パフォーマンス前の質問タイム
「シンガール推薦の新人ヒーロー・シャドウズのお二人です!」
司会者に紹介された俺達は、約3000人が見守る大舞台へ向かった。
会場中の視線が俺達に集まる。
手のひらは、自然と汗ばんでいた。
俺とソイは颯爽と舞台の上に立つと、両手を胸元に持ってきて、印を結ぶポーズをした。
「我が名はフーマ」
「我が名はサスケ」
「「我ら、シャドウズ! ここに見参!」」
俺達の登場とともに、観客から温かい拍手が送られた。
「フゥ〜! イカすぜ、シャドウズのお二人さん! それじゃあ、パフォーマンスタイムの前に、軽く彼らを紹介します」
司会者の話に、観客も審査員も耳を傾ける。
「シャドウズのお二人は、去年のヒーロー研修を終えたばかりの新人ヒーローです。研修先のメーン州ボートランドでは、なんと成績トップ! 素晴らしい!」
その紹介に、審査員達は関心を寄せた。
「しかし! 運は彼らに味方しなかった。実は昨年、ボートランドは異常なまでに犯罪件数が少なく、そのせいで彼らはヒーローポイントが稼げませんでした。彼らヒーローポイントは、二人合わせてもたった468ポイント。これは厳しい!」
真面目にヒーロー活動をした結果とはいえ、他の出場者と比べても低いヒーローポイントを晒されて、少し恥ずかしい。
「ですが、そんな彼らを認めるヒーローがいました! それが推薦人である彼女です。ではお呼びしましょう。…シンガール!」
司会者の呼びかけに応じるように、シンガールが舞台上に現れる。
彼女は司会者からマイクを受け取ると、力強い歌声をサビだけ披露して会場を沸かせた。
彼女なりのファンサービスのつもりなのだろう。
シンガールの歌声に魅入られた観客達は、自然と彼女に拍手を送っていた。
「素晴らしい歌声をありがとう! さてシンガール、キミがシャドウズの二人を推薦した理由を語ってくれないか?」
「えぇ。私がシャドウズを推薦した理由は、彼らは絶対にアメリカに必要なヒーローだからよ。彼らがアメリカのトップヒーローになれば、アメリカは世界一、治安の良い国になるわ。私は去年のヒーロー研修で、1年間彼らのバディになってサポートしていたの。ずっと一緒にいたから断言できる。間違いないわ」
「おぉ! キミにそこまで言わせるなんて、凄いヒーローなんだね! 君がそう断言する根拠は何だい?」
「根拠は、彼らが日頃から行なっている『犯罪防止活動』よ」
「犯罪防止活動?」
ヒーローと関係の無さそうな活動に、司会者も観客達も目が点になった。
「彼ら…というよりフーマは、情報収集に長けた異能を持っているの。私が助けた行方不明の女の子も、彼が異能を使って得た情報のおかげで、居場所を特定できたのよ。
彼は普段から異能で得た情報をもとに、犯罪が起きないように未然に防ぐ活動をしているんだけど…その活動は、はっきり言って尋常じゃないわ。去年のボートランドは、犯罪件数が異常に少なかったでしょ? その理由は、彼らがボートランドの犯罪を未然に防いでいたからなの!
