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俺みたいなダメ人間でもやればできると信じたい  作者: 富田雄也
第五章 のんびりする一行
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第五章6話 お風呂

先に行っておきます、女性陣のお風呂シーンは有りません。

今後番外編として書く予定ですがいつになるか……

あと最終日に駆け込みになり申し訳ないです。楽しんでもらえると嬉しいです

 風呂に向けて歩き出し、数分。目的地と定め目指していた、風呂場に到着する。

のれんがかかり男湯の方には青色で何か分からない文字書かれ。女湯の方は色が赤。色が違う以外に特に変わったところは無い。男湯同様書かれている文字は読めない。

 元々、こちらの字が読めない事は確認が取れているので、驚きはしないそれどころか、大きな文字で「ゆ」と書かれている方が驚くし、そうでなくて良かったとどこか安心している。


 今までと違い字が読めなくとも色で判断できるため、間違いようがない。と確認も取らずに足を青い方に向け歩き出す。


「ここの温泉、効能に美肌効果があるらしいわよ」


「え! 本当? いつもより少し長めに入っていようかな」


「のぼせたりしないでよ? 倒れたりしたら私一人じゃ面倒みきれないわよ」


 と前方から話をしながら歩いてくる二人組。

仲が良さげに話しをしながら歩いてきたのは良い、別に構わないのだが。その二人は女性でくぐったのれんは青

 前方から話しながら来ていたのは見えていたしうっすら聞こえる話の内容で目的地は俺たちと同じく風呂だろうと思い実際的中していた。

 的中してもしなくても俺たちに彼女たちの行く先なんて関係ない。関係ないはずだった。


 だがその考えは今打ち砕かれた。


関係ないと思い、こちらも風呂に入ろうと足を進めようとしたら。彼女たちは手前にあるはずの赤ののれんを通り過ぎこちらに向かってくる。


 おかしいとは思ったが、話を続ける声が近づくにつれ明瞭になり会話の内容がはっきり聞き取れ結果は変わらず、風呂に入る事は覆らない事実と変わっていく。

それなのに何故か赤ののれんを通り過ぎこちらに向かってくる。こちらののれんは男湯で有ることを示すはずの青色ののれん。


 疑問と動揺で足が止まっている間に彼女たちはこちらの動揺を知ったものかと歩みを進め、青ののれんをくぐり姿が見えなくなり会話も聞こえなくなる。


 ……ここは今までの常識と違う。


色は同色を使われているが、男湯と女湯での識別の色が逆のようだ。

 今いる場所。この場所は異世界と割り切り認識してきたつもりだった。ただ向こうの知識が使えることもまた事実、その事実をここでも適応されていると思って考えなしに入ろうとした。


その結果、一歩間違え彼女たちより先にのれんをくぐっていたら、変態の烙印をわが物にしていたところだ。


連れにローリェやコロネが居る現状そんな事は無いと思うが、無いとは言い切れない。

先ほどの俺と同様に自分の常識外の行動をとる相手に反射的に指摘を出来たかどうかは怪しい。


 驚きに口を開き、足が止まり、ただ茫然と立ち尽くす……そんな姿を想像できなくもない。

 その想像が現実となっていたらと思うと、これ以上ないくらい最悪な未来にしかならない。

その最悪の未来を回避できたのはひとえにこの動くことができずただ立ち尽くすのみとなった足のおかげである。


 後月の方も俺と同じく、日本の常識を適応し青の方に入ろうとしていたに違いないので注意できるわけがない。


「一応……一応確認だが俺達2人は赤の方に入ったらいいんだよな?」


 まさかここで、先の入った二人は勘違いで実は男湯が青なんて事になれば、無罪にもかかわらず冤罪を押し付けられ、被りたくもない汚名を被らざるを得ない可能性が非常に高い。


