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俺みたいなダメ人間でもやればできると信じたい  作者: 富田雄也
第五章 のんびりする一行
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第五章8話 朝風呂

 目が覚めると懐かしい匂いに包まれて居ることに気が付く。

 夢現の中飛び起きると、そこは犬の尻尾館の一室で有ることに気づく。懐かしい香りは畳の匂い、綺麗に整備されているはずの和室にかすかに香るかび臭さ。

 自分の部屋に照らし合わせて勝手に感じた匂いかもしれないが、先程は自室と間違え驚いたくらい。


「後月は……」


 まだ横で眠っている、外を見ると日が出たくらい。

 いつもの俺ならまだ寝て居る時間である。こんな時間に起きるのはやはり、和室から漂う馴染みのある向こうの世界を照らし合わせたゆえか。


「流石に寝れないな」


 すっかり目が冴えてしまったが故に二度寝を決め込もうにも寝付く自信がない。

 昨日せっかく入った風呂ものぼせたせいで、汗を新たにかきそのまま気持ち悪さを残して寝たことを思いだし、風呂に入りに行くことにする。


「書き置きをしておかなくては後月に心配をかけるな……」


 向こうの字で書くから彼女たちが見ても分からないと思うが、彼女たちも勝手にこの部屋に入ってこないだろう。


「書き置きも済ませたし風呂に入りに行くか」


 部屋の鍵を持ちそぉっと扉を開け外に出る。

 外に出ると奇遇なことに隣の部屋からも同じように部屋から抜け出す人物がいる。

 隣で寝て居る少女に気を使い俺と同じように、そぉっとでてくる彼女はそう


「ローリェ」

「ユウヤ」


 お互い驚きのあまり少し声を出してしまったが、こんな所で騒ぐと時間体関係なく他の客に迷惑になる。

 それに輪をかけて今の時間体は皆寝て居る、なら迷惑の掛かる比率が上がるのは日を見るより明らか、二人ともとっさに口に手を当てる。


 手を当てる前に名前を呼びあってしまった分は外にでてしまったが、それほど大きな声ではなかったがため良しとしよう。

 どの道今からでは後の祭りどうしようもないのだ。


「ローリェはなぜこんな朝早くに?」


「それは私も聞きたいけど、私はお風呂に入りに行こうかなと。早く目が覚めちゃったから書き置きだけして静かに出てきたの」


 考えることは皆同じか。


「俺も同じ理由、俺はほら昨日のぼせたからもう一度入ってさっぱりしたいなぁと」


 彼女と少し理由が違うだろうが、朝のこの時間体に起きてしまったらすることがなく時間を持て余るのは必然。考えも似通ってくるというわけか。


「一緒に行くか」


「そうね」


 二人きりになるのは彼女が落ちてきてからベンジャグに行くまでの数時間。こう考えてみるとこっちに来てからそれほど月日が経っていないはずなのに彼女に恋をしこの世界に留まる決心をしてしまうに至る。

 俺って適応力があるのだろうか? それともただのバカなのか?

