身に覚えがあろう、こちらに来て経験した数々の苦難」
確かにこちらに来て初日に大型モンスターと遭遇などゲームだと、ゲームオーバー回避不可のイベント。
まだ遭遇だけなら可能かもしれないだが、俺らがしたのは討伐だ。普通ならレベル一の冒険者が狩るのは同じくレベル一の雑魚モンスターのはず。
その後も同じような経験を一度、その後人数差で敗北確実の死地まで行った。最後のは自分から首を突っ込んだのだが、それまで運命で定められていたとでも言うのか?
「主は今後同じような災いをその矮小な身に引きよせる。その身に余る災いは周りを巻き込み果ては世界をも巻き込むだろう。わしがこの地に導かれたのは主と合うため、そしてその身に余る災いをなくすためじゃ」
え? 今の言い方だと俺の身に宿った呪いを打ち消してくれるって事何じゃないのか?
「じゃぁもしかした俺これからは普通に生きれるのか? ばぁさんに祓ってもらったら俺は普通に」
「それは無理じゃ」
淡い期待だった。
即座に否定されうなだれるしかない。先刻までの俺なら荒唐無稽なこんな話聞く耳すら持たなかったはずなのに、凄い変わりようだと自分でも少し不思議に感じる。
まぁ昔の町の話をされれば多少は信じようって気になってもおかしくはないのかもしれないが。
「主の体質を祓うことは出来ぬじゃが、主に天啓を示すことは出来る」
このばばぁは神にでもなったつもりか? 聖女ではなくただのばばぁのくせに偉そうに。
「主は今後生きて行くにあたって仲間を集める必要がある」
仲間を集める? そんな事したって俺の体質のせいでその新たに加わる仲間も、今の仲間も不幸になるじゃないか。
「新たに加わる仲間もそうじゃが、今共に居る仲間も危険にさらすことになる」
言わんこっちゃない
「だがそれでも主は生きるためにその者たちと共に居なくてはならない。時に一人の方が良いと思う時も来るじゃろう、時に悲しみに暮れ自害したくなる時もあるじゃろう、じゃがそれでも生きるのじゃ友を仲間を信じて」
何を言っている? そんな事できるわけ
「周りの力に頼り周りに助けられそれでも生きて生き抜くのじゃ、そうせねば主の愛したものは悲しみに暮れる」
……へ?
「主は弱いが仲間は強い、助けられ助けを求め、意地汚く生きよ」
このババアさっきなんて言った?
「だから主よ共に来てくれる者と一緒に精一杯生きよ主の仲間は誰にも負けない強さを持つものばかりじゃ」
話は終わりとばかりにババアは店を片付けどこかに立ち去ろうとする。
「こらババア適当抜かすのはいいがちょっと待て」
呼び止められるシヴィは何か言いたそうにしているが彼女が何か言う前にこちらが言いたいことをぶつける。
「言いたいことは分かった、今のお前のそぶりを見るに質問しても答えてくれそうにないのもなんとなく分かる。だがせめて一つくらいヒントをくれ。俺は、俺たちはどこに向かえばいい?」
仲間を巻き込む心配を考えるとババアの言葉に従わず一人でどこかに身を隠せばいい、だが彼女の言う事が確かなら俺が逃げるだけの生活を行えばこの世界は混沌に包まれる。
俺が死ねば彼女は悲しんでくれるだろう、だがそれ以上に彼女たちの危険は俺をむしばみ苦しめる。
一人で孤独にと言うのが一番楽で一番幸せな道な気がしてならないしかしこのババアは友を、仲間を信じよと言った。
これで俺が隠れれば彼らを仲間を信じて居ないことになる、それだけはどう言いつくろっても変わらない事実。
いくら彼女等を危険に巻き込みたくない、昨日今日会った老婆の言う事に耳を傾け仲間を危険にさらしたくない。
そんな言い訳をいくら積み重ねても変わらぬ事実となる。
それに俺が信じず雲隠れする可能性を見越しての発言ではない気がする。確証がある訳じゃない。それでも俺に一番できないことをしろと言った。
大切で守りたい仲間と知って居て巻き込めと言った、なら何か意味があるはず。そうでなければ天啓とまで言うわけはない。
ただ単に信じたいそう言った願望かもしれない。
でも俺は目の前に居るババアを信じる。
なぜか信じたく思う。
「そうじゃな、西ここよりはるか西にある山を訪れればよかろう。そこに居る龍を仲間にすればいい、後は仲間を増やす旅をするとおのずといい結果が付いてくるであろう」
西にしに行けばいいんだな。
最初は信じるつもりのなかった占い、過去の事を言い当てられ信じるきになった。きっかけはそれだったが今はそれ以外に何か分からないが信じていいと、心の底からそんな気持ちが湧き上がってくる。
「ありがとう今から帰って皆に言ってくる。またどこかで会えると言いな」
そう言い館に走り出す振り返ることはせずただ前を見て走る。
「ユー坊そうそれで良い主はようやく来たわしらの希望。この世界を救っておくれ」
振り返らず前を見て走っていた彼には気づくことは出来なかった後ろでそう語る老婆の微笑みと消え入る声、そして消えてしまった姿。
彼はこの老婆との出会いをきっかけに新たな嵐の中に自分から身を突っ込んで行く、それが唯一の自分と仲間を守る選択だと信じ。
彼女の言葉を信じて。
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皆はもう宿に戻っているだろうか? 彼らはどう思うだろう? 俺がおかしくなったと心配するだろうか?
それとも必死さが伝わり納得できなくともついて来てくれるだろうか?
宿に戻るまでの数分が長く感じられ、心配事が頭の中をかき回す。
日も暮れてきたし皆もう部屋に居る可能性が高い。そう思い玄関口をけ破る勢いで中に入ると
「どうしたんじゃぬしさまよ、血相変えて」
「ユウヤどうしたの? 何かあった?」
「兄者ど、どうされた?」
「騒々しい人だね君は、少し落ち着きたまえ」
部屋に向かおうと走って通り過ぎようとしたエントランス。そこに群がる四人の人物。
何故ここに居るのかたまたま皆同時刻に帰ってきここで話していただけなのか。理由は分からないが。
目的の人物に合うことが出来た。




