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第60話:真夜中の疾走と、王者の同盟

主役のミサキ出しとかんとw


山本勇次の配信が終了しても

ミサキは結局最後まで

コメントを打たなかった。


ファンクラブ専用の

退室通知が出なかったことで

彼女がずっと画面の向こうにいたことは明白だった。


「……ヤバい、マジでヤバい」


配信を切るなり

勇次は震える指でミサキに電話をかけた。


数回のコールの後

消え入りそうな声が響く。


「……勇次くん」


「ミサキ! 不安にさせてごめん!

俺が好きなのはミサキだけやから、マジで!」


「……信じてるよ。

でも……私で本当にいいのかなって

思っちゃって」


弱々しくこぼれたその言葉に

勇次の脳内回路が焼き切れた。


「ミサキじゃなきゃ嫌なんや!

もう、待っとけ! 今からそっち行く!」


「え? 今から!? ちょっ、勇次くん……!」


ミサキの動揺を余所に

勇次はスマホをぶち切りすると

着替えもそこそこに部屋を飛び出した。


その頃、アプリ内の各枠では

「姫宮サラ・ヤバい説」が

燎原の火のごとく広がっていた。


事情通のモデルライバーたちが

「これ内緒やけど……」と

サラの過去の執着ぶりをリスナーにリークし始め

それを聞きつけたクリスタル枠の偵察部隊が

グループチャットを猛烈な勢いで更新していく。


勇次枠でのやり取りを含め

表に出ていないサラの「毒」が次々と共有され

包囲網が形成されつつあった。



一方、クリスタル枠の

「作戦チーム」グループチャットも

かつてない揺れを見せていた。


普段はイベントの戦術を練る

硬派な古参集団だが

今回ばかりは「姫宮サラ襲来」の報に戦慄が走る。


「ただのガチ恋ならええけど

サラは気に入った男を奪うために

手段を選ばんらしい」


「うちの女性リスナーたちが

狙われたらたまったもんやないぞ!」


クリスタル枠の2割を占める

女性リスナーは数千人規模。


彼女たちが排斥される事態は

枠の崩壊を意味する。


そんな中、クリスタルの元に一通のDMが届いた。


送り主は、アプリ内イベントでのみ活動する

人気女優、美月さゆみ。

女性ライバーの頂点に君臨しながら

あえてプロライバー契約をしない

「知る人ぞ知る女王」だ。


『予約バトルをしませんか?

クリスタル枠の皆さんにも

共有したいお話があります』


クリスタルが『姫宮サラのことですか?』と

即座に返すと

彼女から破壊力抜群の返信が来た。


『よくお分かりで。

私が売れ出した頃に付き合っていた

人気俳優の彼氏

サラに寝盗られてましてね』


さらには

『バトルの時間はサラが

生放送に出ている時間を指定します。

あいつには見せません』という徹底ぶり。


流石の王者も

女の執念と手際の良さに

「……女って怖っ」と戦慄を禁じ得なかった。



ミサキとの電話を切った勇次は

財布とスマホだけを握りしめて

新幹線に飛び乗った。


一方、駅の改札付近で待つミサキは

押しつぶされそうな不安の中にいた。


ドラマの現場で

容姿端麗な人気女優やモデルを

間近で見てきたミサキ。


才能はあっても

外見への自信は揺らいでいたのだ。


2時間後、勇次はミサキの住む駅に降り立った。


改札を抜けた瞬間

柱に寄りかかってうつむく小さな背中を見つける。


「ミサキ!」

勇次は人目も憚らず

彼女を力いっぱい抱きしめた。


「ひゃっ……!」

驚いて声を上げるミサキの耳元で

勇次は真っ直ぐに告げた。


「ミサキ、好きだ。愛してる」


その熱い言葉に

ミサキの瞳から堪えていた涙が溢れ

彼女は何度も小さく頷いた。


その様子を偶然通りかかった

ミサキの親友が目撃していた。


(凛夏が抱きしめられてる

……顔は見えんけど

あのオーラ、山本勇次だ……!)


「こんな場所で抱きしめるとか

喧嘩でもして飛んできたのかな。

……いいなぁ、情熱的で」


親友が羨望の眼差しを向ける中

真夜中の駅のホームは

二人の絆をより深く結びつけていた。




お読み頂きありがとうございます

次回もお楽しみに♡

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