「決まっておろう、なぜそんなことを聞く?」

「そう言えば雄也は字が読めないのだったわね。……ということはもしかして青に?」


 同色を使われているからこそ先入観で向こうと同じだと思い歩みを進めた。が、まさか逆だったとは。

ここで、のれんの色が茶色と紫や、黄色と緑等の奇抜な色や、判別がつきにくい色なら向こうと違いに対し、五分五分の確立といえ賭けに失敗した時のリスクのほうが高すぎるので、コロネに馬鹿にされようと聞いていた。


もともとローリェは字が読めないこと、こっちの常識が欠如していることを知っているので隠す必要もないし後月も俺と同じ境遇なのだ、気にする必要もない。


 今回に限っては部屋ものれんも服に至るまで向こうとの違いを探すほうが難しいくらいだったのでつい、日本での知識が通用していると。通用するとの思い込みが導いた過ち。

忘れてはいけないが通ずるところもいっぱいあるが、同じくらい違うことも多い。


この世界は異世界なんだよな……


 向こうと色や形が同じでも今回と同じく似て非なるものや、同じものでも逆の場合があることを頭の片隅には置き、忘れない様気を付けないといけない。また同じ轍を踏みかねない


「ぬしさまは、字が読めぬのか?」


 今まで黙っていたが別に恥ずかしいから隠していたわけではなく、いちいち言う必要がないと思ったから言わなかっただけである。

大本を辿れば異世界転移したことを話さなければいけないし、異世界転移の事を言っても信じてもらえない。それでも実際異世界転移していることは事実で事情が事情だ、恥ずかしいと思うことなどない。


「聞いているのか? 字が読めぬのかと問うておる」


 そう言えばそんなことを問われていたな。てかローリェがそういったのを聞いていなかったのか? それとも彼女の言葉を信用できないのか、俺が恥じる姿を見て楽しんでいるのか……

 恥ずかしがる姿といっても、別に恥じとは思っていないので残念だったと笑ってやることならできる。


「あぁ読めない、もっと言うと一般常識的な方面も疎い」


 ついでなので常識の欠如も言う事にする、今後同じような間違えをしたときに面倒だし。こちらの常識として男は赤色、女は青色が当たり前の事ならこの時点で常識がないことが露見している。


「なんじゃぬし頭はバカではなさそうな癖をして、字が読めぬのか、その上常識も欠如していると……」


 てっきり笑い転げられると思っていたが、何やら俯き考え込んでいる。俯いているから表情までは読み取れないが、声を上げて笑われるよりはましだ。


「そうか、ならわしが教えてあげよう、まずは字じゃな、常識より字があればなんとかなる」


 前言撤回。これならまだ笑われた方が幾分かましだ。

 教える。字を? 常識を? なぜ急に。確かに今彼女は俺の欠如している部分を知った、だがそれでも急すぎやしないか? それにもし本当に字を教えてもらうとなったら、教えると言った以上俺がいくらか文字が読めるようになるまで毎日字を書き続けることになる。


 それもローリェに教わるならまだましだが幼女……幼女に教わるのだ。

これが百歩譲って俺より年上のロリばばぁならまだいい。が、実年齢を聞いてはいないものの、おそらく俺よりは年下だろう、話し方はばばぁ臭いが……


「ありがたい、そう思うがお断りだ」


「なぜだ?」


 何が悲しくてロリから字を習わにゃならん。それどころか自慢じゃないが母国語の日本語以外は話すのはもちろん書くのすら出来ない。

 中、高と英語が必修であったが正直一夜漬けでどうにか赤点を免れていただけで今問われても答えられる自信がない。


 勉強が嫌いで、字を覚えるのが大の苦手な俺に。この年になって小学生レベルの事日本でのひらがなからやれと言っているのだ。


何の拷問か教えて欲しいくらいだ。


 これがコロネに教えて復習も兼ねているならまだいいのだが


「雄也良い機会じゃないお勉強……してみたら?」

「兄者も字が読めないと不便であろう、ここはお言葉に甘えてはどうか?」


 ローリェからの勧めは想定内。だが彼からの後押しは想定外だ。


 背中を預け戦うと杯を交わした義兄弟に戦果の真っただ中で、預けていたはずの背中を、刺された気分だ。

 しかも何のためらいもなく。


「……後月!? お前……」


 一瞬俺を裏切ったのかと思ったが


「兄者。私も同じことをしてしまう、直前まで経験したことがありますが、あれは何とも言えない気持ちになります。ですので兄者には同じ思いをしていただきたくないのであります」


