↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放されたトップヒーロー、海外進出する〜俺がいなくなったら劇的に治安が悪化するけど日本の皆さん大丈夫?〜  作者: サトウミ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
18/37

滅亡都市のやり直し

ボートランド大地震の、1週間前。

俺は死に戻りで、この日の朝に戻ってきた。


たった1週間でどの程度、被害が止められるかは分からない。

そのため今回やり直した結果を踏まえてから、次回以降、どのくらいの時間を戻すか調節するつもりだ。


この日の俺は、まだ寮の部屋で朝の準備をしているところだった。

ソイに渡すスケジュールが机の上に置いてある。


このスケジュールを破棄して、ソイにも地震対策に専念してもらおうか?

いや、それを踏まえて3人でどうするか相談しよう。


俺はスケジュールを手に取ると、いつも通りに食堂へと向かった。


食堂に着くと、この日の記憶通り、二人はいつも座る窓辺の席で先に朝食をとっていた。


「あっ、ゼン! おはよう!」

「おはよう、お二人さん」


俺は二人のいる席に座り、この日の二人との会話を再(・)現(・)した。


「………へぇ、そうだったの? 今度、聞いてみるわ」

「うん、ぜひ確認しておいて」


会話が一旦、途切れたところで、俺は本題を切り出す。


「ところで二人とも。……実は、重要な話があるんだ」


「え?」

「なぁに?」


何も知らない二人は、いつも通りの朗らかな面持ちで相槌を打つ。


「実は、1週間後……巨大地震が起こって、ボートランドは滅亡する」


「「っ!?」」


それを告げると、二人は目を見開いて、息を呑んだ。


「は、ははは……ゼン、そのジョークはあまり笑えないな」

「そうよ、フーマ。みんなが笑えるジョークを言ってよ」


「ジョーク、だったら良かったんだけどな」

俺が真顔で否定すると、二人の顔から血の気が引き、二人は唇を震わせたまま凍りついた。


「とにかく、そういうことだから、今日から1週間後の地震に備えたいんだ。二人とも、協力してくれ」


「『協力してくれ』って…そんなの、どうすればいいのよ?! ヴィランを捕まえるのとはワケが違うのよ?」


「一応、ある程度は対策を考えてきた。シンガールには、この曲を歌って欲しい」


俺は今のシンガールに、未来のシンガールから引き継いだ記憶を植え付けた。

すると彼女は途端に泣き崩れ、嗚咽した。

その様子に、周囲にいた人は『何事か?』と、遠巻きに俺達を眺めていた。

咽び泣く彼女にソイは戸惑い、ばつの悪い顔で俺とシンガールを交互に見た。


「本当に、この街は…あんなことに……!」

「大丈夫か、シンガール。歌えそうか?」


彼女は手で顔を覆いながら、肩を震わせる。

やがて泣き声が聞こえなくなると、涙を拭い、引き締まった表情で俺と目を合わせた。

彼女の力強い瞳からは、覚悟が感じられた。


「……私、歌うわ!」


よかった。ひとまず彼女の協力は得られた。

その後、俺は二人と話し合った結果、二人には当日まで地震対策に専念してもらうことにした。


シンガールには、あの歌を歌いながらボートランド中を駆け回ってもらった。

彼女が作った歌には、地震で倒れた建物を元通りにするだけでなく、建物そのものを地震で倒れないように強化する力がある。

大きく揺れても建物が崩れなければ、被害は大幅に減らせるはずだ。


加えて、ソイの異能で町中の建物を強化してもらった。

建物そのものを作り変えるのはできないが、土や金属、植物の異能で建物内部の劣化した部分を修繕・補強すれば、少しはマシになるだろう。


それとソイには津波対策として、地震が起こる直前に、土の異能で堤防を作ってもらうことにした。

津波はそれほど高くなく、被害も少なかったが、念のためだ。

とはいえ、今堤防を作ったら市民の迷惑になるので、なるべくギリギリのタイミングで作りたい。


こうして俺達は1週間後に備えて、ボートランド中の建物を強化した。



◆◆◆



──1週間後。

今日の夜11時55分、巨大地震が起こる。

この日、ソイとシンガールは、いつも以上に張り詰めた表情で町を巡回していた。


俺とソイ、そしてシンガールは、夕食をとった後に記念碑広場へ集合した。


記念碑広場には剣と盾を持った女性の像が凛々しく建っていた。

その神々しさは、まるで勝利の女神のようだった。

とても目立つ像で、待ち合わせの目印に最適だ。

日本で言うところの忠犬ハチ公像のようなものだろう。


「ねぇフーマ。あと何分で地震が起こるの?」

「今は9時48分だから、あと2時間7分後だな。分で換算すればあと127分後だ」


二人は落ち着きがなく、まるで万引き犯のように挙動不審だった。

心ここにあらず、といった感じだ。


「……ねぇ、ゼン」

「なんだ?」


「今思ったんだけど、僕の異能で地震そのものを無くせないかな? 僕の土の異能で大地に干渉して、揺れ始めたタイミングで揺れを止めるようにコントロールすれば、地震が止まるんじゃないかな?」


ここに来て意外な提案が出た。

その手があったか。目から鱗とはこのことだ。


「試してみる価値はあるな。地震の被害が一番大きかったのはボートランドだから、きっと震央はこの町にあるはずだ」


むしろボートランド以外は、ほとんど地震の被害はなかった。

この町以外で震央があるのは、あり得ない。


「それじゃあ、ソイ。頼む!」

「うん、任せて!」


……それから約2時間後。

いよいよ、地震が起きる1分前になった。

ソイは地面に干渉して、いつでも地震を止められるようにスタンバイしている。


「……… 3 …… 2 … 1」


とうとう、地震の起こる11時55分になった。

ボートランドはいつ揺れても、おかしくない。

俺も、俺の分身達も、ソイも、シンガールも。

みんな、地震に警戒して息を呑んだ。


………。

……。

…。


「ソイ、もう地震は来たのか?」

「いや。大地からは何も感じないよ」


おかしい。

あれから10分経ったが、一向に地震は来ない。

あまりにも時間が経ちすぎているため、ソイが既に地震を止めてくれたのかと思った。


「フーマ、もう一度確認するけど、今日なのよね?」

「あぁ、そうだ。……そのはずだ。多分」


記憶違いかと思ったが、何度思い出しても今日で間違いない。


「だったら、バタフライエフェクトで地震がなくなった可能性はないかしら?」

「なるほど。ゼンは今回、1週間も時間を戻しているもんね。それだけ長い時間をやり直すとなると、影響する範囲が大きくなって、地震そのものがなくなってもおかしくないかも」


二人はその結論に至ると、納得したように頷き、災害が起こらなかった安堵で笑みをこぼした。


「バタフライエフェクト、か……」


どこか腑に落ちない。

バタフライエフェクトをこれまで何度も実感したことがあるが、今回のはそれとは違うような気がする。

過去に起こった地震や津波は、1度起きたら何度やり直しても同じ時間に発生していた。

時間がズレたり、そもそも起こらないというは、初めての出来事だ。


今回の地震は、言葉で表せないような違和感がある。


「とりあえず、地震はなくなったってことで、いいよね?」

「きっとそうよ! 何も起きなくて、よかったわ! もう今日は遅いし、帰って寝ましょ♪」


「あぁ……そうだな」


俺は言葉にできない違和感を無視して、ひとまず寮へと帰った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。