2話-9
「やーまーと」
上原さんは料理を持って奥のテーブルにむかった。そこは羽月さんや、同じクラスの倉多さんがいる班だった。
上原さんは料理を持った皿を見せながら何か云ってる。班員たちは皆笑顔で何かを了承した。そして深いお皿を二枚取り出し、そこに自分たちの料理をすくう。ああ、料理の交換を提案したのか。
そのまま上原さんは手ぶらで、後ろから背の高い男性が両手に深皿を持ってこちらに戻ってくる。男性の服装はとても個性的で、エプロンがミラーボールみたいにキラキラ反射していて、真ん中にピンクとイエローで描かれた猫の様なキャラクターが、花束を持って英語で何か叫んでいる。花束は立体になっていて、エプロンとして正しいのだろうか。バンダナは同じ様にミラーボール仕様で、ピンポン球を先につけた様な触覚が二本生えていた。
「ただいま~。あっちポトフ作ってたから交換してきた」
「水谷さん、その恰好どうしたんですか?」
「あ~いや、これはな」春日野さんが男性から深皿を受け取り、上原さんが男性のバンダナやエプロンを外す。
「さっき修弥が持ってきたくだらない衣装じゃない。着ないんじゃなかったの?」
「真央が食材を切る担当じゃなかったらそうしたんだが、あの目で見られながら包丁を握られてはな」男性は振り返り、羽月さんが包丁を握ったままこちらを見ているのを確認して、またこちらを見た。「修を俺に取られるんじゃないかと、猫みたいに目を光らせてるからな」
男性の名前は水谷大和さん。上原さんの彼氏で、羽月さん、倉多さんと同じ中学だとか。だから上原さんがあんなにあっさりあちらの班に向かったのか。納得できた。
「それで、修が真央のご機嫌とりをする代わりに、俺があいつの持ち込んだ衣装を着る羽目になって……くそっ。またやられた」
「そっか、でもこのままだとご飯食べれないから、私も一緒に説明してあげる。みんな、先食べといて」
上原さんと水谷さんは羽月さんの所に行って、彼女と指切りをしていた。隣で倉多さんがお腹を抱えて笑いながら何かを喋って、上原さんから怒られていた。
いただきますをして、私たちは食べ始めた。いただいたポトフも充分に美味しかった。
私は春日野さんを見た。春日野さんは四人を少し羨ましそうに見てた。
「ねぇチョコ。チョコはあっちに行かないの?」
「……あの四人には独特の雰囲気があるので。それに、他の三人はまだ話せるんですが、あとの一人は悪魔です。悪魔とはあまり関わり合いになりたくないです」ブルブルと震えている。よっぽど倉多さんと何かあったのだろう。
「そう……」
まもなく上原さんが帰ってきて、皆の輪に加わった。あちらも私たちの料理が気に入ってくれたと話してくれた。
自分たちで作った料理は美味しく、私たちはこの時間を大いに楽しんだ。料理が余ったので、少しいただいて冷蔵庫にしまった。また帰りに持って帰る為に。