 どちらにせよ、彼女と出会えていなければ俺はここにはいないだろうそう考えると、彼女との出会いは偶然ではあるが俺一人の命を助けてくれた。


 俺を召喚させたまだ見ぬ人物の計らいか、運命か偶然か、分からない。

 だが


「ユウヤ」


「う、うん?」


 彼女の言葉に思考を一時中断し、彼女の方を向く。

 彼女はどこか悲しそうで、申し訳なさそうな少し暗めの表情でこちらを見て居る。


「どうしたの? ローリェ」


「ユウヤが考え事してるようだったから、私と二人はつまらないのかと思って」


 彼女と二人がつまらない? そんな訳ない。それどころか久しぶりの二人の時間をどうしたらいいのか分からず少し緊張しているくらいだ。

 だからこそ、話をせず現実逃避気味に思考の波に身を任せ思い出に浸って時間を流そうとしていたんだ。


「そんなことない。いつも皆と居るから二人ってのが少し緊張して……」


「そう、それならよかったの」


 俺の言葉を聞き枯れかけのつぼみが一瞬にして花開かせ、興味もなく通り過ぎて行く人物すべての注目をさらってしまう。そんな急変ぶりに鼓動は高鳴り、緊張が飛躍する。


「やぁおはよぉ」


 二人の時間を邪魔する声に振り向くとそこには


「ヴ、ヴァインズ!」


 昨日風呂に行くときに抱いた違和感、何欠けている様な空虚感。その正体はもう一人の仲間、俺と同じく体調不良を理由に1日中眠りこけていたうちの守戦力。


 なぜ忘れていたのか自分でも不思議なくらいだが、それ以上に何故みんなも忘れていたのだろう?

 人の事を言える立場じゃないんで言及はしない。


「体調はどうだ?」


「もう元通りだよ」


 はにかむ彼に引きつる俺。きざったらしい彼の態度はあまりなれない。


「それなら良かった。あまり体調悪いやつを連れまわすのも悪いと思って、そのままにしてたんだが。少し心配でもあったんだ、あの場所で体力が回復するのかって」


 事実あまり動かすよりか涼しい場所なら馬小屋の方が良いと少し思ってもいた……

 だからきっと忘れてしまってたんだ、その方が良いという一つの案が頭の中によぎって居たから……


「お前も風呂どうだ? 1日は居ないと気持ち悪いだろ?」


「そうだね僕もお邪魔させてもらうよ」


 彼女は一言も口を挟まないまま、何とか丸く収まり3人で風呂を入りに行くことにする。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 風呂場に着くまで他愛もないお喋りをしたか、彼女は引け目を感じているのか少々物静かだった。