 そう語る彼の顔は思い出したくない記憶を思い出してしまったのか血の気が引き青白くなっていく。その青白くなってしまった顔でも伝えたいという気迫だけは伝わってくる。顔色を変えてまで伝えてくる、彼の必死さは言葉以上に必死さが伝わるというものだ。

その表情を見るだけで、先ほどの甘えた考えを飛ばせるだけの威力は持っている。


「どうしたの?」

「なんじゃ二人でこそこそ話をしおって」


 彼女たちには聞こえないよう声をひそめて言ったので。会話の内容までは聞こえていなかったようだ。


「……お手柔らかに頼む」


 先程の後月の説得は思いのほか効いた。

勉強は嫌いだが、覚えたくないと頑なに断るほどいやでもない。それどことか、頑なに断ったら先ほどの後月以上にひどい目に合う気がする。


彼のおかげでその悲惨な末路を歩むことはなくなった。それ自体は良かったと思うし、もし苦労をする羽目になり逃げだしたくなったとしても、結果としてプラスには働くだろう。


 覚えて悪いことなんてそう多くはない、実際犯罪系統以外はたいてい知識として持っているだけでもプラスに働きこそ、マイナスにはならない。

要は人の落ちてはいけない所にさえ足を踏み込まれなければ覚えて悪いことなんてないのだ。


 覚えればそれがいくら今必要なくとも、いずれ役に立つ可能性がある。現状何の役に立たなくとも必要な時にないよりはいくらかましだ。


 プラス思考にやってなければ、身も心も持たない。


「そうか、何を話していたか気にはなるが……そこまで言うなら教えてやろう」


 そこまで言った記憶は無いのだが……


「雄也私に出来ることなら協力するから言ってね」


 この一言でいくらでも頑張れる……


 相手によって態度を変えたわけではないが、内心の思いは180度と言っていいほど真逆の感想を抱いたせいか。関係なく元々少女が考えて居たのか分からないが


「ぬしよビシバシ行くぞ!」


 何がきっかけかわからないがやる気スイッチが入ったらしく、人がゆっくり時間をかけて覚えたいと言う旨を、それとなく含み。こうならないよう先に言っておいたにもかかわらず、話を聞いていなかったのか、裏まで読むことをしないのか、それとも読んだうえでわざとそう振る舞っているのか分からないが、危惧していた返答が大手を振って向かってくる。


「……コロネさん? お、お手柔らかにね?」


 少女だというのにどこから出てきているのか分からない気迫に負け、弱腰になりつつ反抗してみるが


「そんなことを言っている間はいつまで経っても覚えられない。覚えると決めたのなら徹底的にやるのみ」


 気迫だけではなく発言まで立派。こちらの意図は汲み取れないのに、俺の弱腰な、逃げ腰な気持ちの方は汲み取ったのか、それとも偶然的を射ていたのか分からないが、彼女のこのカンは先程の発言の時に働いてほしかった。

とだらしないことを考えていると。


「コロネちゃん雄也はゆっくり」

「ローリェさん、それは少々甘くないですか? やると決めたらしっかりやらないと、いつ辞めると言いだすかわかりません。それに長期にわたって覚えることより、短期間で詰め込もうとする方が幾分か楽な気がします。後は慣れかと」


