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第三章11話 抜けた異次元

 今いるところは暗闇の水面だろう。暗闇かどうかの判断は出来なければ、水面で有る確証もない。ただ目を開けることが出来ず、感覚と言っても確かなものではない。そんな中でもただようように浮いているそんな感覚を味わってるゆえの仮説。

 そんな確証もなければ確かめる方法もない場所に何かが押し寄せてくる……波だ。波に流されそうになりつつも少しずつ意識を確かに持ち、ゆっくり目を覚ますかのように覚醒していっているのだろう、先ほどまで暗闇だったのに、少し光が差し、まだ薄明るいと言った感じだが……閉じた瞼越しにも光を感じ取れる、明確な明かり。その明かりが少しずつ光を強め、周りを照らし始め、まぶしいと感じつつも、目を開けると……

 そこは見慣れた天井。目を覚ますと幾度となく見たを天井を見るように仰向けになってる。

 体を起こし周りを見渡してみるが、見慣れた天井同様部屋も見慣れたものだ。


「戻って……来れたのか?」


 見慣れた天井とはもちろん宿屋の事であり、周りを見渡して部屋の確認もしてみるが、借りてる部屋で間違いがない。

 ベットの上に寝ていたが何度も味わった感触と変わりはない。


「宿屋なのは間違いないにして」

 戻ってこれた確証はない、先の異空間(?)でも、幾度と宿屋で目を覚ました。そんな中またしても宿屋で目を覚まし、戻ってきたと確証を持てない。

 そうここが宿屋確定でも、戻ってきたことにはならないのだ。もちろん失敗したなど欠片も思ってない、だが……楽観は良くない、証拠もなしに決めつけても何もいいことなどない。まずは確証を得るために外の散策にでも……そう思ってると。


「雄也? 起きてる? 大丈夫?」


 と、扉の向こうから声を掛けられるその声に驚きつつも、内心でほっとしながら。得たかったもの……確証と言う意味でも、待ち望んでいたという意味でも、得たかったものが扉の向こうにある。


「今起きたとこだ……どうしたローリェ?」


 口をついて出たこの言葉でも確信が持てた。俺は彼女……ローリェの事を思いだせている、これ以上の確証と言えるものがあるだろうか? いやない


「そうそれなら良かった、夜中に何かうなされてたみたいだから」


 夜中うなされてた? ……先の異空間に行ってる間時間は進んでないって事か? となると、時間が止まっていた、それか……よが空けるまでにクリアできたって事か。後者ならタイムリミットは夜明けって事になり、時間がもう無かったことになる。


「及第点ってとこか」


 ギリギリも良いとこだ……だがもタイムオーバーになってたらどうなってたんだろう? ……もう感がえても答えはでない、戻ってこれたことを今は喜ぼう。この状況から見るにあの異世界も、どこか察しはつくしな。


「心配かけて悪かったな、もう大丈夫だ……夜中うなされてた事知ってるってことは、俺の部屋に夜這い来たのか?」


「そ、そんな訳ないでしょ! 夜中に目が覚めた時にうなされてるのを聞いただけよ!」


 扉越しで顔話見れない、だが赤面して可愛く怒ってるのであろうことは手に取るように分かる。……戻ってこれたんだ、全て持ったまま、今後を生きて行くために必要な事も学ばせてもらったうえで。


「心配して来てくれただけだけって事だと嬉しいが……それは無いよな?」


 扉まで向かい開けながらそう言うと。扉の前には、思いだしたくも、見たくとも、頭にも視界にも、もやがかかっていて見れず思い出せづにいた彼女が。

 待ち望んでいた彼女がそこに居る。何も変わらず……いや前より可愛くなったか? ……色眼鏡というやつか。彼女に会いたく、待ち望んでいた光景を目に可愛さが上がったように感じる。実際に上がったのかもしれないが、そんな機微に俺が気づけるわけないので気のせいなのだろう。


「……確かに他のようもあるけど…………心配してきたのは嘘じゃないわよ?」


 怖ず怖ず言う彼女を見ながら


————マズったな


 彼女は優しすぎる、分かってたことだ。なのに会えたことに嬉しくつい、口をついた言葉。

 別に皮肉を言ったつもりはないし、彼女が心配してくれたことに微塵も疑う余地はない。だが昨日ケルベロス討伐が終わったのだ、ならその後の交渉や話などあるだろうと思いの発言。いや失言。

