5:幕間1
次回は19時半です!
ここからこの世界の中身に迫っていきますよ……!
世界は誰かに統治されている。
それは貴族であったり、王であったり、神であったりする。
だが、それらよりも上の存在がいるのだ。
——管理者。それが世界に一人だけの、唯一の、孤独な統治者の呼び名であった。
少女は生まれた時から管理者だった。
周囲の人間とは異なる淡い極彩色の髪と、碧い瞳。そして唯一の異能。
それら全てが少女を管理者たらしめていて、その世界の人間は少女を管理者と呼んだ。世界に存在していた遍く王や貴族が平伏した。最初は困惑した。けれど、次第に期待に応えようと思い始めた。
だから、少女はひたすら努力した。民衆の声を聞き、部下に指示をし、良き統治者であろうとした。部下が言うから戦う訓練もした。可能な限り皆と仲良くしようと思った。
雨の降る日、部下は言った。他の世界からの侵略者が来ていると。
少女の世界は第八世界と言うらしかった。自分以外にも管理者がいる世界があったのだ。
だから仲良くしようと考え、案内する先へ向かった。
そこに広がっていたのは、血みどろの光景だった。無数の異世界の人間——冒険者たちが赤い液体の付着した剣を持っていた。つまり、少女の民を殺したのだ。
彼らは笑っていた。喜んでいた。
そのとき、少女は自らの立場の意味を理解した。
少女は剣を手に取り、魔法を唱え、異能を駆使した。ただ、平和を願ってのことだった。
気づけば、辺りは紅の海だった。
空から降る雨すら赤く染まって見えた。
満足することなく、少女は相手の世界へ反撃に打って出た。
そこでも少女は最後まで立っていた。笑い、喜びながら。
——その日、少女は管理者の権利と、少女の世界を、〝更なる上位存在〟に剥奪された。
残ったのは、奇特な髪色と魔法だけだった。
◇
世界は管理者に染まる。
その常識を知らないのは、モノクロで構成され、秩序を崇拝する規定世界の住人だけなのだろう。
そんな推測が事実であったのだと、そびえ立つ巨大な壁——境界線に座る少女は理解した。
赤、青、緑、紫……純白だったはずの境界線が、今や画家のキャンバスの如く無限の色に染め上げられ、それを見た白い人間たちも色に染まっていったからだ。
「ほんっと、ここは気持ち悪い世界だね。どこを見ても白か黒ばかりで、色と呼べる色は一つもない」
少女はため息混じりの声で、退屈そうに呟いた。
見渡す限りモノクロのビルが立ち並び、秩序の素晴らしさを称える文言が街中の看板やポスターに連なっている。
一方、少女の眼下は騒がしかった。
「な、なんだこれ!? 身体に……気持ちの悪い……!」
「白じゃない! 黒でもない! 知らない何かがっ!」
「助けてくれ! 我らが秩序よ、俺たちの秩序を守ってくれ!」
「秩序! 秩序が侵害されている!!」
少女からすれば、実に人間らしい色合いになった人間が、身体を掻きむしったり走り回ったりしている。
彼らの足元には色があった。真っ白な道路を侵食するように伸びていく色彩は、その上にある建造物や人を染めた。そして同じように狂い出していった。
再びため息をついた少女は、視線を戻した。
その先にあるのはどこまでも白く、複数の線が螺旋を描きながら一本に収束している塔。下にいる人間たちが助けを乞っている対象だ。
あそこに少女の目的——探し物がある。正確には、探し人を探すための物だ。
塔に向けて少し身体を斜めに傾ける。
「〈風よ、爆ぜろ〉」
少女がそう唱えた刹那——少女は目にも止まらぬ速さで空を駆け抜けていく。全身に当たる風は少女の髪を揺らす。何の匂いもしない空気が肺に流れ込む。
景色は流れ、殆どの建物は碌に認識できない。しかし、一際大きな建物が注意を引いた。ビルと違って横にも長く、側には大きな広場も隣接している。それが、少女の知る〝学校〟と似ていることに気づくと、寄り道をすることに決めた。
学校にはたくさんの人間がいるらしい、と少女は知っていた。
だから——自分の色に染まらない者を探してみたくなったのだ。
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