 俺の女神からの助け舟を一刀両断し、挙句なんとも言い難い正論的暴論を投げつけてくる、確かに何をするにしても知識だけを入れるより、実践で失敗を経験した方が身にはつく。だが、だからと言って段階をすっ飛ばしても意味がない。


 経験も積んでいないのに実践など出来ようはずがない、その経験値を積む時間が短すぎても結果は同じ。


「……そ、それもそうかもしれないわね」


 少しの抵抗をすることもなく白旗を上げてしまった俺の助け舟……もとより敵軍ではあったのだが、押して引く。の様に、初めはムチその後に飴を出され、救助船だと錯覚をし助かると思ったのだが、つかの間安堵。即懐柔されてしまった。


 この場合は懐柔ではなく川がはがれたと言うべきか。


 今の状況を四面楚歌と言うのだろうか? それとも孤立無援? とにかく助けがなく敵に囲まれている、この状況は打破するではなく、流れのままに身を任せるしかない


「はぁ。やるしかないか」


 孤立無援なら、諦めて白旗を上げるとしよう。粘ったところで結果は変わらない、諦め悪くあがくより降参したほうが楽だし。結果が変わらないなら頑張る意味がない。


「話もまとまったしお風呂に入りましょうか」


 改めて考えると。いや考えるまでもないのだが風呂の前で雑談している連中。しかも風呂上がりならまだ分かるが、入る前にしているとなれば、どう考えても怪しい。

 俺が当事者ではなく第三者だとした場合少なく見積もっても警戒をするか知らんふりだろう。さわらぬ神にたたりなしとはよく言ったものだ。


だが運よく人の気配は無く目撃者がいないおかげで、おかしな連中のレッテルは張られずに済んだ。


「ぬしよ入るぞ」

「雄也何してるの? 早く入りましょう」

「兄者行くでござる」


 周りの事を気にしてない一行の中で、一人心配していた俺をあざ笑うかのように、皆は気にせずのれんをくぐろうとしている。


「なんだかなぁ」


 口をついて出てしまったつぶやきは誰の耳に入ることもなく廊下の静寂に吸い込まれていく。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 風呂場の前で喋っていたついさっきの事を忘れるくらいの驚きを受ける。


「想像はしていたんだが」


 想像してはいた。それどころか想像道理だといっても過言ではない。

 店の外観からは想像もつかなかい内装を見せつけられ、部屋に至っては和室だ。その上のれんに至っては想像を絶した。だからこそ奇抜な、何か驚くような脱衣所かと思った。たかが脱衣所に何を求めているのか? 自分でもおかしく思う。


だが想像と違ったものが多すぎた。なら少しの期待を抱いてしまうのは仕方ないことだと。今まで見てきたものと同じく、脱衣所も何か違うのでは? と少し期待をして年甲斐もなく少し心が弾んでいたのに、残念だ。


 期待していた光景とは違い、くぐったのれんの先に広がる光景は棚。棚の中には籠が設置してあり、天井には照明がつき、床には湯あがりの水気を吸い取るマットが敷き詰められ端のほうに壁に背を預けるように扇風機のようなものが数台ある程度。