…どう? 彼らがいかにアメリカに必要なヒーローなのか、わかったでしょ?」
俺達のことを熱く語るシンガールとは反対に、司会者や観客は冷ややかな目で俺達を見つめている。
シンガールが話し終えると、司会者は苦笑いをした。
「なるほど…。つまり彼らはボートランドの犯罪を防ぎすぎたせいで、ヒーローポイントを稼ぐチャンスを自ら潰していたんだね。とんだ間抜けなヒーローがいたものだ!」
すると会場中が、俺達を嘲笑う声で溢れた。
その様子からして、誰もシンガールの話を信じていないのだろう。
「本当なのよ! 信じてよ! 逆に、あれだけ犯罪が異常に少ない理由は、他に考えられる?」
「あぁ〜。ごめんよ、シンガール。その話が本当なら、確かに優秀なヒーローだ。彼らがトップヒーローになって、アメリカ中の犯罪を未然に防いでくれたら、この国は最高の国になる」
「でしょ!?」
「そしたら、アメリカ中のヒーロー会社は倒産だ。ヴィランがいなくなったら、ヒーローもみんな無職になっちまう。アメリカズ・ゴット・ヒーローも、『ヒーロー』じゃなくて『タレント』に変更しないといけなくなるね!」
司会者のジョークに、観客達は大笑いする。
笑い者にされたシンガールと俺達二人は、悔しさで歯を食いしばった。
「それじゃあ、次は審査員からの質問タイムだ! どなたか、シャドウズの二人に質問はありますか?」
いの一番に手を挙げたのは、ヨンウンのキム社長だ。
「君たちは忍者ってことは、出身は日本なのかい? それとも日系アメリカ人?」
「拙者は日本人でござる」
「僕は韓国人ですが、母は日本人です」
「ほほう、サスケくんは韓国人なんだ。いいねぇ。贔屓はしないけど、同じ韓国人として応援したくなるよ!」
よし!
パフォーマンス前から好印象だ。
次に手を挙げたのは、トゥインクル・スターダストのパーフェクトジュエルだ。
「あなた達は研修の時からチームを組んでいたのよね? 二人はどういう関係なの?」
「僕達はヒーロー試験の時に出会って、仲良くなりました。試験でフーマの実力を見て、彼と一緒ならトップヒーローを目指せると思い、僕から誘ったんです」
「あらそうなの? ジュエルみたいに素敵な話ね」
その話に興味を示したパラゴン・ガーディアンズのウィンフリー社長は、割って入るように質問した。
「ということは、フーマちゃんは相当な実力者ってことね?! ねぇお二人さん。ヒーロー試験の実技テストの結果はどうだったの? 誰と戦ったの?」
「拙者とサスケ殿が戦ったヒーローは、デーモンマン殿とモンキーガイ殿、そしてモーメン・トイ殿でござる」
「僕はデーモンマン戦で44点、モンキーガイ戦で48点取りました。モーメン・トイ戦では残念ながら0点でしたが」
「いいわねぇ。実力派ヒーロー二人から、そんな高得点が取れるなんて見込みがあるわ。モーメン・トイちゃんは規格外だから、勝てなくても気にしないで。自信を持って!」
「ありがとうございます!」
「それで、フーマちゃんの結果はどうだったの?」
「全員、満点でござる」
「…え?」
「全員、50点満点でござる」
「…どういうこと?」
ウィンフリー社長は言葉の意味を理解できずに、目を丸くして俺を見つめる。
「デーモンマン戦で50点、モンキーガイ戦で50点、モーメン・トイ戦で50点、という意味でござる」
ここまで言って、ようやく理解できたのか、口を大きく開けて感嘆の声を漏らした。
「素晴らしいわ。私が求めているのは、そういうヒーローよ! 貴方達のこの後のパフォーマンスが楽しみだわ」
「かたじけないでござる」
やった!
審査員二人から好印象を持たれた。
これで良いスタートを切れるぞ!
ウィンフリー社長が質問を終えると、今度はネクサスのフォーゲル社長が手を挙げた。
「…テメェら、さっき『犯罪を未然に防ぐ』だとか抜かしていたが、今もソレをやってんのか?」
「勿論でござる! ヒーロー研修時はボートランドを中心に活動していたでござるが、4ヶ月前に研修を終えてからはデストロイトを中心に活動しているでござる」
「4ヶ月前に、デストロイトで、だと……?」
するとフォーゲル社長は眉間に皺を寄せて、俺を睨みつけた。
「ちなみにテメェは、ヒーロー研修よりも前にデストロイトでその活動をやっていた時期はあるのか?」
「ござりまする。数年前にデストロイトへ移住してきた故、研修が始まるまではデストロイトで活動していたで候。しかしながら、デストロイトに移住して1年でヒーロー研修が始まりました故、活動期間は長くはありませぬが」
そう言った途端、フォーゲル社長は顔を強張らせる。
「……まさか、な」
何か、まずいことでも言ってしまったか?
まぁ、心配しても言ってしまったものは仕方ない。
その後、審査員から質問が挙がらなかったため、俺達のパフォーマンスタイムがいよいよ始まった。




