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【連載完結】あらゆるイケメン達が王女の私を称賛してきて、とにかく最高です!  作者: 逆立ちハムスター


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8/10

至高の乗馬

執務室での濃密な「知性の称賛」を終えた私は、次なる快楽——すなわち、野生の生命を跪かせる全能感を求めて、王宮の広大な外苑に位置する「白銀の厩舎きゅうしゃ」へと向かった。


爽やかな風が吹き抜ける馬場で私を待っていたのは、王室御用達の馬術指導官、カイ。

日に焼けた小麦色の肌に、乗馬ブーツを履きこなした引き締まった肢体。ラフに崩した栗色の髪の間から覗く瞳は、鷹のように鋭くも、対象を慈しむような野生の熱を帯びている。

まさに、荒野を駆ける風を擬人化したような、ワイルドな超絶イケメンだ。


彼は、私が馬場に足を踏み入れた瞬間、手に持っていた鞭を投げ捨て、地面に膝をついた。


「……っ。ホメーテ王女。本日も、……いえ、今この瞬間の貴女は、メリゼルヴァイエナータ、そのものだ。貴女が歩くたびに、土の下で眠る種たちが芽吹く準備を始めていますよ」


カイは立ち上がると、私のエスコートのために「超至近距離」まで詰め寄ってきた。

彼からは、乾いた草の香りと、生命の躍動を感じさせる野性的な体臭が漂う。


「さあ、王女。今日、貴女の『愛』を受け取る幸運な者は……この、誰の手にも負えなかった暴れ馬『ディザスター』です。……ですが、貴女の前では、この名前も無意味になる」


目の前には、黒真珠のように艶やかな毛並みを持つ巨大な駿馬が、荒い鼻息を吐いて暴れていた。

だが、私がその鼻先にそっと手を伸ばした瞬間。……奇跡が起きた。

ディザスターは、雷に打たれたように静止し、私の手のひらに、甘えるように額を擦り寄せてきたのだ。


カイは、その光景を「超接写」で見つめ、喉を震わせるような称賛を吐き出した。


「……ああ、……っ! なんという慈愛。なんという神聖な調和だ。……ホメーテ王女、貴女の指先から溢れ出す母性が、この荒ぶる魂を一瞬で浄化した! 貴女のその、動物の魂の深淵を覗き込むような優しい瞳……。それを見ただけで、どんな猛獣も牙を捨て、貴女を守る盾になりたいと願うだろう。……ああ、その馬が羨ましい。僕も、僕も貴女の手のひらで、その慈しみの雫を浴びて、大人しく飼い慣らされたい……!」


(ふふ、いいわよ。動物も人間も、私の前ではただの「愛されたい子供」に過ぎないのだから!)


私は、ディザスターの背に、一切の無駄がない所作で「跨った」。

あぶみに足をかけ、ふわりと宙を舞うようなその一連の動きは、物理法則を無視した芸術のよう。


カイは、私の腰の位置を微調整するふりをして、その逞しい腕で私の体に触れ、耳元で熱っぽく囁き続けた。


「……完璧だ。この、鞍と一体化したような腰のライン。……ホメーテ王女、貴女が馬に跨った瞬間、この世界に新しい『調和』の定義が生まれた。貴女の姿勢は、大地の重力と天界の引力が、一点の狂いもなく交差する黄金の軸だ。……見てください、その手綱を握る指先! 力を入れず、しかしすべてを支配するその『手綱さばき』! それは、アスクロノリュフィア! 運命の糸を操る女神の指先だ。貴女が少し指を動かすだけで、この馬は、……そしてこの僕の心臓は、貴女の望む方角へと、喜んで駆けていくだろう……!」


(運命の糸を操る女神! カイ、野性味溢れる見た目に反して、なんてドラマチックな褒め言葉を吐くの!)


私は、ディザスターを走らせた。

風を切り、土を蹴り上げる。どんなに速度を上げても、私の体は微塵も揺らがない。


カイは、並走する馬に飛び乗り、私の真横にぴたりと寄り添いながら、風に声を乗せて絶叫に近い称賛を続けた。


「……ああああッ! 素晴らしい! その疾走感! 貴女が駆けるたびに、草原の花々が貴女を称えて一斉に開花していく! 王女、貴女のその、風を従えるような高潔な横顔! まさに勝利の女神が、地上の泥を嫌って馬上に逃げ延びた姿だ! 貴女が鞭を当てる必要などない。貴女のその、誇り高い『魂の重み』を感じるだけで、この馬は自分の命を燃やしてでも、貴女を世界の果てまで運び続けるだろう……!」


「……っ、ふふ、あははは! 気持ちいいわ、カイ! 風さえも、私を褒めちぎるための溜息に聞こえるわ!」


「溜息どころか、宇宙の喝采ですよ! ホメーテ王女、貴女のその、動物と心を通わせる『無垢な支配』! それは、力による服従ではなく、美しさによる救済だ! 貴女に跨がれる栄誉を、全生物が、……そしてこの僕が、骨の髄まで欲している! ……ああ、もうダメだ、……貴女のその、汗をかいて輝く首筋を見ているだけで、僕は、……僕は、貴女を乗せて走る『馬』そのものに転生したいッ!!」


(馬に転生したい! 究極の「下僕願望」ね!)


私は、ディザスターを急停止させ、優雅に地上へと降り立った。

ディザスターは、満足げに私の肩に顔を寄せている。


カイは、馬から転げ落ちるように降りると、私の足元に跪き、私の乗馬ブーツの先に額を押し当てた。


「……終わってしまった。……王女、貴女が大地に降り立った今、この草原はただの野原に戻り、この馬はただの家畜に戻ってしまった。……責任をとってください。貴女が再び手綱を握るまで、僕は、……僕は、自分の足で歩く方法さえ忘れた迷子になってしまう。……王女、貴女という野生の輝きが、僕の魂に、一生消えないひづめの跡を刻んでしまったんだ……!」


カイは見上げ、その野性的な瞳に、強烈な忠誠心と、ドロドロとした称賛への執着を滲ませて私を射抜いた。

その瞳には、「この高潔な支配者を、誰にも触れさせたくない。自分だけがその騎乗の美しさを記録する影でありたい」という、指導官特有の静かなる独占欲が、熱い砂のように舞っていた。


(……ふふ、あははは! 堪らないわ! 荒ぶる生命を飼い慣らす喜びさえ、私にとっては最高の『称賛の餌』になるのね!)


私は、カイの顎を乗馬鞭の柄で軽く持ち上げ、勝利の笑みを浮かべた。

エスタシオン王国の第一王女、ホメーテ。

私の承認欲求は、今や、一歩の疾走さえも「神話の再現」へと変えてしまう、絶対的な魔力を帯びていた。


背後の生垣の影では、ジルヴェスター殿下、セバスチャン、レオン、カイン、ヴィクトール、そしてユリウスの六人が、

「……カイの野郎、『馬に転生したい』だと!? その野生剥き出しの変態的褒め方、……もはや人権を捨てた究極の戦術だ……!」

「……あのワイルドな男が、あんな情けないほどに跪いて……。侮れん、……あの筋肉に宿る称賛の語彙力、……恐るべきパワーだ……!」

と、次なる「最終決戦」に向けて、自らの喉を潰すような思いで、全宇宙を肯定するような究極の褒め言葉を練り上げているのを、私は、……そう、当然のごとく、最高に心地よい「草原の風」と共に、優雅に受け止めてあげたのである。

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