 心配してきてくれてることが分かっているのに、今後の事の話があることが分かってるだけに出てしまった失言……出してはいけない失言。心配をしてくれたものにその心配を蔑ろにするような発言はしてはいけない。


「悪い、そう言う意味で言ったんじゃないんだ。ローリェが心配してくれたことその事で来てくれたことに欠片も、疑問を挟んでなどいない。だが昨日の今日だ、エンジャから呼び出しがあったのだろうと思っての発言だ。君を傷つけるようなこと言ってすまない」


 頭を深々下げる俺に彼女は唖然としている。

 何故だろう……など思わない、確かに驚くだろう。以前の俺なら少し謝って流そうとしていたかもしれない……少なくとも彼女はそういった認識でいたのだろう。別にその事のに対して怒りは湧かない。

 自分の行動の結果の評価だと納得がいくからだ。だがあの世界で少しは大人になれた……と思ってるだけに自分の非は認めるべきえある。


————好きな女性に対しては特に


「いやいいのよ、私も雄也が疑ってるだなんて思ってないから。頭を上げて」


 戸惑いながらの彼女の意見を聞き頭を上げる……と。彼女は先の失言で曇らせた顔を、今度は少し赤らめている。

 俺が彼女の知らないところで成長を遂げてるのに対して、見惚れていたのか。少し先に行かれ自分が子供じみたと思いの恥ずかしさなのか、理由を彼女が言わない限り俺には分からない。


「要件はエンジャだよな?」


 先ほども言ったが、昨日の今日だ。話があるとしたらエンジャかヴァインズかのどちらかだろう。その二人でもヴァインズの方は、今話すことはない。今後の話はあると言えばあるが、今わざわざ呼び出して話すことでもない。

 なら消去法でエンジャだろう


「報酬とか、今後の話をしたいんだって」


 今回に限っては、正直報酬をもらう気にはなれない。

 くれると言うなら貰うが、前回のベンジャグでは俺らの商品である、水を差しだしその報酬として金は受け取ったが。これも俺が勝手にしたことで、さして報酬をもらうようなことでもなかった。


 ましてや今回は、作戦を頓挫させた挙句かき乱すようなことまでしたのだ。なら、もろ手を上げて報酬をもらうのは恥知らずも良いとこだ。


————くれるなら貰うが


「そっか、今回は報酬をもらう気にはあんまりなれないんだけど、向こうの顔を立てると言う意味でも、貰って置くべき……だよな」


 面子と言うものはどこの世界どこの時代でもあるものだ。よそ者に助けてもらった……いや実際はそんなたいそうなことはしてない……だだ外から見れば助けとまでは行かなくても、一助程度は働いてるように見えるだろう。

 そのものに報酬を与えなければ、面子が保てない。面子など要らぬと思うのは俺が上に立ったことが無いからか。


「私も助けて貰ってばかりで、助けなんてしてないだけに貰うのはちょっと抵抗があるんだけどね……。でも雄也、ジンさんからは武器を貰ってたじゃない?」


 好意を受け取るのと、功績を上げずに……役に立たずに、報酬を受け取るのでは話が全然違う。

 好意は損得勘定なしの、相手の気持ちだが。報酬は、自分のなした成果、功績に対して与えられるものだ。それを面子を守る……大事なのは分かっていても、そんな理由で貰うってのはやっぱり腑に落ちない物がある。


「心外だな。俺は少しの常識はある方だと思ってるし、恥知らずでもないつもりなんだが」


 どちらも時と場合によるのだが


「ごめんなさい、そうよね。ジンさんの時はすんなり貰っていらから、つい」


 あの時は好意だったし、整理も付いてなく、貰えるものは貰っておくべきと考えてたから尚更だ。貰えるものは貰って置くと言うのは今でも変わっては無いのだが……


「ならギルドに向うか」


 そう言って宿を出ギルドに向う二人。


「そう言えばヴァインズはもう向ってるのか?」


 今後の旅に同行してくれることになった彼も、同じ宿に寝床を取っていたはずだ。あの時点で飛ばされいたとか言わなければだが。


「ヴァインズさんはもう向ってると思うわよ、エンジャさんからの使いが来た時点でもう向った、みたいなこと言ってたから」


 そうか、今後共に活動するのに協調性の無いやつだ、まぁ俺が寝過ごしたとか、彼が気を使って先に言ってくれてた可能性はなくもないが。

 やつの場合は協調性よりか、気を使った可能性が高い気がするな、こ……これはヴァインズの好感度が上がってるんじゃなく、奴の評価がましになっただけだ。どちらにしろ意味はさほど変わって無い気もするが。