 旅館に入ってきてからの光景を見ていなければ確かに驚いた、だが見た後だと想像道理すぎで驚きは得られなかった。


「はぁー」


 もっとこう……


コインロッカーに手荷物や着替えた服をいれる、市民プール仕様や。

脱ぎ散らかした服を旅館の定員が片づける。家庭仕様。

客の名前入りのバスケットが置かれていて、着替えを用意されているおかしな気遣い。


 後半二つは想像力が乏しく、良い例えが思い浮かばなかったが。それでも少し奇抜なくらいの事を期待していたのに、どうして……どうして普通なんだ。


 床に手を付き崩れ落ちる衝動に駆られるがなんとか耐える。 


「兄者早く入るでござるよ」


 想像との違いに崩れ落ちそうになる膝に何とかいうこと聞かせるよう努力しているのに。急かす後月はもう服を脱ぎ準備万端。脱いだ衣類は棚に置いてある籠に入れてある。


「悪い先に入ってくれて」


 彼にそう告げ服を脱ぎ始める。

脱ぎ終えた衣類は綺麗にたたみ籠の中への収納が終わり、風呂場に足を向けると


「なんでまだ居るんだ?」


 先に入っていてくれ、そう頼んだはずの後月が目の前に居る。

服を脱ぐのに数分もかからず、わずかな時間で済むので待っていてもおかしく……いやおかしいのだが。


数十秒程度の時間待っても一緒に入りたいと言うやつがいるかもしれない、だが俺はごめんだ。


第一待っていたら、風呂に入るのまでの間全裸でいなければならないということ、そうなると風邪をこじらせる可能性が出てくるし、何より寒いので待ちたくない。

 わざわざ寒い思いをしてまで一緒に入ろうとは思わない。話があったとしても、風呂に入ってゆっくり話せばいい、だから待つ必要性は皆無。皆同じ意見だと思っていた。


「兄者釣れない事を言うな。服を脱ぎ片づける時間なんてたかが知れておろう。なら待っていてもよいではないか」


 待っていた理由は特にわからないが、待っていたのだから帰ってくる返事はおのずと想像がつく。

それに待っていた相手今さらにこっちの意を伝えても後の祭り。仕方ないので放置して風呂に向かい歩みを進める。


「あ、兄者? 何か怒っておるのか?」


「別に怒ってはいない、だがこれからは先に入っていいと言ったら先に入っていろ。風邪をひかれたら困るからな……」


 言っていて恥ずかしくなり、最後の方は掠れてしまった一番重要で一番恥ずかしい部分だったのだが。だからこそ風呂に入る前からのぼせたように熱くほてった体は血の気が引くことはない。

顔に血が押し寄せ、頬が熱く、普段冷たいはずの耳にまで、熱さを感じるくらいだから一目見て分かるくらい赤面しているであろう。


 一つ救いがあるとすれば顔や背中とところ構わず出てくる変な汗の気持ち悪さをすぐ流せるという事だけだ。


 現状では唯一にして最大の恩恵をあやかろうとガラス張りのスライド式戸に手をかけ開く。


「え?」


 戸を開くとタイル張りの床が出てきてシャワーが備え付けられている。備え付けのシャワーの前に腰かけとなるイスが置いてあり、シャワーの付け根にはシャンプーと石鹸がある。

 奥にいくとようやく浴槽が見え、浴槽いっぱいに湯……温泉がはいっている。


温泉はマーライオン的な置物から流れてきている。それ以外にも浴槽の中には見にくいものの、ふろがまの様な穴があり、温泉を定められた一定の量保つべく温泉足されている。温泉を足すのはどちらか片方でも良いと思うが、現実問題として置物の方は水量の維持に貢献できないのであろう。

なぜなら、高い位置から出てくる湯という特性上高出力だと客に当たった時の被害が大きい。高い位置じゃないとマーライオンの意味がない。

単なる置物としての意味合いが強いだけの給湯口


 ……だがすべては妄想。眼前には想像していた風景は広がっていない。


 豪邸の風呂と、銭湯を足して二で割った、いびつさを期待していた。期待ではなく現実になるであろうと言う半ば以上の確信も持っていた。

 半ばで止まったのは先程の脱衣所、予想に反し普通すぎた。まさか風呂場まで……と思う気持ちを抑えつつ戸を開いたが後者の方が的中していたようだ。


 扉は半透明のガラス張りで、外は湯気がたちこめ見晴らしが悪い。一寸先は闇とまではいかなくとも、数メートル先を見やるのに明瞭な視界が確保できない。

この二つの条件が重なり脱衣所からでは想像も出来なかった光景が眼前に広がり、妄想と化した想像を絶する現実を突きつけてくる。眼前の光景は悪い方に裏切ったのではなく良い方に裏切ってくれた。


