2話-5
「ほぉ? 君は『下克上』を続けたいと」
生徒会室には、私と古都会長だけだった。会長の反応はただこちらを見ているだけだが、その瞳には興味と猜疑心の色が宿っていた。「それは一体どういう心境の変化かな? まさか倉多くんが入れ知恵をしたんじゃ」
「しゅうちゃんは関係ないです。いえ、本当はしゅうちゃんとは良い関係にはなりたいと思ってますよ。彼、恰好良いし、優しいし、最高なんですよ。えへへ」
「倉多くんの印象が優しいとは……。君と彼は特別なんだな」
「特別だなんて! やめてくださいよ、もう」
「……そういう意味で云ったのではないのだが、別の意味で怖いな君は。それで、どうして『下克上』を続けたいんだ」
「それは、この高校のくだらない風習をなくす為です」入学しないと入ってこない情報に振り回されて、私は自分の希望する部活に入部できなかった。入部どころか、活動自体が妨げられている部活さえある。「私がそうであった様に、部活に制限があって、誰もが同じように青春を満喫できない今の制度は間違っています。私は、それを、正したい」
「正したいと君は云うが、それでは他所の学校となんら変わらないぞ。平凡な部活があり、平凡な成績で、一部に特化した部活のみ援助や高待遇が認められ、後はダラダラ活動している。
この学校は多くの部活が独立し活動ができる環境を持っている。金は満遍なく行き渡り、やる気も成果に繋がっている。それは我が校の部活のどれもが全国に行っている事で一目瞭然だ。それに、このやり方は伝説の校長が考えた、伝統あるやり方だ。それに文句をつけるか」
「成長は伝統と革新の掛け算で生まれるんですよ。せっかく『下克上』を知って、おまけにこんな能力授かったんですから、使わなきゃそんですよ。」古くからの悪習を正すチャンスの神様がいて、その前髪を掴まないなんてありえない。「それに、未だに部活動を認められていない人もいます。弱者の声を拾いあげるのも強者の行動だと思いますが」
「生徒会は別に強者である訳ではない。この制服も、バッジも、学内の平和と成長を願う象徴として生まれた。俺たち生徒会の活動は今まで過去の先輩方が培ってきたやり方に準じているだけだ」
「ですが会長は不満があるなら戦おうと云っていました」
「確かに云ったな。そして俺は強いとも。
時に、羽月さんは先程の発言から窺える様に計算は得意か?」
「数学はあまり自信ありませんが、算数ならなんとか」
「月一回戦って、生徒会に挑戦出来るのは何ヶ月後かわかるか?」
「簡単ですよ。十二支全部やっつけて、ひいふうみいよ……えっ!? まさか?」私の計算違いだと思いたいが、繰り返し計算しても同じ結果になる。
「そうだ。残念ながら君が俺と戦えるのは来年の四月。それまでには十二支は入れ替わっており、君はきっと来年も猫か一般生徒だ。これがどう云うことかわかるか?」
「ただの生徒だと挑戦権はなくなり、猫の場合は──また一からやり直し?」
「そうだ。そしてまた間に合わないまま俺は卒業だ。俺の後釜も君の相手はしてくれないだろうな。
だから云っておく。君の立場では話にならん。他の十二支になれるよう今から祈っておくか、そんなたわ言は口の中にしまっておいて、出さないで置くことだ」
ぐうの音も出なかった。