「ヴァインズは風呂に入ったことあるんだよな?」


 風呂に浸かりながらそんな質問をする


「変わった聞き方をするんだね」


 変わった物の聞き方をしたことは自分でも分かっていたが、短い付き合いだが濃度は濃いいと思っていたが


「まぁ温泉なら何度かね。旅をしている時この町にも寄ったことはあるし」


「悪いな俺も変わった質問だったと反省している」


 通じるなら別にいいだろ、と言えないのは自身で理解しているせいであろう。

 ただ俺と後月の様にあちらの世界の人以外はこっちの温泉になれているのか気になっただけなんだ。

 旅をしている彼や、コロネの様な人に聞くのは意味を成さない気もする。


 温泉があるのはこの町だけとはかぎらないのだから。


「そっかぁ、この町に来たことあるって言ってたけど修行か?」


 彼の旅のメインは修行のはずだが、日々鍛錬のみを行っていても身に着くものもつかない。そのための休養に来たのかと思ったのだが


「違う、人を探しによったんだ」


 鍛錬でも、急用でも無かった。

彼の顔に影が落ちたように感じたが


「雄也は?」


 次の発言の時には影は消え去りいつもの彼に戻っていたので、気のせいだと気持ちを切り替える。


「俺は昨日が初だ」


 事実向こうでもこっちでも昨日のが初体験、その初体験で俺はのぼせるという不甲斐ない結果に収まったのだが……


「そういやこの町以外にも温泉ってあるのか?」


 先程彼が言っていたこの町に立ち寄った理由。それを聞く限りじゃ、この町では温泉入って居ないと思われる。

 だが彼は温泉は入浴はしたことがあるという。どこか違う町で同じような温泉街があるのだろう。


「そうだねこの町では初めてだった。違う町で数回入ったことがあるね」


「その町での温泉もここと同じようなものだったのか?」


 他の町の事は少し気になる。

 誰がどこへどんな目的で歩を進めたのか、それは趣味に役立つ事なら身に入れるという習慣から発生した好奇心。


 実際俺はこの世界の事を知らない。旅をしていて詳しそうなコロネは最年少者なので聞きたくとも聞けない。それ以上に彼女に聞くことは何か感情的整理がつかん。


 そうなると情報源は彼のみなってしまう。

 後月は俺と同じく異世界人。同じく旅をしていたと思われるが、そう長くないと思うしこちらの人間じゃないからそこまで詳しくないだろう。


 彼女は村から出てそう多くない旅のすえ俺とあった、となるとそこまで他の町の事に詳しくない。


 そう思って聞いたのだが


「同じだったよ」


「他に何かないのか?」


「特には、それに観光で旅をしていたわけじゃないからね」


 背筋に何かが這いずる錯覚を抱く、そんな表情と声音。

 だが彼が言ったように観光で来ているなら別として、彼は行く町々に修行や休息探し物をする目的があった。

 なら周りに頓着を持たなかったのもうなずける。


 が先程の背筋を這うなにかの感触。錯覚だったが、彼からそこまでの気持ちをぶつけられた意味が理解できなかった。


「昨日のぼせたからそろそろ上がるわ、ヴァインズお前はどうする?」


 昨日と同じ轍を踏むわけにはいかず早々に上がることを選ぶが


「僕はもう少し入っておくよ」


 彼は浸かっておくことを選択したようだ。ここで彼とは別れる、部屋番を言い上がったら部屋に来るよう伝えては居るが後月が起きて居ない可能性も考慮し、静かに入ってきてくれとも付け加えて置いた。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「あれ?」


 のれんをくぐり外に出ると、何やら既視感。


「もしかして待っててくれたのか?」


 外に出ると今日は少し早めに上がったはずなのに、彼女がそこで立っていた。

 昨日と違うのは少し濡れた髪に上記した頬。滴る雫が肌に落ちていると言った数か所のみ。

 で明らかに違い俺が夢にまで見た風呂上がり。昨日は見れなかったが運よく今日は拝めた。


「さっき上がって来たところ、待ってたわけじゃないけど少し涼んでいたの」


 少し残念ではあるが、これはこれで良いかもしれん。

 ちょうど聞いてみたかったこともあるし。


「俺たちの旅に何か目的が必要だと思うんだ」


 歩きながらそう話を切り出すと、突然何を言いだしてるのだ? と言った疑問符を頭上に浮かべ、きょとんとした顔でこちらを向く。


「そう思った理由は、何もないただ単に生きるだけってのはつらいだけだ。だから目的を何か持たないといけないと思ったんだ」


 先ほどの表情が和らぎ疑問符が少し消えた気がする。


「そこで皆に目的を持って行動しようと言うつもりなんだが……君はどう思う?」


 彼女に最初に聞いたのは俺と繋がりが一番深いのは彼女だから。

 後月は同郷と言うことで聴きやすいが繋がりが一番短い。次に聞きやすいのは彼女、過ごした時間も長く話し易い相手。なら話すのは道理。


「確かにそうだわ。悪いことでも良いことでも、目標があった方が張り合いがあるものね」


 悪い意味はない方が良いとは思うが、生きる糧は人それぞれ確かにそう考えたら善悪関係なく糧は必用だ。

 それに善悪は個人個人の価値観で変わってくる。

 否定をする意味がないとは思っていても目標を定めることに対して、同意見を得られたことは少しうれしい。


「君ならどんな目標が良いと思う?」


 簡単すぎると張り合いがなく、難しすぎると挫折する可能性が高くなり安パイを取るなら……


「生計のことも考えるなら、店を出すのはどうかしら?」


 妥協点としてはまずます。

 他の案も欲しかったがこれで少なくとも俺の意見を認めてくれたという、自分への自信にもつながったからいいとしよう。


「そうだよね。現実味があり張り合いがある、この2つを兼ね備えるとなったらそう多くないもんな」


 彼女の意見を聞くことが出来たが、後月彼はどうだろう? 彼の事を悪くいうわけじゃないが彼は戦闘派だ。その彼に意見を聞いて答えが帰ってくるか……最悪彼は俺に任せるといい意見を言わないかもしれない。