 扉を開いて初めて抱いた感想は唖然より先に寒い。

少し火照った体に当たる風は冷たく、肌を舐めるように這う風は冷たさだけではなくほのかな暖かさを含んでいた。

 室内を想像していたため少し驚き。驚愕がやまぬうちに眼前の白く濁っていた光景が今の風によって取り払われ視界が明瞭になる。


 その明瞭になった視界で抱いた第二の感想。ここはどこ? なぜこんなに広いんだ? と言う疑問


 外観は豪華だったかが敷地は広くない。この世界にしては広いのかもしれないが日本の旅館からしたら大分狭い部類だという程度の認識。全容を知っている訳ではないが軒並み並ぶ店を見るとおのずとそう感じてしまう。

 その狭い部類に感じた旅館、もちろん店が並び裏側までは見えなかったが、こんなに広いとは思えなく、もっと狭いと勝手に予想していた。


 その身勝手な想像を嘲笑うかのように今いるのは室内ではなく室外。

 床は一面石が敷き詰められており、辺りを見渡し見える物は柵。竹を紐で縛ったとしか思えない簡素な作りの物を立てかけていて、仕切りを作っているよだ。


 他に何かないかと辺りを見てみるが見えるものは、体を洗う場所があるのかと思えば、特になく風呂に入る前にさっと湯をかけるように置かれている桶。その桶のそばには石で出来た子供がひとり入れそうだが浸かるために置いてあるのではない浴槽。その中に湯が入っている。

この四つ以外は特に目に留まるものは何もない


 先ほどの小さな湯船のほかにある、客が入る用の湯船は一つ。大きくは無いが大人が十数人は余裕で浸かれる。日本に比べるとやはり小さいが、ここではこれが基本的な大きさなのかもしれない。そう言えば棚もそこまで多くなかったような……


 だが体を洗うための、石鹸類が無いのはなぜだろう?


「後月。何故風呂に入る前に体を洗うための石鹸類がないんだ?」


 彼はこっちで温泉の使用経験がるようなのでそれとなく聞いてみる。


 この辺の質問は異性に聞いた場合最悪セクハラになりかねない。いくらローリェが優しかろうと、コロネがお子様であろうとセクハラは犯罪。してはいけないことをわざわざ好んでしたいとは思わない。

セクハラにならないとしても異性に聞くには少しハードルが高い。


「兄者、それは必要がないからでござるよ」


「必要がない? 何故だ?」


 風呂に入る前に体を洗わなければ湯が汚れ後に入るものが良い気持ちで入れないため、風呂に入る時は、入浴前に体を洗うように心がけている。

 その心がけが必要ないといわれれば驚きもしよう。


 百歩譲って入浴前に体を洗わないとしても入浴中には一度は体を洗う。洗わなければ何のために入っているのかわからない。高温の湯に数十分浸かればいいということも聞いたことはあるが、今まで体を洗ってきたのだからその習慣を今更やめることは難しく、何か落ち着かない。


「それは簡単でござる兄者、この湯。これを使えば気にしなくても大丈夫なのでござるよ」


 後月が言っている湯は浴槽とは別に設けられていた、かけ湯用の湯のことだ。だがかけ湯用の湯を使ったからと言って何がどうなるというんだ?


