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追放されたトップヒーロー、海外進出する〜俺がいなくなったら劇的に治安が悪化するけど日本の皆さん大丈夫?〜  作者: サトウミ


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ヴィクトリア・ジャカローネ戦②

「貴様らは、私が喰らいつくす!」


ヴィクトリアは無数の虫達と一緒に、一斉に俺達に襲いかかった。

何度も死に戻りしたおかげで、コイツらの回避法はある程度思いついている。


俺はデーモンマンに変身すると、ソイを持ちながら黒い翼を羽ばたかせて空を飛んだ。


ヴィクトリアも虫達も、空を飛べない。

なので宙に浮けば、下からは襲ってこれないだろう。


「小賢しい! それで逃げたつもりか?」


ヴィクトリアは俺達に向かって蜘蛛の糸を勢いよく出す。

だが俺はそれも見越して天井近くまで飛んでいたため、糸は俺達に届かず、先端は弧を描くように失速して床に落ちた。

糸で捕まえることができなかったヴィクトリアは、俺達を睨みながら舌打ちをする。


「サスケ殿、狙うはヴィクトリア殿でござる。『産卵』の異能は本体のみが持っている故、彼女を先に倒して増殖しないようにするで(そうろう)。虫達は彼女を倒した後で始末するでござる」

「わかった」


「しかし彼女達は『異能喰らい』の異能を持っている故、無闇矢鱈な攻撃は逆効果で(そうろう)。異能を食われないように気をつけながら攻撃するでござる」

「無茶な要望だよ! …でも、やってみる」


ソイは金属の異能で、鋭い槍を作る。

俺はその槍がヴィクトリアに届く位置を見定めつつ、彼女に捕まらないよう細心の注意を払いながら近づいた。


「そんな軟弱な槍で、私を倒せると思っているのか?」


ヴィクトリアと虫達は壁を登り、天井まで辿り着いた。

彼女達が次に取る行動も、知っている。


「サスケ殿。一旦、降りるで(そうろう)


俺が床につくギリギリの高さまで降下した直後、天井からは糸に吊られたヴィクトリアと無数の虫が、振り子のように右へ左へ揺れながら落ちてきた。

身体の大きなヴィクトリアがその巨体を大きく揺らす度に、天井は悲鳴を上げ、きしみ音や粉塵が落ちる。


その様子を見たソイは『ひぃ』と小さな悲鳴をあげた。


「さっきから逃げるのだけは一人前だな、腰抜け忍者ども! いい加減、諦めて私に食われるがいい!」

「御免被るで(そうろう)! カニバリズムは反対でござる!」


天井からぶら下がっていたヴィクトリアだったが、やがて天井が彼女の重みに耐えきれなくなり、天井の木材と一緒に彼女が落ちてきた。

天井には人一人通れそうなくらいの小さな穴が開き、そこから空が見えた。


ヴィクトリアは、床に落ちてきてすぐにジャンプして、俺達を捕まえようとする。

それを俺は横に避けると、ソイが攻撃できるよう彼女の背後に回った。


ソイは手に持っていた槍を投げて、彼女の腹部を刺す。

彼女は呻き声を出すと、意地を見せるように俺達に向かって糸を出した。

糸に捕まりそうになったが、ソイが機転を効かせて鉄の盾を作ってくれたお陰で、直接糸が俺達に引っ付くことはなかった。


ヴィクトリアは糸を辿って鉄の盾を奪い取ると、強靭な顎でボリボリとそれを貪る。


「うわぁ。鉄ですら簡単に食べるなんて…。捕まったら、一瞬で食べられそうだ」

「ハッ! そんな心配している場合か?」


彼女は不敵な笑みを浮かべると、突然、頭上から無数の虫達が降ってきた。


「しまった! でござる!」


ヴィクトリアに気を取られて、虫達が天井にぶら下がっているのを忘れていた。

虫達は振り子のように揺れて助走をつけて、俺達に飛びかかったのだろう。


ソイは咄嗟に降ってきた虫達に対して、風を繰り出した。

虫達は風で吹き飛ばされながらも、風を喰らって大きく成長する。

落ちてきた虫のうちの一体が、ヴィクトリアに刺さった槍を完食すると、糸を出して包帯を巻くように彼女の傷口を塞いだ。


さて、どうしたものか。

辛うじて虫達を躱すことができたものの、状況は悪化した。


彼女達は床にいても空中にいても、俺達に近づける。しかも異能を使えば使うほど、彼女達の戦力が上がってしまう。

『異能喰らい』さえなければ、数が多くても対策が打てるのに。本当に厄介な異能だ。


「ところでヴィクトリア殿は、人間を食べることに抵抗はないのでござるか? そなたも同じ人間ではござらぬか」


対策が思いつかなかった俺は、とりあえず時間稼ぎに話を振る。

すると彼女は、鎌の手を口に当てて大笑いをした。


「私が人間、だと? アハハハハ! 笑わせるな。お前達ヒーローも、ここにいる観客どもも、誰一人、私を人間だと思っていないだろ!」

「そんなことは、ないでござる」


「口では何とでも言える。だけど貴様らは誰一人、私を人間として扱わなかった。それが答えだ! 私を人間と同じように扱ってくれるのは、クライムファミリーだけだ!」


時間稼ぎのつもりだったが、悪いことを聞いてしまったな。

彼女の凄惨な過去を思い出して、俺は同情した。


「それは、申し訳なかったでござる。ヴィクトリア殿の可哀想な過去に触れるつもりはなかったで(そうろう)


