第62話:復縁の誓いと、女王野緊急警報
千葉ユカリと対面した瞬間
クリスタルは溢れ出しそうな
「抱きしめたい」という衝動を必死に抑え込んだ。
リビングに通し、ソファに座るよう促したが
ユカリは俯いたまま肩を震わせている。
「……座れよ。久しぶりやな。どしたん?」
「ごめん……テレビで、認めちゃった」
泣きそうな声に
クリスタルは優しく答える。
「見たわ。俺は構わんよ。
でも、ユカリの方は大丈夫なんか?」
「なんでそんなに優しいの?
いつも自分のことより私の心配ばかり……」
「座れって。
そりゃ好きな女の心配くらいするやろ」
その言葉にユカリが堪えきれず泣き出すと
クリスタルはついに彼女を強く抱きしめた。
「……泣くな。あの時は、すぐに謝れんでごめん」
「私こそ、ごめんね……。
雅樹のこと、まだ好きなの」
本名で呼ばれ、クリスタルの目頭も熱くなる。
「俺もや。俺もまだ好きやで」
しかし、ユカリの次の言葉に
クリスタルは息を呑んだ。
「姫宮サラさんが雅樹を狙ってるって聞いて
……その直後に私の事務所に
あの報道(過去の交際)の話が来たの。
誰かのタレコミみたい。
さゆみちゃんに聞いたら
きっとサラさんが調べ上げたんだって……」
クリスタルは悟った
美月さゆみが予約バトルを申し込んできたのは
単なる忠告ではなく
この包囲網を知らせるためだったのだ。
ソファでユカリを抱き寄せたまま
クリスタルは現実的な懸念を口にする。
「俺んとこ戻って大丈夫なんか?
サラがそこまで調べとるなら
すぐバレるんやないか」
「大丈夫。社長には話してきた。
『反対するなら女優辞める』って言ったら
笑いながら許してくれたよ。
もしタレコミされても
『あのクリスタルが相手なら
話題性(旨み)がある』って」
「……なんやその社長(笑)」
クリスタルが吹き出し
ユカリもようやく小さく笑った。
「今度、美月さゆみと予約バトルすんねん。
サラの事でうちのリスナーにも
話したいことがあるって」
「さゆみちゃん、雅樹のこと尊敬しとるんよ。
『最強王者が失脚したらアプリが終わる』って言ってた」
「苦笑いしか出んわ。
……でも、クリスタルの名前に傷がつけば
俺を支えてくれとる古参たちの顔に
泥を塗ることになるからな」
ようやく戻ってきた最愛の女。
そして自分を王者にしてくれたリスナーたち。
(今度こそ、ユカリと枠……全部守り抜いたるわ)
王者の胸に
かつてないほど強い決意の火が灯った。
美月さゆみとのバトル開始10分前。
テレビでは姫宮サラが
生放送に出演しているのを確認し
クリスタルは配信を開始した。
リスナーが怒涛の勢いで流れ込み
画面が落ち着いた頃
運命の二分割画面が映し出された。
「どーも、クリスタルです。お誘い感謝ですわ」
「こんにちは。……あ、皆さんに言ったでしょ
今日は勝ち負けじゃないの! ギフトストップよ!」
「おい! うちもストップや。
……で、さゆみさん。共有したい話って?」
美月さゆみは真剣な表情で
画面の向こうのリスナーへ向けて放った。
「姫宮サラのことです。
クリスタル信者の女性陣、特に聞いて。
サラは目障りだと思ったら
平気で排除しに来ます。
……現に、彼女の排除対象が芸能界にいます。
クリスタルさんの元カノさんですよ」
「マジっすか……」
クリスタルは血の気が引くのを感じた。
不倫報道さえもサラの仕業だったというのか。
両方の枠のコメント欄はパニック状態だ。
『ユカリちゃんの報道、ガセだったの!?』
『サラちゃん怖すぎる……』
「クリスタルさんの住所特定や
元カノさんへの追い込みも視野に入れて。
皆さん、団結して守ってあげて」
その頃、クリスタル枠の
レベル300超えの猛者たちは
既に姫宮サラの所属事務所の
裏情報を洗い始めていた。
クリスタルもまた
スターエイトの「お飾り社長」が持つ人脈を
フル活用させる算段を立てる。
(自分はどうなってもええ。
でも、ユカリとこの枠だけは
指一本触れさせん!)
王者の反撃が、静かに幕を開けた。
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次回も楽しみに♡