「もうギルドか」


 話し込んでたわけではないだろう、だが体感でもそんなに時間がかかって無い。元々距離はさほど離れてなかったのだろう、また異次元に誘われてたなんて事はないだろうしな。

 そう思いつつ戸を開けると。


「おう、やっと来たか」


 そうで迎える声、もちろん共に旅をする予定のヴァインズはあんな良い方しないので、ここに呼び出し、報酬の話をする相手で、俺たちがモンスター討伐に協力したギルドの頭エンジャだが、


「そういえばヴァインズは?」


 迎えられる声に反応を返さず、気になった疑問を投げかける。

 心強い仲間になってくれたはずの彼が、もう旅立ってしまったなどと笑い話にもならない、落ちなど願ってなどいない。と不安を感じつつの質問その質問の返答をするのはエンジャではなく……


「僕が居ないと寂しいかい?」


 当の本人であるヴァインズが軽口を聞きつつ、そんな返答をしてくる。


「あぁ寂しい……というよりここともとないって感じだが、感覚では間違っていない。共に旅をすると言ってくれたものが居なくなれば、寂しさも感じよう」


 少し気障ったらしく言った自覚があるだけに、顔に熱を感じる。


「「「……」」」


 と少し赤面してるとこに、他の三者は沈黙。俺そんなおかしなこと言ったか?


「なぜ沈黙? 俺はそんな可笑しなこと言ったか?」


 なぜ黙られるか、あまり分からない。確かに正直に感情を言ったので沈黙を選ぶかもしれない。だがそれほどおかしなことか? 別に告ってる訳でもなし、仲間を大事に思って何が悪いんだ?


「いや、正直驚きだよ。君がそんなことを思ってることにもそうだが、思っていても口には出さず、はぐらかしたりするとそう思っていたからね」


 他の二人も首肯で同意を表明。彼女に対しては縦に振り過ぎて髪が乱れてしまいそうなくらいだが……


「まぁ仲間を大事に思うのを恥ずかしがったりする時期をもう過ぎたって事だな。俺は仲間が大事だ、そう公言することに対し、はぐらかしたり、逃げたりしないよ」


 今度は皆先とは違う意味での沈黙だ。彼等彼女等の中で俺の評価が上がったのは目に見えて分かるが、こんなことで上がるということは、それだけ評価が低かったという証左でもある……。喜んでいいのやらどうなのやら……


「とそんなことより、話があんだろ? さっさと話し、すましちまおうぜ」


 こんな些細なことでも上がるのは嬉しいと思うことにしても、評価を上げるのが目的ではなく。報酬の話がここに来た目的だ。その目的を蔑ろにしてもしょうがない。


「あぁそうだな、少し度肝を抜かれたが話をしようか」


 そう切り出された話は、もちろん報酬の話。

 内容は報酬金額と部位などの戦利品。もちろん此度の戦闘で死人も重傷者も多数出ている現状で多額の報酬を出す訳にはいかない。だが出さなくても面子を保てない。こちらはそんなもの要らないと突っぱねたくとも、突っぱねれないわけもある。……のでなあなあで済ませる訳にもいかず、出せる答えと言えば。


「部位はそっちが要らない分くれればいい。金も路銀程度でいいぞ。後の分は貸しにでもしておいてくれ」


 ベンジャグ同様金を少しと、戦利品は今後のためにいただき、後は貸しというなの貸し逃げまがいで話を終わらせる。


「あぁそうしてもらえると助かる。この貸しはいずれ必ず」


 正直言って、金をもらえた上に戦利品まで貰えてるこの時点で俺としては十分な報酬だ。なので別に返してもらわなくても良い、それにこの町に今度いつ来るかもわからない。そんなものを忘れずに宛にしていると、今度立ち寄った時にひどい目に合うかもしれない。


「じゃぁお互い元気でな」


 そう言って貰うものを貰って、ギルドを後にする。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 エンジャとの話が終わり、宿に戻る。すぐ発つ予定でもなかったのと、寝起きだったのでしたくも出来てないし。今後の話も、宿で話せばいいそう思ってたのだが。


「なぜお前はもう支度を終えてるんだ?」


 そう俺は先ほども言ったが直ぐに発つ予定というのもあって、支度が終わっていない。断じて寝過ごしたわけではない!

