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断魂の魔術師〜世界が何と言おうと、僕は僕である〜  作者: 6組のかとちん


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2/5

第一話 家族と、美味しいお肉と。

 記憶をどれだけ遡っても、こんな天井を見た覚えはない。

 窓から差し込んだ月明かりが、淡く部屋を照らしている。

僕…ロムウェル=ラーヴェンフェルトは前世の記憶の中にある物よりも少し硬いベッドの上で今日のことを思い出していた…。


---


 セルディオにお礼をし、彼が建物の中に戻った途端、僕のもとに二人…いや、詳しくは三人の人物が駆け寄ってきた。

 一人は軍服のような服を着ている男、もう一人はロリータ服というやつだろうか。そんな着ている女だ。その人物の腕の中にはすやすやと眠る赤ん坊がいた。

ああ、さっき群衆の中でひときわ目立っていた集団だ。

僕に何か用だろうか。


「ロムウェル…!無事か!?」


「ロムル…!怪我はない?」


 僕は別に怪我などしていないし、全く無事であるのだが、この人たちは僕のことを心配してくれているようだ。ていうか、ロムルってなんだ?


 「は、はい…全く怪我はなく、無事ですが…。何か用でしょうか?」

 

 心配してくれた人に対して少々冷たい態度だっただろうか。


 「何言ってるのよロムル!やっぱどこか怪我してるんじゃない?ほらこっちに来て見せてみなさい?」


 本当に怪我などしていないのだが…。まあ言われた通りにするか。


 「は、はい…分かりました」


 恐る恐る近くに寄る。

 僕を「ロムル」と呼んだ女は、腕の中の赤ん坊を軍服の男に預け、僕に目線を合わせるように腰を落とした。そして、僕の髪の毛をかき分けながら頭の隅々を見たり触ったりしている…。


 「うん…本当にどこも怪我してないわね…」

 

 だから最初に言ったじゃないか、と思った次の瞬間、その女は僕を勢いよく抱き寄せた。


 「はあぁっ!…良かったぁ…!ロムル、ロムル…」


 なんだこれ、なんかめっちゃ頭撫でられてるし、僕はもう子供ではないのだが。でも悪い気分じゃないな、この女さっきから思っていたが相当美人だ。なんかいい匂いもするし、体が柔らかいものに包まれている感覚は悪いものではない。


 そういえば、この女も、後ろに立っている男も相当背が高いし、体も大きいな。僕は前世では170センチはあったはずだが……。


 ん、いやいやどう考えてもおかしい…。

そう思い、僕を抱きしめる女の肩と頭の隙間から自分の手を見てみた。

 おいおい…。どう考えても小さすぎるぞ。それに、よく考えたら目線が低すぎるし…。


 「あ、あの…!」


 「ん〜?どうしたのロムル?」


 女はやっと僕を離して…と思ったらそのまま抱き上げながら言葉を返した。


 「そ、その、とりあえず降ろしてくれませんか?」


 「いやよ!だってロムルったら危なっかしいんだもの」

 

 こっちの方が危ないと思うのだが…。

そんなことを思っていたら、後ろの軍服の男と目が合った。周りにはこの男以外に人はもういない。

この男に助けを求めようと、高速で瞬きしてみた。


 「こら、ノエラ、降ろしてあげなさい。ロムウェルももう五歳になったんだ。いつまで赤ん坊扱いしている、リリアも生まれたばっかだろう」


 「しょうがないわね。ほらロムル、お父さんがああ言うから」


 そう言って女は僕を降ろした。

なんか知らない名前ばかりが会話に出てきてどうにも理解し難いのだが、この女はノエラというらしい。それにあの男はお父さんと呼ばれていた…。


 ん、そういえばなんか言ってたなあの男。ロムウェルももう五歳に…とか。ん…五歳!?

 僕が…五歳…!?どうりで体が小さいと思って……って…。



 「は、はあああぁぁぁ????!!!」



 この世界に来て出した中で一番大きな声が、夕日に照らされた大空に響いた。


---


 僕はノエラと呼ばれていた女に手を繋がれながら、舗装もされていない砂利道を歩いていた。

 

 「ねえ、ロムちゃん。今日はお祝いね!何か食べたいものはあるかしら?」


 「こら、ノエラ。もうロムちゃんと呼ぶのはやめなさいとあれほど言っただろう。本当はロムウェルと呼ぶべきところをロムルで許したというのに」


 「今日くらい良いじゃないの!ロベルト。だってロムちゃんすごい魔力量だったって神官様も言ってたじゃない!ロムちゃんはすごいんだから!」


 「ああ、そう…だな。今日だけにしなさい」


 どうやらこの男…ロベルトは、ノエラには甘いらしい。

 教会(さっきの建物のことらしい)からこの人たちに連れられて歩いている。なんで知らない人についていってるのかって?ああ、流石にもう気づいたよ。この人たちは僕の両親らしい。そう、家族だ。


 「それで、ロムちゃん。何が食べたい?」


 そう言われてもなあ。この世界に何があるのかも全く分かってない状態で食べたいものを聞かれても困るのだが…。


 「お、お肉が食べたいです…」


 とりあえずなんとかなるだろうという期待を込めてそう言ってみた。

 すると、ノエラがこっちを見ている。じっと見ている。何かまずいことを言ってしまっただろうか。

まさか、この世界ではお肉を食べないとか?もしくは菜食主義の家だったか…。


 「ロムちゃんにしては珍しいのね。いつもお祝い事のときは普段食べられない海のお魚がいいって言うのに…」

 

 どうやら先ほどの心配は杞憂だったようだ。


 「きょ、今日はお肉が食べたい気分なんです!」


 「そう、ほんとロムちゃんは気分屋さんね!それじゃあせっかくだからレグナールの香草焼きでも作りましょうか!」


 うん…?なんの香草焼きかは分からないが、とりあえずお肉を食べられるらしい。


 「おぉ!レグナールか!久しぶりに食べるな!」


 ロベルトは今にも口からよだれが垂れそうだ。あんな顔もするらしい。


 こんな会話をしつつ歩いていると、一軒の大きな石と木でできた家が見えてきた。


---


 今僕は大きな姿見の前に立っている。

 うん、会話の内容から自分が五歳児ということはわかったのだが…思ったよりも小さいな!

