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第65話:ドンの帰還と、伝説のオンライン講習会


芸能界に激震が走った。

「スターエイト」が芸能事務所へと移行し

あの村谷社長が伝説の黒幕としての沈黙を破り

表舞台に舞い戻ってきたという噂が

一気に広まったのだ。


「まさか、最強王者クリスタルを従えて

戻ってくるとは……」


かつてスターエイトを離れ

他社へ移籍していた役者や歌手、芸人たちが

ドンの帰還を聞きつけて次々と出戻ってくる。


事務所内は活気づき

村谷社長は旧知のタレントたちと

楽しげに談笑していた。


そんな光景を、ライバー部門のデスクで

足を組んで眺めていたのがクリスタルだ。


「……へぇ、賑やかでええやん」

満足げな彼を見つけ

戻ってきたばかりの若手役者たちが

物陰でコソコソと囁き合う。


「なぁ、ライバーって普通

事務所に来ないよね?

噂、本当なのかな」


「社長って伝説の黒幕なんでしょ?

……じゃあ、それを顎で使ってるっていう

クリスタルさんって、社長より怖いの?」


すると、背後から

「なぁに話してるのかなぁ?」と低い声。


「ひっ……!」

役者たちが飛び上がって振り返ると

そこには満面の笑みを浮かべた

村谷社長が立っていた。


クリスタルはその様子を横目で見ながら

吹き出しそうになるのを必死で堪えていた。



その頃、マネージャーたちは全所属ライバーへ

ある重要な通知を一斉送信していた。


――『クリスタル主催:オンライン講習会のお知らせ』。



ももかの配信中

リスナーが興味津々にコメントを打つ。


『ももかちゃんの事務所

ついに芸能事務所になったんだってね!』


「そうだよー!

急だったから私もびっくりしたけどね」


そこへ海斗からもコメントが飛ぶ。

『海斗:噂だと、社長さんって

芸能界の黒幕だった人らしいけど

ももか大丈夫?(笑)』


「たまに聞かれるけど、わかんないよ。

……まぁ、噂では聞くけどねぇ」


ももかは笑顔で答えるが

内心では冷や汗をかいていた。


(サラさんの件がピタッと止まったのは

社長が裏で手を回したのかな。

でも、その上にクリスタルさんがいるんだよね。

噂が本当なら……ちょっと怖いかも)


「じゃあ、そろそろ終わるね。

これから講習会なんだ!」


『海斗:講師は誰? 頑張って』


「クリスタルさんだよー! ありがとー!」


ももかが返すと、コメント欄には

『恐怖のクリスタル講習会w』

『生きて帰ってきてね』と

愛ある(?)野次が飛び交う。


ももかは大笑いしながら配信を切り

講習会専用の特設ページへとログインした。



画面を開くと

中央には堂々と鎮座するクリスタル。


その周囲を囲むように

数十人のライバーたちの小窓が並んでいる。


「参加ありがとう、クリスタルです。

とりあえず3日に分けてやるけど

内容は全部同じやからしっかり聞いてな」



淡々と、しかし的確に

配信のノウハウを説いていくクリスタル。


ももかが聞いた話ばかりだけど

復習のためしっかり聞いていた。


一通りの説明が終わると

質疑応答の時間が設けられた。


一人の男性ライバーが恐る恐る挙手する。

「……あの、クリスタルさんが

事務所の実権を握ってるっていう

噂を聞きましたが、本当ですか?」


(本人に聞く!?)と

ももかが吹きそうになった瞬間

クリスタルは笑いを堪えながら答えた。


「……あくまで噂です(笑)」


「じゃあ、ももかさんの

マネージャーをしてるって噂は!?」


「それは本当です」


食い気味の回答に、クリスタル自身も

「……ってか、講習と関係なくね!?」と爆笑。

つられて全員が笑い出し

ももかもお腹を抱えた。


すると、クリスタルが

画面越しにももかを見つけた。


「あ、そや。ももか。ドラマの話、来とるで」


「今言います!? やりますけど

……後でメールでいいじゃないですか!(笑)」


「せやな。でも、ももかはこれで

正式に女優デビューやからな。

芸能部門へ移動や。

ライバーのマネージャーは俺のままやけど

女優のマネージャーは新たにつくから。頑張れよ」


画面中に拍手の絵文字が飛び交い

全員がおめでとうと叫んだ。


ニコニコと喜ぶももか。

しかし、この数日後

彼女は「村谷社長」のえげつない伝説を

直接目にするようになり

自分を育てた王者の恐ろしさに

改めて戦慄することになるのだが

……それはまた、別の話である。




お読み頂きありがとうございます

次回も楽しみに♡

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