「その疑問拙者も同じく抱いたでござるよ」


 何やら懐かしそうに物思いに耽る後月、正直意味が分からず説明を早く欲しているので急かそうかとも思ったが、彼の思いでの邪魔をしては悪いと思い、少しの待ち時間に訳は分からないが、かけ湯を済ませて待つ


「……申し訳ない兄者」


 かけ湯用の湯を体にかけていたので、気になるほど待たされたわけでもないし。思い出に浸っている邪魔は出来ない。

それに思っていたより短時間だったし。理由を聞く前にかけかけ湯をしてしまったが、時間はつぶせたので問題はない


「大丈夫だ」


ただ、あまりにも長いと流石に話を進めてもらわないといくらここが湯船の近くてほんのり暖かいと言っても流石に野外で全裸だと普通に寒いし風邪をひきかねないので、現実に連れ戻し話を進めてもらわなければならなかった。今考えれば、待つなら湯を浴びるのではなく少し待っていたほうがよかったのではないか? 先に浴びてしまった場合体に着いた水滴が冷えて余計風邪をひく可能性が高くなる。


 と思っていたが、なんだか体が温かい。湯の温度が想像以上に高かっただけか?


「話を戻させていただいて。この湯クリーンウォーターという名の、詳しくはわからないのですが魔法が入っているらしく使えば老廃物や汚れを即座に落とし。洗浄殺菌してくれるそうなのです」


 言われてみればなんだか体を洗ってないのに綺麗になった気が……。かけ湯用でただの湯でないことは後月の口ぶりから分かっていたが、どうやら体の洗浄も兼ねているようだ。石鹸類がないことはこれで納得がいった、納得がいったのだが。やはり体は洗いたいと思ってしまう、それと同時に少し疑問もわいてくる。


「この湯は魔法を使っているのか? それとも」


 後月は魔法を使っているではなく、入っているといった、なら二通りの想像ができる


「それとも、……の方でござる」


 実際二つのうちの片方が当たっていたようだ。


「自然発生か」


 これが魔法使いによる御業だとしたら有難いが、貴重度が下がる。仮に稀有な魔法使いによるものなら逆に貴重度が跳ね上がる。

 自然発生も後者と同様で貴重度が上がる。


 貴重度が上がると言っても体を洗う以外に使い道が無いので、金を積んでまでほしいわけではない。


「兄者細かいことは気にせず今はゆっくり休める時間を大事に。でござよ」


 彼が気を利かせたのか思考に没頭しそうになる俺に声をかける。その声で湯を浴び戦場を済ませたものの、温泉には浸かっていないこと事を思いだす。

 入っていた時に感じていた寒気を今は感じなく、かけ湯の後感じた温かみは嘘ではなく真だと感じさせてくれる温かみが今もまだ確かにある。


「後月。この湯って」


 そう言い、かけ湯用の浴槽に指を向け疑問をぶつけようとするが


「兄者湯船につかってからでも遅くない。入るでござるよ」


 再度後月に言われこのままここで雑談をしていれば本当に、風邪をひきかねないので足を湯船の方に向け歩を進める。

 風呂には気を休めるために来たのだ。休息のために来た風呂で、細かいことを気にして休めるために来た気力を逆に消耗しては、元も子もないのでひとまずは頭を切り替える。

 それに俺は温泉自体が初めてだ。インドア派の俺は旅行になど行ったこともなく温泉の経験はない、なので少しワクワクしている。


 自宅の風呂や銭湯と何か違うのか?


効能は本当にあるのか、温泉卵は温泉に入れて作っているのか。など気になる事は少なからずある。その初体験を異世界でするということになるとは思わなかったが……

 ある意味ではいい経験になる、それに


「温泉を出たら……」


 それ以上考えては考え事をしないと決めたのに、頭で妄想が広がりゆっくり休むどころではなくなってしまう。


決意を新たに疑問の方を解消していく。これは決して考え事をしているのではなく考え事をしないために。頭の中のもやもやを消し去る行為であって……

誰に言い訳しているのか分からないが結局俺は考え事をしてしまっているらしい。それでも今は解消しなくては今後ゆっくり入っていられない。そう思い疑問の解消に取り掛かる


「湯は、銭湯や普通の風呂と変わらないんだな」


 おっかなびっくりしつつ、足を湯船に付けてみるが、入れば体に異常がある、や一瞬でも触れれば特別な効能が効く、などは無く。たんに温度が高めの湯、粘りや濁りはなく透き通ったいたって普通の湯となら変わりない。