 その点で言えばヴァインズ彼も賛同はしてくれても意見を言ってくれるかは分からない。というより意見を言わず、自分の信念と違えば離れて行くそんな気がする。


「お互い相方を起こさない様しなくてはね。ありがとう参考になったよ」


 意見をくれた礼を言い近づく部屋の扉に駆けよる。お互い出てきた時同様、中で眠る相方を起こさぬよう静かに扉を開ける。


「後月起きてたのね」


 静かに開けたが開けた先に待つのは寝てる後月ではなく、立っている後月。

 その姿を見てようやく思いだす。彼の朝は早い、いつもの俺より起きるのが早く何時に起きているのか分からない。

 たまたま彼より早く起きれていたから失念していたが、こうなる事は明白だった。

 彼を持っていてもそう時間に差はなかったはずだ。


「おはよう」


「おはようございます兄者、ですが書き置き……読みましたぞ、一人で入浴なさってはまた湯あたりの可能性が」


「俺を子供と勘違いしてるんじゃないだろうな? 流石に昨日の今日だそんなに長風呂なんてしない」


 流石に同じ轍を日を跨いだだけで踏むと思われているのであれば一言二言言わねばならん


「そうではありません、体調が万全でない時の心配を兄者は軽んじておられます。体調が悪くなられたら少しは気を付ける、それは平時の時に対しての危機意識を少々下げるだけでは足らないんです、平時で平気だったことが体力低下に伴い危険になる。それは世の常」


 俺を少々なめて居ないか? と少し怒り気味に言うつもりだったが


「だからこそ危機意識の大幅な低下や、周りを頼ること。これを怠ればさらなる危機につながるのです」


 なめていたのは俺の方だったようだ。

 彼は確かに戦闘派かもしれない。だがだからこそ、彼にしか分からないこともあるのだ。彼の言うとうりだ、今回の1件俺が少し早めに上がるそう決めた時間は平時。すなわち健康状態の時に対して、だが彼の言うとおり体力低下をしているとき低下している体力の分も、考慮して安パイを取らなければ余計に周りに負担をかけたり、自分の身を危険にさらすだけだったのだ。


「すまなかった、今後はその事を踏まえ気をつけるよ」


 彼はいつでも仲間の身を心配してくれる、そんな彼に心配をかけてばかりでは彼の身が持たない、そう考えると少しは自分の身に対しても気を配れそうな気がする。


「話を変えて悪いんだが、今後の事についてちょっといいか?」


 話を変えること事態に彼は反対をしなかった、俺が謝罪し反省していることをちゃんと受け止めてくれたのだ。

 そんな中、話を変えるのは悪いと思ったりもするがこの話は彼にも仕様としていたこと。

 気を使うなと彼も先ほど言ってくれたことだしその言葉に甘えることにする。

 内容は先程彼女に話した内容と同じ。


「そうでござるな」


 神妙にとまでは言わないが、眉間にしわを寄せる程度には真剣に考えてくれているようだ。


「目標の設定までは某は分からぬが、定める事自体は何ら問題ないと思うでござるよ?」


 おおかた予想道理の返答が帰ってきた。予想と違ったのは丸投げではなく自分で考えてくれているというとこ。

 彼は丸投げをするような人物でないことは分かっているのだが、どうしてかそう言った重要な話は俺に投げかけてくることが多い気がした。


「分かった目標を何にするかはどの道皆で話し合おうと思ってたんだ、日も開けてきたコロネも起きて居るだろうしヴァインズも上がってくるだろう。そろそろ飯でも食いに行こう」


 飯を食いながら喋ればいい、座って喋れるし皆集まる。


 彼を連れ部屋を出る。


掲げようとした目標、単に生きて行くための活力それだけを目的としていた。

それがあれ程大きくなるとまだ誰も知らない。


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