 自分が五歳の頃の記憶なんてほとんど残っていないが、こんなにも小さいもんなんだなと思った。


 自分の姿をよく観察してみる。


 丸みを帯びた顔立ち、まあ五歳児だから当然か。

一番最初に目を引くのは髪だ。なんと青緑色をしているのだ。ターコイズ…というよりかは深い青緑色という感じだ。目の前にいる人物が自分だとは到底信じられないが…。いずれは慣れるのだろうか。


 顔は、まあ現段階では分からないが、イケメンだろう。たぶん。そうであってくれ。せっかく異世界転生したんだ。ハーレムとか夢見ちゃうじゃんか。

 

 それと、家に帰るまでに周りを見渡したところ、ここは中世ヨーロッパを彷彿とさせるような場所だなと感じた。家に着くまでに何軒か家があったが、ほとんどが木造だった。大きさに関してはこの家が圧倒的に大きかった。まさか金持ちの家に転生したのだろうか、それならそれで嬉しいが。


 家族は自分を合わせて四人…だろう。おそらく。

もう家を出た兄とか姉がいてもおかしくはないが、両親の年齢はそこそこ若く感じたことから、おそらく僕は長男だろう。ノエラ…母親も僕を溺愛しているようだし。それに、あの赤ん坊はリリアというらしい。妹だ。前世では一人っ子だったので念願の兄妹だ。嫌われないといいな……。


 「ロムちゃーーーん!できたわよー!」


 おっと、母親から呼ばれたようだ。今からご飯だ。今日はお祝いらしい。この世界の食事はどんなものだろうか。口に合えばいいが…。まあとりあえず行ってみよう。


---


 「いただきます」


 「なぁにそれロムちゃん。ルミエル教にでも目覚めたの?」


 ルミエル教?なんのことか分からないが。そうか、いただきますとは言わないのか。


 「なんでもないよ、母さん」


 前世ではそう呼んでいた癖がつい出てしまった。僕が転生する前のロムウェルは母親のことをなんと呼んでいたのだろうか。


 「そう?ほら冷めないうちに食べましょ!」


 問題ないようだな…。どの世界でも母親の呼び方にそんなに種類はないのかもしれない。

 そういえばこの世界の言語は日本語なのだろうか?そんなわけないと思うのだが、普通に理解できているし、会話もできている。うーん。そういうのはまた明日以降考えるか、まだこれが夢の可能性だってあるしな。


 とりあえず飯だ。転生してから初の。


 結論から言うと、美味しかった。とても。

 ナイフを入れると、表面は香ばしく焼き上がっているのに、中は驚くほど柔らかかった。噛むたびに肉汁と脂の甘みが広がり、鼻へ抜ける香草の香りが、独特の野性味をほどよく抑えている。


うまい。


 手は止まることを知らなかった。

 付け合わせのジャガイモ?のような物も前世の記憶にある味とさほど変わりなく、スープも少し塩味が足りないとは思ったが、優しい野菜の甘みが疲れた体に染み渡った。


 意外にも疲れていたらしい。ご飯を食べて元気が出た。やはり母親の料理というのには不思議な力が宿っているものだな。カップラーメンからしか得られない栄養もあるが、母親の料理からしか得られない栄養には遠く及ばないだろう。


 妹のリリアに対しては母親が母乳をあげていた。まだ乳離れはしていないらしい。ノエラを母親と認識し、受け入れようと思った途端にそういう気持ちは一切湧かなかった。母乳をあげている、つまりそれをあげる部分が露(あら)わになっているわけだが…。抱きしめられた時とはまるで違う気持ち。不思議なものだ。


---


 そんな一日を振り返っていた。

 今日は本当にいろんなことがあった。人生で一番だろう。まあ、人生といってもこの世界の僕は五年しか生きていないようだがな…。

 この場合の人生で一番とは、もちろん前世のことだ。前世では家族に囲まれて食事をとるなんて随分していなかった気がする。

 とはいってもまだ若かったから、随分とはいっても二、三年くらのものだった気もするが。


 目の前では、ノエラが楽しそうに笑い、ロベルトが呆れたような顔をしながら料理を口に運んでいる。隣ではリリアがすやすやと眠っていた。


――不思議な光景だった。――


 この人たちが今の僕の家族なのだと、頭では理解している。けれど、どうにも実感が湧かない。

それでも、この食卓を嫌だとは思わなかった。

……まあ、料理が美味しいからというのもあるだろうけど。


 それよりも、魔力、スキルとか考えなきゃいけないことが多すぎる。魔力といったら魔法があるのか?


 とりあえず今日は寝よう。随分疲れたみたいだ。まだ五歳の体だから疲れやすいのだろう。体感ではまだ夜の九時にもなっていないと思うのだが、いかんせんまぶたが重い。前世では日が変わる前に寝ることなんて稀だったのに………。


 なんて考えているうちに僕…ロムウェル=ラーヴェンフェルトは眠りについた。


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