 実際は成分が違ったりするのだろうが一瞥しただけで分かるほど見た目に分かるほどの変化は無い。


 その中でも違うことを上げるとすれば純度と温度。温度は先程も思ったが風呂とは違い高温で長風呂するとすぐのぼせてしまいそうなので気を付けなければいけない。


 純度は温泉自体には関係なく先ほど後月が言っていたクリーンウォーターの様に魔法の一種が入っているかのように綺麗だ。


 魔法なしでこの純度を維持することは出来ようはずがない。温泉の精霊でも居るのなら別だが。


「次に効能だが……」


 流石に浸かってすぐに表れる様なものではない。それにここの効能が何なのか知らない、確か風呂に入る前の女性の話では肌に関係した話をしていた気がする。


 どの道効能が現れるのは肌に浸透したり、肌が効能の成分を吸収するまでの時間が必要となるだろう。


 その時間も月日をかけ徐々に浸透させるのと、長時間浸かって浸透させる荒業との二通りある気はするが。前者は時間がかかり過ぎるし、後者は俺の体がもたないので検証は不可能。


 期待をあざ笑うかのように綺麗さっぱり裏切ってくれた温泉にうなだれていると



「兄者も同じことを感じたのか」


 横から声がかかる、もちろん声の主は後月。同じということは彼も気になっていた時期があったという事。実際どう思ったのかは分からないが、今の口ぶりから俺と同じ感想だったのだろう。


「あぁ。期待値が大きすぎたのか、思っていたよりしょぼくてがっかりしていた所だ。入った瞬間から血が沸騰し毛穴が開き、下手をすれば意識を手放しかねない。そんな温泉を想像し期待していたからな」


 少し言いすぎた部分はあるだが夢見ていたのは事実である。自分で言っていて何だが。温泉で修行並みの精神や体力が必要なら誰も入らないし、入れない。

 温泉の町と言うくらいだから探せば想像道理の温泉もあるかもしれない。


 かといって探すのは面倒だし探したところで有るかも分からないのだ。

 その修行並みの温泉に入れば瞬時に強くなれるなんて神様の設定ミスの様な効能があれば少しは考えるが、努力をせずに手に入れた力は己を腐らしダメにする。


努力もせずに手に入れた力の果ては、力に振り回され、翻弄された挙句自らをむしばみ滅ぶのが目に見えている。


 事が己の身で済めばいいは周り、関係の無い者から共に連れ添っている仲間にまで災難が降りかかれば何のために手に入れた力か分からなくなる。


 なら努力をすればいのだが努力は嫌いだ。しなくちゃいけない事はするが、しなくても良いこと、今必要じゃ無いことは後回しにしてしまう。


 それに付け焼刃の力は猫の手も借りたい状況ですら役に立たないだろう。付け焼刃の力は仲間の迷惑にこそなっても救いにはならない、良いとこ自己満足が関の山。


 力は努力なしに手に入れてはいけないものだ、努力をした場合も練度が足りない行使しない方が周りのため。


なら今俺が欲するべきものは情報。頭を使うことなら少しは役に立てるはずだし、それなら邪魔にならない。


「兄者?」


 それに元居た世界の知識が役立つかもしれない、ならすこしでぇも


「兄者そろそろ上がるとしよう」


「あ、ああ」


「兄者!?」


 思考がまとまらなくなり、頭が回らない。そう認識したころにはもう遅く、後月が声を掛けるも一足遅く。

……俺は倒れた。

最後までお読みいただき感謝です。

文章量も多くなって少し申し訳なく思ってたり……

就活が始まるのでもしかしたら3月まで更新できないかもしれませんがお許しください。

俺こんなのばっかですね……また来月の月末にお会いしましょう。

最悪改変してるのを投稿しますのでお許しください

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