 だが、彼……ヴァインズはもう支度が終わっている、別にもう一泊するつもりは毛頭ないので、構わないのだが、少しせっかちすぎやしないか?


「支度を早く済ませておいて何が不満だと言うのだね?」


 いや、別に不満なんて欠片も抱いてないが。もちっと心にゆとりを持つというか、のんびりしろよ。そう言いたい。


「別に今すぐ行く訳じゃ無いのにもう支度が終わってるから聞いただけだ」


「まぁいいじゃない、どうせもう一泊する訳じゃ無いんだし。支度が終わってても話は出来るんだし」


 男二人の間に入ってくれる彼女、話がこじれてたわけではないが、彼女のなりの気の使い方だろう。

 因みに物理的に間に入ったのではない、流石にそんなことされれば驚く。


「支度の件はいいとして。今後の話なんだが、どうする?」


 路銀は、ベンジャグと先ほどエンジャからもらった金で足りるので特産品はまぁいいだろう。

 だが道をまたうまで行くのか? 次の町はどの程度時間がかかるかその辺りが分からない俺としては、今後の話は重要なんだが……


「君たちは今までどうやって旅をしていたんだい?」


「私たちは町の特産品何かを買って次の町で少しでも利益つながるよう旅をしていたの」


「今回は特産品を買う予定は?」


「お金もあるし、今は要りようでしょうから、あまり買うとかえって迷惑になるかもしれないから、買わないつもり」


 とこれまでの成り行きを話し始める二人。俺だけ蚊帳の外……


「では足はどうしていた?」


「足は馬を使っていたは、初めはお金もあまりなく馬が最適だったの」


「なら足に関しては、僕のを使うと良い。一応旅で使うように少しは強いのを手なずけてるつもりだ」


 ……今手なずけてるって?


「ちょっと待て、お前自分で使役してんのかよ!」


 今の言い方だと家畜を捕まえるのや、借りるなんて事はなく、自分で捕まえたみたいな言い方だ。その上そこらに居る様な家畜でもなさそうだし。


「あぁ腕を磨くためや、修行にもなるしね。その上足に使えるとなれば使役しなくては損ではないか?」


 軽々しく言ってくれるが……。貸家に入ってはいない物のテイマーは不足しているであろうこのご時世に、自分で使役とか……部族とか名乗ってるだけあって流石に補正が強いってか?


「まぁいいや、取りあえずの足はヴァインズのを使わせてもらうとして……一様聞いておくが、何人乗りだ?」


 これは重要だ最悪俺だけ置いてけぼりなんて事になりかねん。


「それは安心したまえ。数人くらいは乗れるし、荷物も載せれるだろう。」


「そんなデカい物一人で必要か?」そんな疑問を抱きつつもそのおかげで足に困らなくて済むんだし、文句は言えない、初めから言っても居ないのだが……


「でヴァインズは聞きたいことは終わったのか?」


 彼がローリェに質問をしていたとこを疑問を抱き、話を割った形になっていたので少し気にはなっていたのだが


「大体の確認は取れたから大丈夫だよ、ローリェ君もありがとう」


「いえ……それと君は結構ですよ。ローリェで」


「なら僕の方もさんは要らない。ヴァインズで結構」


 なにやら二人の距離が縮まったことにジェラシーなんてショウもないことを考えるのは止めて今後の話。


「次の町はどの程度の距離なんだ?」


 まずそこからの確認が必要だろう。出立するにしても距離が分からなければ、支度も出来ない


「ここからだと数日と言ったとこかな?」


「森の近くを通りかかるが中を突っ切れば少しは近道になるかもしれない」


 森を突っ切るなんて何が居るかもわからないのに、こんな少数パーティーでその上足手まといの俺がいるのに冒険なんぞできるか!


「時間はかかっても安全第一、森は素通り」


「まぁ急ぐ旅でもなしな」


「私はそれでもいいわよ」


「なら支度して、出発の準備でも済ませるか」


お待たせしました、ついに三章も終わり早いものです。

俺が書きだしてからでも早1カ月が過ぎました、時がたつのは早い。

梅雨も明け?暑くなって来るので皆様もお体にはお気を付けて。ではまた次回

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