そう言った途端、さっきまで大笑いしていた彼女は笑いを止め、触覚を垂直に上げて威嚇するように睨んできた。


「私が……可哀想? 私が、可哀想だと!? クライムファミリーのアンダーボスである、私が? ふざけるな! 貴様、私を愚弄する気か!」


「違いまする! 拙者はただ、生い立ちに同情しているだけで(そうろう)


「っ〜〜!! 貴様だけは、絶対に許さない! 貴様はただ殺すだけでは生ぬるい。死をも超える恐怖を味わわせてやる!」


煽ったつもりはなかったのに、結果的に彼女を激昂させてしまった。

…さっきの俺の言葉に、キレる要素があったか?

きっと複雑な乙女心、というやつだろう。


怒ったヴィクトリアはトニーが作った時空の裂け目に近づいて、聞いたことのない咀嚼音を出しながらペロリと完食した。

同様にソイが出した木も食べると、彼女の腹部は大きく膨れ上がる。


そして彼女は、胸部と腹部の間のあたりから乳白色の卵を床に押し付けるように生み出した。

卵からは無数のヴィクトリアの分身が、わらわらと出てきた。


「さぁ行け! 我が子達よ!」


新たに分身を生み出したことで、ヴィクトリアの配下の虫達は倍の数になった。

絶望的な光景に鳥肌が立つ。


「ねぇ、フーマ。ちょっと試したいことを思いついたんだけど、いい?」

「何でござるか?」


ソイは俺に聞こえる程度の小声で、作戦を教えてくれた。

……なるほど、名案だ。


俺達はさっそく、その作戦を実行した。


「忍法・火遁の術!」


ソイはステージを覆うような業火を繰り出し、その間に俺は()()()をした。


「ハッ! そんな攻撃は効かないと、まだ分からないのか?」


ヴィクトリアと虫達は燃えながらも、業火をどんどん食いつくす。

中には燃やされて死滅した虫もいたが、彼女達はそれすらも胃袋へ詰め込む。

業火という栄養源を得た虫達は、凄まじいスピードで成長し、とうとう本体(ヴィクトリア)と同じくらいの大きさになった。


彼女達は最後の一口まで貪り()()させたところで、ようやく異変に気付いたようだ。

業火に気を取られている隙に、俺はたくさんの分身を出していた。

分身は本体同様『ソイ+ソイを掴んで空を飛ぶデーモンマン』の組み合わせに変身して、四方八方へ逃げ回る。


「小賢しい真似を。それで本体を誤魔化したつもりか?」


分身達は逃げ回りながら、時折、熊などに変身して攻撃する。

対するヴィクトリアと虫達は、糸で巣を作るようにしながら、じわじわと逃げられる範囲を狭め、分身達を捕らえていく。

栄養にされるのを避けるため、分身は捕まった時点で消滅させた。

お互いに数を減らしていくものの、形勢は次第にヴィクトリア達に傾いていく。

分身の数はみるみるうちに減り、とうとう最後の一人になってしまった。


「どうやら貴様が本体のようだな。絶望を味わいながら、ゆっくり死ぬがいい!」


虫達は俺達に向けて糸を出すと、繭を作るようにぐるぐる巻きにする。

やっと手に入れた獲物に、ヴィクトリアは恍惚とした表情を浮かべていた。


「貴様らは、私がじっくり食らってやろう」


ヴィクトリアは虫達から()を受け取ると、それを運びながら虫達から離れた。


今がチャンスだ!


ヴィクトリアが繭を食べようとしたその時、虫達は天井から降ってきた大量の鯨に潰されてぺちゃんこになった。


「なっ! どういうことだ!?」


その光景に驚き警戒し始めたが、もう遅い。

俺の分身はヴィクトリアの上空へ移動すると、鯨に変身して落ちた。彼女は分身に腹部を半分潰され、気を失う。

倒れたヴィクトリアを即座に完全回復させたものの、その強烈なダメージのせいで、彼女は気絶したまま起き上がらなかった。


「うまくいったでござるね。サスケ殿、流石でござる!」


ステージを業火で覆ったあの時。

本体は、ヴィクトリアが天井に開けた穴から外に出ていた。


穴から逃げた本体は、そこで蝿の分身を幾つも出した。

ある程度分身を出したところで、丁度虫達の真上になるように移動してから鯨に変身して落ちた、というわけだ。


さすがのヴィクトリアでも、鯨でぺちゃんこにしたら即死だろう。

そう思った俺は、ヴィクトリアが虫達から離れたタイミングで、先に虫達をまとめて倒した。

その後に、彼女が即死しないよう腹部だけを慎重に狙って鯨になったのだ。

落ちる場所がズレたから倒せないかと思ったが、幸い気絶してくれてく良かった。

むしろ当初の狙い通り、腹部を完全に潰していたら死んでいたかもしれない。


「倒せたのはフーマのおかげだよ。やったね!」

俺達は床へ降りると、ハイタッチをした。


── これで3人目。残りは1人!

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